TikTok 、大規模なアカウント削除でフィードを「浄化」中:期待の高まりと共に向けられる視線も厳しいものに

DIGIDAY

2022年9月28日、短尺動画プラットフォームのTikTokは最新の「コミュニティガイドライン実施レポート」を発表、さまざまなポリシーに違反したとして、何百万件もの広告や動画、アカウントを削除していることを明らかにした。

SNSプラットフォーム各社が、ユーザーや広告主、規制当局に自社の安全安心を提供するよう努めるなか、今やこのTikTokのレポートは、四半期ごとにガイドラインの状況を社内でまとめて発表するSNS業界の「ニュースタンダード」になった。Googleが2010年に初の透明性レポートを発表してからというもの、最近では他社も追従する動きが見られ、2018年にはFacebook、2019年にはTikTokも始めている。

TikTokの措置

  • 第2四半期には、5900万件あまりのアカウントを削除。その半数以上が偽アカウント
  • 年齢違反で削除したアカウントは2000万件あまり
  • ポリシー、ガイドライン違反で500万件あまりの広告を削除
  • 安全性、違法行為、暴力などの問題に関連するさまざまな違反で、1億1300万件の動画を削除

グローバルで高まる誤情報への懸念

TikTokは急激な成長に伴い、規制当局の圧力が大きくなると、四半期ごとに調査結果を発表するようになった。民主党と共和党、両党の国会議員の間では、データのプライバシーや子どもの安全性から誤情報まで、さまざまな領域でTikTokに対する懸念がますます高まっている。

また、欧州でもその動向が注視されており、たとえば英国では、2018年から2020年まで児童のプライバシー保護を怠ったとして、罰金2900万ドル(約42億円)の支払いを科される可能性がある。さらに、ベルギーのブリュッセルで数日前に開催された会合では、米連邦通信委員会のブレンダン・カー委員が欧州連合の委員とともに、国際的なデータの流れや、中国政府高官がTikTokのユーザーデータにアクセス可能な場合、同社が国家安全保障に脅威をもたらす可能性について話し合った。

TikTok広報は同社レポートに関する米DIGIDAYのインタビュー要請に応じていない。しかしながら、トラスト&セーフティ部門の責任者コーマック・キーマン氏が、調査結果に関して、TikTokは「誤情報が人々の健康や選挙プロセス、事実、科学における信頼喪失に与え得る影響」を認識しているとブログに投稿した。

「当社はソリューションの一環として尽力している」とキーナン氏は書いている。「誤情報をこの上なく深刻に受け止めており、誤情報が拡散しないよう多方面からのアプローチで対処するとともに、情報の信頼性向上に取り組み、こうした問題を大規模かつ未然に防ぐため、デジタルリテラシー教育に投資している」。調査結果をまとめたので、紹介しよう。

偽アカウントの発見と削除

新たな報告書によると、現在10億以上のアクティブユーザーを誇るTikTokは、2022年第2四半期には5940万件のアカウントを削除しており、これは前年同期の1490万件から大きく増加した。なお、4月から6月末までに削除したアカウントのうち、半数以上(3360万件)は偽アカウントだと見られている(2002年第1四半期には2080万件の偽アカウントを削除したが、2021年第2四半期はわずか170万件)。さらに、13歳未満の児童が作成したと見られるアカウント2060万件も削除しており、これは1年前に年齢違反で削除した件数の2倍近くにおよぶ。

継続的な広告主の基盤拡大に伴い、正確な数字を出す重要性はますます増していくが、マーケティング測定値としての正確性に関していえば、TikTokはほかのSNSプラットフォーム企業ほど激しい反発を受けていない。

現在、TikTokに対する期待は特に高い。そう話すのは、調査会社ガートナー(Gartner)のディレクター・アナリスト、クラウディア・ラッターマン氏だ。SNS大手各社は定期的に透明性レポートを発表しているが、同氏によると、「中国政府高官が米国ユーザーのデータにアクセスできるのではないか」という懸念が米国で高まるなか、TikTokの親会社である中国IT企業バイトダンス(ByteDance)は、「今後も成長を持続するために信頼構築」の継続をこれまで以上に重視しているという。

「ユーザーがプラットフォームを信頼すると、そのプラットフォームの利用を継続し、滞在時間も長くなり、それが収益に結びつく」とラッターマン氏。「同じことが広告主にも言える。広告主もプラットフォームを信頼すれば、そのプラットフォームに広告費を投資する可能性が高くなる」。

広告と動画コンテンツの削除増加

TikTokが方針やガイドラインの違反で削除した広告の総数は、2022年第1四半期の550万件から第2四半期には510万件に減少している(なお、2021年第2四半期の削除広告数は180万件)。アカウントに対する措置の結果、TikTokはさらに第2四半期、420万件の広告を削除している(削除数は同年第1四半期の870万件から減少)。とはいえ、対応措置の具体的な内容が公開されなかったため、悪意ある行為者は検出を切り抜ける術を得られなかった。

この第2四半期、TikTokは広告とアカウントの削除に加え、動画の削除にも力を入れており、第1四半期の動画削除数は1億200万件だったが、今期は1億1300万件の動画を削除している。この3カ月で削除された動画の内訳は、「未成年の安全」違反が43.7%、「違法行為と規制対象品」関連21.2%、「成人ヌードと性行為」10.7%、暴力9.3%、「ヘイトによる振る舞い」はわずか1.7%である。

広告主への影響

本拠地がポートランドのインフルエンサーエージェンシ、アウトラウド・グループ(Outloud Group)でマーケティング責任者を務めるデイビッド・フック氏は、偽アカウントを公表したTikTokのやり方は、Twitterと対照的であるという。Twitterはこれまで、イーロン・マスクや内部告発者ピーター・ザトコ氏から、ボットの総数が実際とは違うのではないかという指摘を受けてきた。フック氏によると、TikTokは人工知能を利用して有害なコンテンツを排除しているので、オーディエンスのコア層である若いユーザーにとっても安全性の高いプラットフォームだという(統計調査のオンラインプラットフォーム大手スタティスタ[Statista]によると、2021年9月現在、米国のTikTokユーザーの25%は10歳から19歳で、22.4%は20歳から29歳)。

情報共有分析機関TAG(Trustworthy Accountability Group)のCEOで、ブランド・セーフティ・インスティテュート(Brand Safety Institute)の共同創設者でもあるマイク・ザナイス氏によると、TikTokの最新レポートから、「ブランドの安全性の問題に関する業界の成長過程がわかる」という。

「TikTokはこうした活動に積極的に取り組んでおり、事業の透明性の向上やマーケター・消費者保護の実績を実際に目の当たりにできるのは実にすばらしいことだ」とザナイス氏は指摘する。

デジタルマーケティングエージェンシー3Q/Deptで有料SNS担当シニアバイスプレジデントを務めるヨウメイ・カジタ氏は、比較的規模の小さな広告主の中には、どうしても避けたいような何か「特別ひどい」ことが起こらないかぎり、広告は引き上げたくないと考える企業もあると話す。これはある意味、Facebookの取引で聞かれることとよく似ている――Facebookは長年、ROIが良すぎるので、たとえ広告主がブランドの安全性に関して懸念を抱いたとしても、予算削減の判断を下せないと言われ続けてきたのだ。カジタ氏いわく、TikTokはまだそこまでの効果はないものの、人気は高いので決して無視できない。

TikTokでは、品質管理の取組みとともに、ユーザー獲得で広告主が期待する新たな機能がいくつも導入されている。今年2022年はこれまでのところ、クリエーター向けツールや、検索広告のベータ版、ショッパブルコンテンツのフォーマット、大手出版社ペンギン・ランダムハウス(Penguin Random House)とのコラボ機能BookTokが新しい顔ぶれだ。

「TikTokにテクノロジーがあり、こうしたアカウントを見つけ出して、削除できるのはよいことだ」とカジタ氏。「ただ、クライアントとの話のなかで、TikTokはお勧めかと尋ねられて、いざ広告主の立場で考えると、TikTokが対象とする人たちは本物の人間なのだろうか、それとも、ボットなのだろうか、と疑問を感じる」。

[原文:TikTok claims to clean up its feeds as it increases the removal of fake accounts, ads and pre-teen users

Marty Swant(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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