ウォルマート がアクセラレータープログラムで有望なブランドを支援:ビューティ分野の戦略強化【ビューティ&ウェルネスブリーフィング】

DIGIDAY

2020年以降、クリーンビューティサマースクール(Clean Beauty Summer School)やクレド・フォー・チェンジ(Credo for Change)のようなビューティアクセラレーターと成長プログラムが相次いで市場に登場している。これらの多くは、当初、多様な創業者を支持&支援することにフォーカスしていた。ブランドは米国で起こっている人種的不公平や差別行為をもはや無視することはできなくなったからであった。長年行われているセフォラ(Sephora)のアクセラレートプログラム(Accelerate Program)さえも2021年に多様性を重視して再編成されている。

米国最大の小売業者、ウォルマート(Walmart)はこれまでこの動向には加わっていなかった。しかし、いまその状況が変わりつつある。

ウォルマート、アクセラレータープログラムで5ブランドを支援

ウォルマートは今春、ヘア、スキン、コスメ、ネイル、フレグランス、ビューティ関連アクセサリーのブランドを対象にしたアクセラレータープログラム、ウォルマートスタート(Walmart Start)を発表した。有望なビューティブランドに対して、ウォルマートマーチャントによるメンターシップやウォルマートのサプライヤーサービスとのつながりが約束され、また、ウォルマート(全店舗数は約4700)の1000〜3500店舗でローンチされるという可能性もある。同社のビューティマーチャンダイジング担当バイスプレジデントであるクレイトン・カイパー氏によると、同社の堅牢で多様な部門全体においてスタートはこの種の成長アクセラレーターの初のものだという。

ムサブ・バルバレ氏の後任として2月にウォルマートのビューティ担当責任者に就任したカイパー氏は「これらの新規ビューティブランドと関わり、関係を迅速に発展させたいと考えている」と述べている。

スタートプログラムへの応募が開始されたとき、カイパー氏によると500を超える応募があったという。応募者は、優れたブランド、価値、製品提案を持っていること、高い成長可能性があること、小売への拡大準備ができていること、ウォルマートのサプライヤー基準を満たしていることを示す必要があった。8月23日火曜日、ウォルマートはこのプログラムに選ばれた最初の5ブランドを発表した。カスタマイズヘアケアブランドのヘアラボ・バイ・ストランズ(The Hair Lab by Strands)、黒人女性創業・所有のヘアケアライン、パードン・マイ・フロ(Pardon My Fro)、プレスオンネイルブランドのペイントラボ(Paintlab)、クリーンスキン・ウェルネスラインのアンディファインドビューティ(Undefined Beauty)、フレグランスブランドのドシエー(Dossier)である。

ヘアケア・バイ・ストランズの軌跡

この5ブランドはライフサイクルのさまざまな時点にあるが、それは意図的であるという。カイパー氏は同プログラムが2023年まで続くので、対象ブランドはビジネスのどの段階にあってもかまわないのだと強調している。たとえば、アンディファインドビューティは2018年ローンチ。一方、ヘアラボ・バイ・ストランズは、2021年3月に創業者のエリック・デラペニャ氏がウォルマートのマーチャントチームからインスタグラムDMを受け取る前にはまだブランドとして完全に確立されていなかった。デラペニャ氏はプレステージヘア企業のストランズヘアケア(Strands Hair Care)の創業者でもあり、ウォルマート独占でヘアラボをスピンアウトした。ヘアラボ・バイ・ストランズはスタートプログラムを通じての参加ではないが、同社のウォルマートとの1対1のパートナーシップを考えるとスタートアクセラレーター出身ブランドの第1号と見なすことができる。9月1日にウォルマート2500店でローンチされる。

ウォルマートは当初、ストランズヘアケアの検査キットの販売に関心を持っていた。これはキューティクルの強度、タンパク質レベル、テクスチャー、頭皮の健康を分析するキットであり、(個人で遺伝子検査ができるキットの)23andMeのようなものだ。だが、ウォルマートとデラペニャ氏はこの自宅検査キットの利用方法がウォルマートの購入客にとって不便であることに気づき、2021年5月に協働して再考した。

「ウォルマートに行って『検査キットを買って、家に帰って、検査をして、またウォルマートに行って(検査結果に合った)製品を買うか、それとも製品を自宅に送ってもらうか』、消費者はそんな面倒はごめんだった」とデラペニャ氏。代わりに、ヘアラボ・バイ・ストランズは店舗内の検査コーナーを開発した。同氏によると100万ドル(約1.4億円)が投入されたという。いまでは購入客はパーソナライズされた推奨事項を店舗で受け取り、その場で製品を購入できるようになっている。

ビューティ分野の戦略強化の結果

ウォルマートは2017年以来ビューティ分野の戦略を強化している。それは、全店舗での店内体験のアップデートから始まり、ウォルマート独占ビューティブランドへと移行している。それらの中には、OGヘアインフルエンサーのミンディ・マックナイト氏とインキュベーターのマエサ(Maesa)が開発したマックナイト氏のヘアリテージ(Hairitage)がある。2021年にはZ世代のスキンケアブランドのバブル(Bubble)や、ウオマビューティ(Uoma Beauty)創業者のシャロン・シューター氏が開発したメイクアップラインのウオマ・バイ・シャロン・C(Uoma by Sharon C.)のローンチがあり、ウォルマートのビューティ部門にとっては特に重要な年となった。デラペニャ氏と同じように、シューター氏もウォルマートチームからDMでアプローチされた。そして先日、ウォルマートは有望な人材を育成するという基本戦略を予定通り進めていることを証明した。マックナイト氏の10代の2人の娘、ブルックリン氏とベイリー氏も彼らのブランド、ITKスキンケアがウォルマートと独占提携して8月22日にローンチすることが発表されたのである。

アクセラレーターで優れたブランドを発掘・獲得

ウォルマートの2023会計年度の第2四半期の結果ではポジティブなニュースが見られた。総収益は前年比8.4%増の1529億ドル(約21兆円)。コンプ売上は6.5%増加し、eコマースの売上は12%増加。しかし、ビューティ業界の競争はますます激化しており、連日多くのブランドがローンチされている。セフォラやアルタビューティのようなビューティ専門の小売店であろうと、ターゲット(Target)やAmazonのようなビューティを取り扱う量販店であろうと、小売業者間のビューティ関連の競争もかつてないほど熾烈になっている。前述したアクセラレータープログラムの多くは当初はBIPOC(黒人、先住民、有色人種)が設立したブランドを対象にしていたが、それは同時に、より優れていて目新しく、一味違ったインディーズブランドをローンチ前に獲得するための手段でもあった。

カイパー氏は、ウォルマートのマーチャントチームが新規ブランドと密接な関係を築いているがゆえにラインを迅速に拡大できるのだと述べている。ホールジー氏のウォルマート向けディフュージョンライン、AF94は構想からローンチまでにかかったのは1年以内だったことを挙げている。

スタートプログラムのブランドには個別のマーチャントメンターが割り当てられ、少なくとも月2回はミーティングを行う。ブランドが店舗ローンチの準備を整えていくにつれてミーティングはより頻繁に行われる。フレグランスブランドのドシエーは今秋ローンチ予定であり、スタートブランドの2番目となる。(プログラム内ブランドの)創業者らはまた、小売メディアプラットフォームのウォルマートコネクト(Walmart Connect)のような部門横断的なパートナーとも会い、ブランドのデジタルマーケティング戦略とマーチャンダイジングオペレーションを開発してサプライチェーンで確実に成果が出せるようにする。さらに、スタートのブランドの創業者らには、ウォルマートブランドの創業者らとの様々なセッションに参加する機会もある。ウォルマートの既存ブランドの創業者には、メイクアップラインのルナマジック(Luna Magic)のメイベル・フリアス氏、コンフェティでデコレーションされた製品で知られるパックドパーティ(Packed Party)のジョーダン・ジョーンズ氏らがいる。

ウォルマートのインディーズブランドからビューティ分野の次の大ヒットが生まれるかどうかはまだわからない。しかし、ウォルマートの店舗とeコマースの大規模なリーチによりスタートプログラムのブランドがヒットする可能性は高い。だが、実行力は依然としてブランドの持続力を確保するための鍵となるだろう。

カイパー氏は次のように述べている。「これは『Shark Tank』(起業したい人が自分の計画を投資家にアピールして投資を募る米国のテレビ番組)ではない。当社が行っているのはメンターシップとパートナーシップ。ブランドをいきなりウォルマートの全4700店で展開するわけではないし、ブランドにその準備ができてることを期待するわけでもない」。

[原文:Beauty and Wellness Briefing: Walmart gets more serious about beauty with Start accelerator

PRIYA RAO(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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