小規模 メタバース 企業、ゲームとeスポーツを起爆剤に:「eスポーツはゲームであり、ゲームはメタバースであり、オーディエンスは同じ」

DIGIDAY

テクノロジー企業のインフィニット・リアリティ(Infinite Reality)が、2022年7月に買収したeスポーツ企業レクトグローバル(ReKTGlobal)から手に入れたばかりのゲームやeスポーツの資産を、自社のメタバースプラットフォームを展開する起爆剤として利用している。

ゲームコミュニティからメタバースを

メタバース企業であることを掲げるインフィニット・リアリティだが、同社の所有する資産の大半は、ゲームとeスポーツに深く関係したものだ。同社は、ゲームコミュニティからメタバースが生まれるという仮説に賭けて、独自のメタバースプラットフォームを開発している。

「メタバース体験のアーリーアダプターが最初に出てくるのは、ゲームやeスポーツのコミュニティだろう」と、インフィニット・リアリティでプレジデントを務めるロドリック・デイビッド氏はいう。「eスポーツチームの買収によって、メタバース空間を配信プラットフォームとして利用する革新的なプログラムを所有、制作するのに必要なIP(知的財産)を手に入れることができた」と、同氏は話す。

インフィニット・リアリティが最終的に目指しているのは、すぐに利用できるバーチャル環境を構築し、ブランド各社がその環境をカスタマイズしてバーチャルコマースやイベントに利用できるようにすることだ。

この空間は「アンリアルエンジン(Unreal Engine)」を使用して構築されており、主にモバイルブラウザやデスクトップブラウザからアクセスするものだが、将来的にはVRデバイスやゲーム機のユーザーも利用できるようにする計画だ。また、ユーザーがこのプラットフォーム内で時間を過ごしたくなるようにするために、まずバーチャルなスカイボックス(特別観覧席)を設けて、eスポーツチームと従来のスポーツチームの両方のファンが試合中に交流できるようにするという。


画像提供:インフィニット・リアリティ

インフィニット・リアリティでは、自社のメタバース製品をより直接的な収益源に変えるために、NFTコレクティブルやブロックチェーン上のバーチャルグッズを通じて、ブランド各社にこのプラットフォームをバーチャルコマースの場として利用してもらおうとしている。そうなれば、同社は「取引仲介者」として、プラットフォーム内で行われたチケットや商品の販売からわずかな手数料を徴収できるからだ。「私たちは公益企業のようになる」と、インフィニット・リアリティで最高イノベーション責任者を務めるエリオット・ジョーブ氏は語った。

いかに大手との差を作り出すか

同社はまた、このプラットフォームのすべてのファーストパーティデータを、プラットフォーム内で活動するブランドが直接利用できるようにする計画だ。この戦略によって、インフィニット・リアリティの製品は、ロブロックス(Roblox)やフォートナイトクリエイティブ(Fortnite Creative)などの大手メタバースプラットフォームとは一線を画すことになると、ジョーブ氏は主張している。

大手のプラットフォームがユーザーデータに対して完全な透明性を提供していないことは確かだが、この戦略が同社に成功をもたらすほど十分な違いを生み出すのか懐疑的に見る向きもある。このところ新たなメタバースが毎週のように登場しているが、ブランドのマーケティング予算の大半は、依然として大手プラットフォームに流れ込んでいるのが現状だ。

「eスポーツは今、厳しい状況だ。eスポーツ組織が収益化に苦労していることは誰もが知っている」と、メタバースマーケティングのエキスパートで、TPG傘下のミラダ・スタジオ(Mirada Studios)でイノベーション責任者を務めるマーゴッド・ロッデ氏は話す。「つまり、eスポーツはゲームであり、ゲームはメタバースであり、オーディエンスは同じなのだから、収益を生み出すために何かほかのことをしてみようということだろう。だが、私には少し無理があるように感じられる」。

一方、メタバースの分野が成長を続けていることを踏まえ、大手のプラットフォームと小規模な競合企業のどちらにも十分すぎるほど成長の余地があると指摘する人たちもいる。メタバースの定義が大手テクノロジー企業によって決められかねない状況を嘆く批評家たちは、インフィニット・リアリティのような小規模なプラットフォームを、ユーザーとブランドの両方にとって代わりの選択肢を提供する存在とみなしている。


画像提供:インフィニット・リアリティ

「インフィニット・リアリティのような企業や彼らが構築しようとしているプラットフォームは、メディア全体にとって素晴らしいものだと思う」というのは、シュール・イベンツ(Surreal Events)のCMO、アダム・ボス氏だ。同社でも、ブランド向けに独自のカスタマイズしたバーチャル空間を構築している。「そして、eスポーツにおいてまだ十分に活かされていない彼らの専門性が、いずれなんらかの方法や場所で発揮されると私は考えている」。

成功するかどうかはいまだ実験段階

最終的に、インフィニッリティ・リアリティなどの、また名の知られていないメタバースプラットフォームが成功するかどうかは、eスポーツチームのローグ(Rogue)やロンドン・ロイヤル・レイブンズ(London Royal Ravens)など、すでに存在しているeスポーツチームの資産を活用してファンに有意義な時間を過ごしてもらえるかどうかにかかっている。それができれば、ブランドやマーケターが後を追ってくるだろう。eスポーツとメタバースに親和性があるのは明らかだが、ゲーム企業やeスポーツ企業がメタバースに全面的に軸足を向けるようになるほど相性がよいかどうかは、まだわからない。

「バックエンドツール、分析機能、コンテンツモデレーション、ユーザーアカウントの管理手段など、さまざまなものが必要になるだろう。そこに、私たちの出番があるのだ」と、ジョーブ氏は語った。

[原文:Why a gaming and esports company is launching its own metaverse platform

Alexander Lee(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:黒田千聖)

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