エバーレーンによる影響力のある インパクトレポート の構築方法

DIGIDAY

いまではインパクトレポートがファッションブランドのあいだで広く普及している。だが、グリーンウォッシュの隆盛、認証をめぐる混乱、一般的に使用される統計に関するデータ不足などによって、多くの企業はいまだにサステナビリティの取り組みにどう着手したらよいのか混乱している。

今後の法規制やサステナブルな製品を求める消費者の増加もあり、2021年以降、ESG(環境・社会・企業ガバナンス)が、多くのファッションブランドにとって優先事項となっている。その点についてエバーレーンでは、ESG戦略を事業のさまざまな分野に結びつけるべく取り組んでいる。4月、同ブランドは最新のインパクトレポートを発表、より責任あるビジネスの実践を構築する上で役立つ青写真を大手ブランドに提供している。

責任あるビジネスが顧客にとって重要なポイント

「2021年全体を費やして、合理的な時間枠のなかでさまざまなテーマの領域で目標を設定し、固めていくことができるようにするためのロードマップや戦略を構築した」と語るのは、エバーレーンでサステナビリティディレクターを務めるカティナ・ブーティス氏だ。同ブランドが2021年に行ったリサーチの結果、ESGの焦点を次の3つの目標にわけるべきだということがわかった。生物多様性と生態系回復を重視する「Keep Earth Clean」、ブランドがネットゼロ排出を達成する方法を検討する「Keep Earth Cool」、そしてバリューチェーン全体で労働者を支援する「Do Right by People」である。

サステナブルなビジネスの実践に対するニーズは、顧客にとって重要な優先事項となっている。EYによる2022年3月の「2021年未来の消費者指数(2021 Future Consumer Index)」によれば、70%の消費者が、企業の行動はその企業が販売しているものと同じくらい重要であると考えていることがわかった。EYでグローバルコンシューマープロダクツおよびリテールを率いるジム・ドゥセット氏は、「現在わかっているのは、世界のほとんどの地域でパンデミックが沈静化し始めていくにつれて、一部の消費者のあいだでは、地球第一という感覚がこれまで以上に最重要なポジションを占めるようになってきているということだ」と述べている。

サプライヤーと協力しコストや環境面での透明性を図る

エバーレーンには、サプライヤーを搾取することなく仕事をしてきた長い歴史があるが、ブランドのあいだではいまだに価格引き下げが慣習化しており、ファッション業界はESGの分野でもその点をまだ見過ごしている。エバーレーンは、2011年に同ブランドのTシャツのコストとその理由を消費者に対して正確に示した最初のブランドであり、事業におけるコストの透明性に向けて準備を整えてきた。その後、エバーレーンではこのコストの透明性を全商品へと拡大した。しかし他の多くのファッションブランドがこうした転換をするようになったのは、国連の気候変動に関する枠組条約(UNFCCC)が「ファッション業界気候行動憲章(the Fashion Industry Charter for Climate Action)」を発表した2018年になってからだ。

また、エバーレーンは「サステナブル」といった議論を呼ぶ用語は使用せず、合成繊維やオーガニックコットンのアパレル製品にリサイクル素材を多く使用するといったことを含め、環境への影響の低減に重点を置く。さらに、エネルギーや水の使用量を削減するためにサプライヤーと協働し、公正な賃金、適正な労働時間、安全な労働環境を優先する工場と提携している。現在では監査を実施し、工場に関するストーリーを同社の工場に関するページで顧客にシェアしている。

オーガニックコットンが抱える問題

ファッションの生産において重要だが、過剰な廃棄物の大きな原因ともなる「素材」についても、エバーレーンは配慮している。リサイクルを困難にする繊維の混在を最小限に抑えるため、限られた量の良質な素材を使用している。しかし現在、これが問題を引き起こしている。インドでのストライキや供給不足によってオーガニックコットンの入手が困難になっており、同社はサプライチェーンに頭を悩ませているのだ。

「オーガニックコットンは世界の綿花生産量の1%にも満たず、競争も激しい。この素材にかなりの関心が集まった結果、市場で不正が行われているという非難も目にしている」とブーティス氏は述べた。「特に北米やEUの調達の観点からは、中国での複雑な事情がかなり状況を困難にしており、価格の憶測に影響している」。

長年のデータ蓄積が行動する力を与える

先月、フォーダム大学の責任あるビジネス連合(RBC、Responsible Business Coalition)は、ファッション業界のサステナビリティに関する40以上の業界最先端のレポートに基づいて、企業はESGに関するコミットメントをどのように拡大できるのかという報告書を発表した。同連合の創設者でフォーダム大学の報告書の責任者であるカーラ・スミス氏は、業界がどのように変化しており、どの分野にまだ取り組む必要があるのかを正確に把握するには、サプライチェーン全体からさらに多くのデータが必要だと述べている。

「私たちは、企業の各バーティカルに何が組み込まれつつあるのかに目を向けている。望ましい繊維や農業、化学製品について話す場合、その過程で何が起きていなくてはならないのか? (これらの分野で)私たちをより賢くし、効率を高めるデータレイヤーは何なのか?」と彼女は指摘した。RBCの報告書は、詳細と戦略に焦点を当ているが、その理由は、スミス氏いわく、望ましい結果を得るにはビジネス全体のすべての領域が協力し合わなくてはならないからだ。

エバーレーンは、長年にわたって蓄積されたデータを手にすれば、ビジネスの運営や消費者への取り組みの伝え方を変えられるということを示した。つまりデータの収集は、ブランドにESGのコミットメントに基づいて行動する力を与えることができるのだ。

他の企業との協力がカギ

エバーレーンによると、インパクトレポートで説明されている未来を築くには、他者との協力がカギだという。同ブランドは、世界的な非営利団体テキスタイルエクスチェンジ(Textile Exchange)などのパートナーと協力してレポートを作成している。エバーレーンはサプライチェーン内の多くの活動分野を先導しているが、他の企業がインパクトのレベルを改善するのを支援することで、自社のインパクトを拡大することが重要だと認識している。

「孤立してよいことをやろうとしても、ひとりでできることはほんのわずかしかないということを認識すべきだ。業界の他の企業にも浸透させて、自分たちにできるところから学んでいきたい」とブーティス氏は言う。「改善や学習の余地はたくさんあると考えているが、まずは内部からできる部分をリードしていく」。

[原文:How Everlane develops influential impact reports]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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