ブランドや小売業者は実際どのようにARやVRを活用しているか【Glossy+リサーチ】

DIGIDAY

本レポートは、もっとも人気のある最先端技術に関するリサーチシリーズの第一弾である。このシリーズは、Glossyの兄弟メディアDigidayによる5年前のレポートに続き、以前報じたテクノロジーがどのように進化したかを発見し、ブロックチェーンやロボティクスなど、その後登場した新技術を探るものである。今回は、マーケターがバーチャルリアリティ(VR)と拡張現実(AR)をどのように活用しているかに注目する。

目次

・主な調査結果
・マーケターはARに傾倒、VRからは後退
・マーケターは主にソーシャルメディアアプリとカメラフィルターのためにARを活用
・次に人気のあるARの活用は、バーチャルトライオンと現実世界へのオーバーレイ
・現在AR分野を支配しているのは、Meta(メタ)所有のプラットフォーム
・マーケターは、VRベースのブランドインタラクションで消費者を惹きつける
・ブランドは新興のメタバースでマーケティングの可能性を探る
・VRプラットフォームの状況はほとんど変化していない
・ビジネスでの関連性がないため、マーケターはARとVRへのさらなる投資を控えている
・ARとVRのネイティブオーディエンスは若年層に偏っているが、時間とともに成熟する
・使いやすさがARとVRの将来を左右する

5年前、マーケターは拡張現実よりもバーチャルリアリティへの投資を熱望していた。だがその後、優先順位は変化している。2022年には、いまもバーチャルリアリティに手を出しているマーケターよりも、ブランドエンゲージメントと販売のために拡張現実を活用するマーケターが多くなっている。

パンデミックが両技術の利用を促進した。バーチャルリアリティ(VR)は、対面式のイベントがキャンセルされたときに、仮想空間にリモートで集まることができる機能を提供し、拡張現実(AR)は、家庭用品や個人向け製品を自宅でバーチャルに試用する手段を提供した。「こうした技術は時代とともにより身近になり、Covidのこともあって、日常のデジタルライフで以前よりもARに依存するようになった人々がかなり増加している」と述べたのは、エシロールルックスオティカ(EssilorLuxottica)が所有するアイウェア企業、FGXインターナショナル(FGX International)のチーフエクスペリエンスオフィサー、フレッド・ジェランタビー氏だ。

スタティスタ(Statista)によると、パンデミックが始まって約2年となる2021年末までに、米国のAR・VR・複合現実の市場は280億ドル(約4兆521億円)規模となっており、2028年には2500億ドル(約36兆1800億円)以上に達すると予測されていて、マーケターやプラットフォームがこの技術に投資する十分な理由となっている。MetaやGoogleのような企業は、ヘッドセットやスマートコンタクトレンズ、スマートグラスなどのハードウェアやソフトウェアを改良するなど、ARやVRツールの構築にさらに費用をかけることで、このトレンドを加速させようとしており、それによりマーケターが参加できるバーチャル環境や複合環境を整えている。

デザインとイノベーションに特化したデジタルエージェンシー、ヒュージ(Huge)のテクノロジーゼネラルバイスプレジデントであるスティーブ・クロール氏は、Metaが最近、ユーザーが自分の声を使ってバーチャル環境を構築できるツール、ビルダーボット(Builder Bot)を公開したことに触れた。「人工知能を操作することでARやVR、複合現実の環境を構築し、自分のブランドや会社に必ずしも専門知識がなくても創造性を発揮できる世の中になると考えている」と彼は言う。

このふたつの技術のうち、ARは、服や化粧品をバーチャルで試着したり、家具を居住空間に重ねてサイズを測ったりといった、購入前の消費者の行動を楽にすることができるため、マーケターにとってより受け入れやすい技術となっている。だが一部のマーケターは、顧客がブランドと有機的に交流できるファッションや音楽のフェスティバルといったバーチャルイベント内に製品を配置することで、既存の顧客を楽しませ、新規顧客を獲得するためにVRを使用している。

ゼネラル・ミルズ(General Mills)でD2Cのグローバルeコマースを率いるカーター・ジェンセン氏は、マーケターはARやVRを使って消費者の注目を集める方法だけでなく、さらに一歩進んでブランドの関心をブランドの売り上げにつなげる方法を学ばなければならないと話す。「ARとVRの商業的な側面は、いまも本当に未発達だ。それは我々がいまだにそのトップオブファネルに注力しているからだ」とジェンセン氏は指摘した。「ブランドは、どのように物事のアウェアネスの側面に関与していくのか? そこにどのようにコマースを重ねるのか? その利用しやすさはどうなっているのか? そしてこれらの新技術を活用して、消費者にとって唯一かつ改良された体験を最終的にはどのように作り出すのか?」

さらにメタバースの漠然とした可能性もある。これらの要因を考えると、マーケティングや広告のエグゼクティブが、ARを使用する既存の機会をうまく活用したいと考え、より慎重にVRの実験をしていることは驚くにあたらない。

このレポートでGlossy+リサーチは、代理店、ブランド、小売業者の業界専門家388人を対象に、現在ARとVRをどのように利用しているか、また今後どのようにこれらの技術を取り入れる予定かを調査した。

主な調査結果

・過去5年間でARを利用するマーケターが増加し、一方でVRを利用するマーケターは減少している。

・すべての調査回答者が、主にエンターテインメントの目的でARを活用し続けており、ソーシャルメディアとカメラフィルターがもっとも使用されているアプリケーションで、またゲーミングにARを使用しているのは回答者の約半数だった。

・2017年には所有・運営しているプラットフォームがAR技術の主要なホスト空間だったが、現在は転落し、サードパーティプラットフォームが有利になっている。

・回答者がAR技術をホストするプラットフォームとして、Metaが所有するプラットフォームが上位を占める。メタ所有のプラットフォームは、同様にVRの主要なホストとなっているが、競合他社は少ない。

・Snapchat(スナップチャット)は以前はサードパーティのARプラットフォームの1位だったが、新規参入のTikTokがSnapchatを追い抜き、全体で5位に転落している。

・マーケターによるVR技術の利用は全体的に減少しているが、VR技術を導入しているマーケターは没入感のあるエンターテインメント環境の構築や新規顧客の獲得に活用している。

・マーケターがARの利用を増やしているのは、業界がこの技術にまだ潜在的な可能性を見出していることを示しており、一方でVRは開発コストと新規プラットフォームの不足のためか、業界での採用が遅れている。消費者のVRの導入もARにくらべて遅れているが、VR対応デバイスの台数は増え続けている。

マーケターはARに傾倒、VRからは後退

過去5年間で、ARを活用するマーケターは増加しているが、VRを活用するマーケターは減少している。2022年にARを使用していると回答したマーケターは38%で、2017年の23%から15ポイント増加した。マーケターのAR利用の増加は、現実世界の景色の上にデジタル要素を重ねるARがマーケターの用途として手軽で合っていることが、少なくとも部分的に起因していると思われる。

またAR技術は、アプリと連携してARを簡単に体験できるなど、多くの買い物客にとってスマートフォンのカメラを介してより身近なものとなっている。消費者が使いやすいトライオンのオプションや以前よりも技術がうまく流通しているおかげで、ARはマーケターにとってますます魅力的な技術となっている。

しかし、5年前のマーケターのVR利用と照らし合わせると、ARの採用が増加している点も興味深い。2017年、VRはARよりも高い採用率だった。マーケターの33%がVRを活用しているか、少なくともVRを実験しており、ARを使用しているのは23%のみだった。2022年、VRはARよりも採用率が低くなり、マーケターでVRを使用していると回答したのは28%だったが、ARを使用していると回答したのは38%となっている。

マーケターは5年前、ブランドを取り巻くVR体験をデザインする能力を理由に、VRにさらなる可能性を見出していたのかもしれない。これは当時、Glossyの兄弟メディアであるDigidayが主流の戦略だと指摘している。主にそれは360度の動画を活用して行われており、消費者はそうした動画に安価な段ボール製のヘッドセットでアクセスすることができる。たとえば、ゼネラルモーターズ(General Motors)はニュージーランドの山間部を疾走するシボレーの運転席に視聴者を乗せ、パトロン(Patrón)は蒸留所とアガベの畑のツアーを提供している。

しかし技術の進歩によって、さらに複雑なグラフィックの仮想環境が実現し、そこでユーザーがいわば単なる乗り物としてではなく、インタラクティブな体験ができるようになるにつれて、360度の動画の活用は減少している。

またブランドは、2017年に悩まされたのと同様に、引き続き価格と利用の障害の多くに見舞われており、VRの利用を拡大する可能性が低くなっている。5年前の調査回答者は、高いVR制作費(38%が言及)や消費者への普及不足(36%が言及)が、VRキャンペーン制作の最大の障壁だと指摘していた。これらの懸念は現在も変わらない。動画制作やアプリ開発には数百万ドル、VRヘッドセットは数百ドルから数千ドルの費用がかかる。

ターナースポーツ(Turner Sports)のデジタルリーグビジネスオペレーション・グロース・イノベーション・シニアバイスプレジデントであるヤン・アディジャ氏によると、ARは利用しやすいため、当面のあいだはマーケターの採用においてVRよりも優位に立ち続ける可能性が高い。「ARは(バーチャル環境の)中にいるのにゴーグルで遮断される必要がないので、すぐに参入できる」と彼は言う。「VRはその没入感から、もっと大きな機会がある。だが、それが大規模に採用された製品になる前にどう進化しようとしているのかという点では、おそらくVRにはいくつかの周期がある」

マーケターは主にソーシャルメディアアプリとカメラフィルターのためにARを活用

5年前、マーケターはARにあまり興味を示さなかったが、その後、熱意が高まっている。その一端を担ったのがパンデミックで、消費者がオンラインで過ごす時間が長くなり、ブランドは買い物客を惹きつけ、eコマースやソーシャルコマースの支出を競うための革新的な方法を見つけるために実験を行った。AR対応のスマートフォンカメラが普及するにつれて、AR技術が急速に進化し、消費者は現実世界により多く応用できるようになった。

こうした変化と技術の成熟を評価し、Glossyはこのレポートで、Digidayが2017年に調査したエンターテインメント、情報リソース、製品デモンストレーションといった大きなカテゴリー分けではなく、ソーシャルメディアやバーチャルトライオンといった、実世界でのマーケターのARの活用に焦点を絞って分析を行った。

5年前に一般的なグループを調査した際、Digidayはマーケターが「エンターテインメント(39%)と情報リソース(36%)のために、両者ほぼ同じ割合でARを採用している」ことを発見した。技術が成熟し、より日常的なデバイス(たとえばスマートレンズ)に搭載されるようになれば、ARを情報源として利用することが娯楽目的よりも優位に立つと予想されていたのだ。

しかし予想に反して、ARを情報源として利用することは、思ったほど強力ではなかった。モジョヴィジョン(Mojo Vision)、Apple、Metaなどの企業は、現在もスマートレンズ技術の完成度を高めることに取り組んでいる。Googleは最近、ラボ以外の試験から長いあいだ中断していたARレンズを再び実世界にてテストしている。

そうしたわけで当面は、2022年におけるマーケターがARを活用する理由のトップは、エンターテインメントにとどまる。ソーシャルメディア/カメラフィルターが1位となり、この技術を活用するマーケターの回答者の74%が、そうした理由でARを使用するとしている。これは、ARが消費者の購買意欲を高めたり、実用性を提供したりするためではなく、話題作りのためのマーケティングツールとしていまも主に活用されていることを示している。

菓子メーカーから香水ブランドまで、さまざまな企業がソーシャルARアプリケーションやフィルターをマーケティング目的に活用している。ネスレ(Nestlé)は、40以上のブランドのマーケティングのためにSnapchatとインスタグラムでARを活用した。2021年、この製菓会社はソーシャルARマーケティング会社のカメラIQ(Camera IQ)と協力し、ユーザーが頭を動かしてキットカットゼブラキャンディバーを二つに割ることができるフィルターをインスタグラムとFacebook向けに作成した。

パルファン・クリスチャン・ディオール(Parfums Christian Dior)は2021年、複数のキャンペーンでインスタグラムとSnapchatのフィルターを導入。そのうちのひとつで同ブランドは3Dアーティストと協力し、ユーザーが微笑むと起動して、音楽に合わせて花が咲くアニメーションのフィルターを制作した。セレブリティやインフルエンサーがこのフィルターを宣伝し、130万インプレッションを記録している。

次に人気のあるARの活用は、バーチャルトライオンと現実世界へのオーバーレイ

マーケターによるARの利用方法の2位と3位は、ほぼ同じ回答率でバーチャルトライオン(55%)と現実世界へのオーバーレイ(54%)だった。実際、2017年から2022年で調査回答者の間では、バーチャルトライオンと現実世界へのオーバーレイによる製品デモンストレーションが、ARの利用をもっとも高めている。5年前にDigidayが質問した際、製品デモにARを使用している回答者はわずか24%だったが、Digidayは当時「製品デモのアプリケーションはここに入り込む余地がある」と指摘していた。

その後の人気の高まりは、パンデミックによってeコマースの売上が増加し、その結果、小売業界にとって1兆ドル(約144兆円)規模の問題である返品が発生したという事実が一因と考えられる。バーチャルトライオンや現実世界へのオーバーレイを提供するブランドは、購入前に自宅でフィット感を体験し、商品を見る機会を消費者に与えることで、金銭的損失を削減することを期待している。

このツールによって、ブランドはARの用途として上位に位置するカメラフィルターを、製品マーケティングや教育にミックスすることができる。必ずしもコマース機能そのものではないにせよ、バーチャルトライオンと現実世界へのオーバーレイは、消費者を購入に近づけるものである。

オンライン度付き眼鏡販売会社アイバイダイレクト(Eyebuydirect)のブランドディレクターであるジム・マーク氏は、バーチャルトライオンは、見た目だけでフレームを選ぶよりも正確に製品をフィットさせることができ、結果として買い物客と小売業者とのやり取りを向上させると話す。「もし私がメガネを注文し、バーチャルトライオンでは顔にフィットしているように見えたのに、家に届いてみたら大きすぎたとしたら、それは悪い経験だ」と、マーク氏は言う。「最初から最後までカスタマージャーニーを考えなくてはならない。(消費者に)正確な体験をさせたいと考えており、ARがそれを提供する。質の高い体験に加え、質の高い製品を手に入れることができれば、ARとテクノロジーをできる限り最良の方法で使っていることになる」。

ブリリアントアース(Brilliant Earth)のマーケティングおよびeコマース・シニアバイスプレジデントのリサ・パルムッター氏は、バーチャルトライオンは一般的に楽しいショッピング体験を生み出し、それが消費者のツールの利用を増加させるという点に同意している。「人は自分の手に指輪がはまっているところを見たいと本当に思っているので、採用は比較的シームレスに行われている。おまけに(おそらく)買えない金額だとしても、2カラット以上のダイヤモンドを指にはめるのは楽しい気持ちになる。また、セッティングを変えて見え方を確認することもできる。したがって適応性という観点からは非常にシームレスだった」。

だが、店舗でのショッピングの場合、バーチャルトライオンはユーザーにとってつねに楽しいものとはならない。小売業者がモバイル機器を提供し、周囲の環境を調整することでその体験を管理する場合、それは先験的なものになりえる。しかし買い物客が自分のデバイスを使うよう求められた場合、状況は必ずしもスムースには運ばないと指摘したのは、FGXインターナショナル(FGX International)のジェランタビー氏だ。「サングラスハット(Sunglass Hut)やワービーパーカー(Warby Parker)などの店に行けば、店内にiPadや何らかのデジタルディスプレイがあり、その環境内で完全にコントロールできるので、これは最良のシナリオだ」と彼は言う。「照明、アウトプットなど、エコシステムをコントロールすることができる。だが現実には規模を拡大するには非常にコストがかかる。店舗のスペースなどの決まった制約を考慮しなければならない」。

「たとえばユーザーのデバイスをベースとする小売環境において厄介なことのひとつは、接続性だ。ターゲット(Target)などの店舗に行ったときに、なかなか電波が入らないという経験は誰もがあるはずだ。それを考慮に入れて、5本の電波で操作していない人がイライラしないような体験を設計する必要がある」。

それでも、ブランドは、パンデミック時やパンデミック後の世界でも、化粧品や眼鏡のように多数の買い物客に共有され、触れられる商品を消費者が試着できるように、店頭でバーチャルトライオンを提供することが重要であることに気づいている。すでに述べたように、バーチャルトライオンは商品の返品率を下げることにもつながる可能性がある。

アイバイダイレクトのようなオンラインに限定したショップでは、消費者が購入前に商品に触れられるバーチャルトライオンに依存している。アイバイダイレクトのマーク氏は、課題はあるものの、消費者は自分のモバイルデバイスでバーチャルトライオンを容易に利用していると話す。「モバイル上でもっとも人気があるのは、それがそこにあるからだ」と彼は言う。「自分の手にあり、自撮りにも慣れているので、それほど複雑なことはない。携帯電話のカメラは非常に優秀だ。実際に以前よりもモバイルでの購入完了が増えている。人々はこれまでよりもずっと快適に携帯電話で(購入を)完了している」。

ブリリアントアース、FGXインターナショナル、アイバイダイレクトなどの企業がARを活用して、商品を身につけたときにどのように見えるかを買い物客が理解できるようにしている一方で、他のブランドは現実世界へのオーバーレイを使用して、アイテムがどのように家にフィットするかを消費者が体験できるようにしている。

家具会社が現実世界へのオーバーレイを早期に採用したのは、たとえばソファを購入する前に、それがリビングルームでどのように見えるかを買い物客が簡単に確認する方法がなかったからだ。2019年、ウェイフェア(Wayfair)はアプリに3Dビジュアライゼーションツールを追加し、消費者が部屋の3D版を作成してそこに製品を配置し、さまざまなスタイルやレイアウト、寸法を試せるようにした。クレイト&バレル(Crate & Barrel)も同様の「ビューインマイルーム(View in My Room)」というARツールを提供している。また2022年1月、ソーシャルプラットフォームのPinterest(ピンタレスト)はトライオン機能を発表、アプリのユーザーは自分の生活空間にホームデコレーション製品を配置できる。

マーケターが4番目に好むARの活用方法はゲーミングであり、45%の回答者がそのためにAR技術を利用していると述べている。ゲーミングは、ソーシャルメディアやカメラフィルターと同様に、消費者の購買意欲を高めるというよりも、話題作りのためのマーケティングツールとして主に利用される傾向がある。たとえばゼネラル・ミルズは、2種類の新しいシリアルを宣伝するためにARを使い、フィロウズ(Fillows)というミニゲームで、食品のパッケージを購入後に店舗や朝食の席で遊べるようなインタラクティブなゲームへと変身させた。スマートフォンのカメラを通して、消費者は時間切れになる前にシリアルの箱にオーバーレイされたシリアルをすべて「食べ」なくてはならない。

現在AR分野を支配しているのは、Meta所有のプラットフォーム

マーケター向けのARプラットフォームの展開は2017年以降大きく変化し、そのほとんどが一方向に向かっている。Snapchatを退け、調査回答者の間でARコンテンツをホストするプラットフォームのリストのトップとなったのは、Meta所有のプラットフォームだ。MetaはVRをホストするプラットフォームでも同じように卓越している。2017年に圧倒的に主要なARホストであった自社運営のプラットフォームは、サードパーティプラットフォームに座を譲り、3位に転落している。

Metaのインスタグラムは、ARを活用している調査回答者の64%がインスタグラムのためにARコンテンツを制作していると述べており、ARをホストするプラットフォームのトップとなっている。同じくMetaが所有するFacebookは44%で2位となった。これまでサードパーティプラットフォームで1位となっていた(全体でも2位だった)Snapchatは、全体では5位に落ち込み、2022年にこのプラットフォームを利用するマーケターは30%となっている。実際に今月初め、Snapchatは従業員の20%を解雇し、ARの提供にさらに注力する予定だと述べており、Metaに負けていることが原因だと思われる。

Digidayの2017年の調査では、メディアやマーケティングの専門家の29%が、SnapchatがもっともARの可能性を持っていると考えていたが、2022年にはTikTokがSnapchatを追い抜き、36%のマーケターがTikTok向けコンテンツを制作していると答えている。2022年のリストには、Amazon、GoogleのYouTube、GoogleのARCoreがランクインしている。

Snapchatは今年5位にランクインしたものの、ジュエリー会社のブリリアントアースのように、まだこのプラットフォームを試しているマーケターもいる。「当社はデジタル広告の面で多くのテストを行ってきた」とブリリアントアースのパルムッター氏は言う。「私たちがとても興奮していて、当社の顧客層にチャンスがあると見ているのは、Snapchatのバーチャルトライオンだ。Snapchatにネイティブなバーチャルトライオンの要素を加えることは、本当に効果的だ。顧客がそれで楽しんでいることがわかった」。

注目すべきは、自社運営プラットフォームがAR技術の主要なホスト空間として縮小し、2017年には当時76%の回答者が利用しているとした1位の座から、2022年には3位に転落して、ARを利用する回答者の39%となっていることだ。転落の理由のひとつは、AR技術がより広く利用されるようになり、サードパーティのプラットフォームが提供サービスを構築するにつれて、初期の実験と比較して回答者が自社のファーストパーティの機能に頼る必要が少なくなっていることかもしれない。法外なコストとなる可能性があるヘッドセットに依存するVRにくらべ、ARはどこにでもあるスマートフォンのカメラを通じて消費者が簡単にアクセスでき、多くのアプリケーションで利用できる。

IPGメディアラボ(IPG Media Lab)のエグゼクティブディレクターであるアダム・サイモン氏は、「まだ主流の拡張ヘッドセットがない」と言う。「マイクロソフト(Microsoft)のホロレンズ(HoloLens)があるが、これはハイエンドで企業向けだ。しかし携帯電話では、簡単なコンテンツで本当によいAR体験が得られる」。

テクノロジーのアクセシビリティにおけるこの転換は、回答者がARアプリケーションをどのように構築しているかという点にも反映されている。Glossyの調査では、回答者の大多数が、ARアプリを構築するためにサードパーティベンダーと協力する(48%)またはサードパーティベンダーと自社の混合と協力する(31%)と回答している。自社でARアプリを構築することを好むと答えた回答者は、わずか21%だった。

ヒュージのクロール氏は、マーケターが直面する障害のひとつは、社内アプリを構築するためのスタッフを見つけることだと述べている。「体験のためのすばらしいアイデアがあっても、ARであれVRであれ、3Dの世界を実際に開発して実際の資産を作成できるようにする必要がある」と彼は指摘した。「これは多くの企業にとってとてつもない挑戦だ。そのような人材プールはいま、主にゲーミング内か、あるいはフリーランスの市場に隠れているからだ」。

FGXインターナショナルのジェランタビー氏も、その限界を認めている。「プランに基づいて、異なる人々のために異なる接続速度を考慮する必要がある。デバイスは帯域幅やチップの速度が一貫していない。したがって学習、目標、そして課題は、生活様式やデバイスに関係なく、可能な限り誰もが(テクノロジーを)利用できるようにしなくてはならないということだ」。

どちらのアプローチにもトレードオフがある。自社でAR体験を構築するブランドは、顧客体験全体とその結果得られる消費者データを所有することになる。もちろん同意が得られる限りにおいてだ。インスタグラムのようなサードパーティのプラットフォームでは、ブランドは場合によっては競合他社とスペースを共有することになる。しかしこれらのプラットフォームには、制作コストが低く、オーディエンスの獲得を強化するといった相殺する利点がある。

それでも、ジュエリーメーカーのブリリアントアースのように、バーチャルに試着することが必要なアイテムを扱うマーケターは、自社でアプリを構築する方がより現実的だと考えるかもしれない。ブリリアントアースのパルムッター氏は「当社のイメージや写真の中では、サードパーティが関与すると複雑になりすぎるだろう」と言う。「サイズや比率、形や大きさなどは、(バーチャルで)人に着用した状態で見せるのはかなり複雑だ。当社のウェブサイトでは、指輪を装着させるのにレンダリングモデルを使用した独自のツールにすでに多大な投資をしているので、サードパーティーには目を向けなかった。すべて社内で行いたいと考えていた」。

マーケターは、VRベースのブランドインタラクションで消費者を惹きつける

AR技術のほうがマーケターの用途により適しており、360度動画を含む、没入感のあるストーリーテリング体験を可能にするVRは、マーケターにとって採用が難しい可能性がある。マーケターのVRの利用率は、2017年の33%から2022年には28%に落ちている。

2017年にDigidayがマーケターに質問した際、回答者の81%が、シボレー(Chevrolet)のドライブ体験のように、ブランドを中心としたVR体験をデザインすることが主なVR戦略であると答えた。当時ヒュージのグローバルエグゼクティブエクスペリエンスディレクターで、現在はデジタルエージェンシーのワークアンドコー(Work & Co)でデザインパートナーを務めるデレク・フリードマン氏は、「我々が作っている実験は、ブランドと密接に連携した、より物語性の高いものだ」と述べている。「しかし、ロゴがいたる所にあるブランドの環境に着地し、製品で遊べるようになるというものではない。通常は『私たちのブランドはこういうもので、ここにブランドを中心とした物語がある。さあ、それに関連した何かを体験してみよう』というものだ」。

5年前、マーケターは既存のVR体験に自社ブランドを組み込むことはあまりなかったが、Digidayが指摘したように、「ブランド製品がユーザー体験のありきたりな一部となるのは時間の問題である」。

その期待は実を結びつつあるようだ。2022年にVRを採用したマーケターは、主に没入型のバーチャルイベントを作るため(72%)にこの技術に投資していると述べており、その中心となる目的は、エンターテインメント性の高い体験を作ること(63%)と新規顧客の獲得(61%)である。既存のVR体験に自社製品を配置したり、あるいは消費者がブランドと有機的に直接交流できる独自の環境を構築することで、対面での体験が追加されたポップアップストアのように顧客を引き付けることが望まれている。

2022年、ヘッド&ショルダーズ(Head & Shoulders)は、BuzzFeedが所有するコンプレックス・ネットワークス(Complex Networks)主催のバーチャルファッション&音楽フェスティバル、コンプレックスランド(ComplexLand)でブランドをアクティベーションした。ユーザーのアバター用にブランド名の入ったヘッドウェアを制作したのだ。「バーチャル環境に入るとヘッドウェアを選ぶが、それらは現実では通常制限されるような非常に凝ったスタイルだった」と、コンプレックス・ネットワークスでエクスペリエンシャルを率いるニール・ライト氏は述べている。「信頼できる方法で目立つためのすばらしいブランドエンゲージメントだった」。

コンプレックスランドのような確立されたバーチャルイベントは、VR環境の構築に必要なコストを軽減して技術的スキルをサードパーティのパートナーに外注するといった、一括請負のパートナーシップをブランドに提供する。この戦略は、すべてのブランドが同じ環境で消費者の注目を集めるために競争し、小売業者がイベント内でどのようにブランディングを位置付けるかをほぼコントロールできるという点で、マルチブランドの小売業者と提携するのに似ている。また一般的に、ほとんどのブランドはコスト削減のためには既存のバーチャル環境に入り込む方がよいとされている。

しかし、ブランドが有機的にアクティベーションできる環境は、ゲーミング以外ではそれほど多くない。そこで、モルソン・クアーズ・ビバレッジ(Molson Coors Beverage Co.、旧ミラークアーズ、MillerCoors)のような一部のマーケターは、自社ブランドを紹介するために独自のバーチャル環境を構築している。この戦略はブランドが小売業者や、この場合は既存のバーチャル環境を通じて流通させるのではなく、自社製品専用の実店舗を建設するようなものだ。このアプローチを採用するにはコストが高くなりがちで、より専門的な知識が必要とされるが、ブランドは競争にさらされず、環境を完全にコントロールすることができる。このような環境は、豊富な予算を使うことができる大手のマーケターに適している傾向がある。

「私たちは、(ミラークアーズの)VRアプリの作成を手伝ったが、それはバーの中を舞台にしたミニゲームのコレクションだった」とIPGメディアラボのサイモン氏は述べた。「それはミラークアーズのブランドを追加するのにぴったりで、そのブランディングにとって自然な設定だったので有機的だった」。

IPGメディアラボは、各ロゴがどのくらいの時間プレイヤーの視界に入っていたかを追跡することができた。「一般的にゲーミングにおいて、ユーザーやゲーマーが、現実世界ではブランディングされるであろう場所にブランディングがあっても気にしないということがわかっている。それはまったく普通のことであり、ユーザーもゲーマーもまったく問題にしていない」。

最近では、第56回スーパーボウルに合わせて、ミラーライト(Miller Lite)がメタバースにブランドがホストするバー「メタライトバー(Meta Lite Bar)」をオープンしている。メタバースについては、下記で詳しく説明する。

ブランドは新興のメタバースでマーケティングの可能性を探る

ミラーライトが主催したようなバーチャルなソーシャル環境は、メタバースにおいて将来何があるのかを垣間見せてくれる。メタバースとは、現代のインターネットの「継承国家」と定義され、ユーザーやマーケターがコンテンツや資産を生成し所有できるようにするものだ。それらは、広くアクセス可能で接続されたデジタル世界を構成するタッチポイントやプラットフォームで自由に配布することができる。このデジタルワールドを構成するノードの多くはバーチャルになるだろう。少なくとも現在の計画ではそうだ。

ブリリアントアースは、メタバース環境下でコレクションをどのように販売するかをテストしている。パルムッター氏は、同社はゼペット(Zepeto)で小規模なジュエリーコレクションのひとつを販売していると述べた。ゼペットはユーザーが3Dアバターを作成し、バーチャルチャットルームやゲームで交流するモバイルチャットアプリである。

「当社のジュエリーは、アバター上でリアルに見えるように少し拡張されている」とパルムッター氏は言う。「時には物理的な空間ではできないような方法で、私たちは遊び心を持ってジュエリーを作ることができる。それによって当社のクリエイティブチームは、いくつかのジュエリーコレクションをより深く探求することができた」。

しかし現時点では、ブリリアントアースが仮装世界に製品を配置する主な理由は販売ではない。「メタバースに対する私の見解は、もっと遊び心があり、楽しく、ブランドを構築するというもの」とパルムッター氏は言う。「当社の製品が現実世界でどのように見えるかを現実的に期待するものとは言わない。それはバーチャルトライオン(に任せるのが一番)だ。そこからこの製品が現実世界では私の手にどう映るのか、メタバースではどう見えるのかという核心に入るからだ。よりブランドを紹介するものであり、本当に想像力を広げるもの、それが私が思うメタバースのあり方だ」。

いまのところ、メタバースはサイロ化したバーチャルな島々の上に浮かんでいる抽象的な可能性である。現在のオンラインプラットフォームでは、ユーザーは特定のサービスの範囲内である程度自由に動き回ることができるが、プラットフォーム間の相互運用性には制限がある。ビデオゲームのフォートナイト(Fortnite)のようないわゆるメタバースの先駆者でさえ、プレイヤーは自分のユーザー生成コンテンツを再作成したり、収集した資産を他の多くのプラットフォームに持ち込むことはできない。

VRプラットフォームの状況はほとんど変化していない

マーケターがVRの最適な活用方法を試行錯誤しているなか、VR体験をホストするプラットフォームは2017年から2022年にかけてそれほど変化していない。自社運営プラットフォーム、Meta所有プラットフォーム、GoogleのYouTubeがマーケターの回答者のあいだでは引き続き主なVRのホストとなっている。

これは2017年から2022年にかけてホストプラットフォームにおける変化が大きく、TikTokのような新規プレイヤーがレガシーなプラットフォームを追い越したARと比較すると注目すべき点だ。ARプラットフォーム間の競争とイノベーションが、マーケターによるARとVRの使い分けの増加にも寄与しているのかもしれない。

VRは新しいホストプラットフォームの流入がないが、既存のプラットフォームはこの技術に投資している。ただその投資がまだ実を結んでいないだけだ。Googleスチーム(Steam)はともに、VRとARの体験とツールの開発に専念する独自の社内ラボを持っている。Metaもまた、社名変更も含め、技術の採用を促進するために実質的に補助金を出すことで、大きな賭けに出ている。Metaの2022年第1四半期決算報告では、VRおよびAR部門であるリアリティラボ(Reality Labs)に37億ドル(約5345億円)を支出したが、その売上は7億ドル(約1011億円)にすぎないことが示されている。

Metaが所有するプラットフォームが自社運営プラットフォームを追い抜き、VRの覇権を確立したことは驚くことではない。Metaのクエスト(Quest、旧オキュラス、Oculus)が1位を獲得し、VRを活用しているマーケターの回答者の48%がVR消費者にリーチするためにこのプラットフォームを使用していると述べており、またFacebookは46%で2位の座を維持した。より多くの実行可能なプラットフォームがあるARとは異なり、VRの明確なメインプレーヤーはMetaであり、この分野でのディスラプターは少ない。

Metaのような企業によるVRツールへの投資にもかかわらず、VRアプリやサービスはまだ消費者のリーチに苦労している。しかしFGXインターナショナルのジェランタビー氏は、ヘッドセットの価格が下がれば、導入する消費者が増えると述べている。「クエスト2のようなものがさらに日用品化し、ゲーム機や他の玩具と並ぶものとして語られるようになれば、それこそVRが誰にとっても利用しやすくなり始めるときだ」と彼は言う。「ハードウェアが安くなり、専門店やオンラインではあまり見かけなくなってトイザラス(Toys R Us)やベストバイ(Best Buy)のような店で多く見かけるようになれば、その時こそ、少し変化が現れるだろう」。

自社運営プラットフォームは42%で3位に転落し、全体として2017年の71%からもっとも大きな減少を示した。YouTubeは4位で健全な利用率を維持しており、2017年の40%に対して2022年には34%がVRのためにこのプラットフォームを利用すると回答している。YouTubeは主に、360度動画のホスト環境をマーケターに提供している。同様にFacebookも360度動画を提供しているが、前述したようにゲーミングなどの機能も提供している。

ビジネスでの関連性がないため、マーケターはARとVRへのさらなる投資を控えている

アライドマーケットリサーチ(Allied Market Research)によると、ARとVRの米国市場規模は2021年から2030年にかけて年平均成長率41.6%で拡大すると予想されているが、これまで多くのマーケターはこれらの技術を導入するのに時間がかかっている。VRは、マーケターがこの技術をブランドエンゲージメントや販売に効果的に利用する方法を見つけるのに苦労しており、代わりに娯楽的なイベントを作ることを好んでいるため、普及に向けた課題に直面している。ARは消費者がスマートフォンでこの技術に広くアクセスでき、バーチャルトライオンや現実世界へのオーバーレイなど、マーケターにとって使いやすい用途があるため、やや有利な状況にある。

現在ARやVRを使用していないマーケターの回答者は、AR(47%)とVR(46%)の両方に投資しない最大の理由として、ビジネスでの関連性の欠如を挙げている。ARを検討する場合、現実世界へのオーバーレイは、消費者の生活空間に効果的に配置できるアート作品や家具などの製品を紹介するのに適している。しかしスキンケアのように、肉眼ではなかなか見えない長期的なメリットをもたらす製品はARで表示することが難しく、言うまでもなく、そのフィルターが暗に主張する内容には食品医薬品局による規制がある。さらに、マルチブランドの小売業者は、多数の製品をARツールにロードするための時間や帯域幅を持っていない可能性もある。

VRに関しては、現在その技術の多くがエンターテインメント体験を作り出すために使われている。ゲーミングやバーチャルイベントは、消費者がブランドと有機的に関わる機会を生み出すが、それらが必ずしも売上につながるとは限らない。マーケターは最終的に製品を売りたいので、それができないと新たなVR技術への投資意欲が減退する可能性がある。

ゼネラルミルズのジェンセン氏は、ARとVRの両方に関して企業が克服すべき大きなハードルは、エンターテインメントを超え、いかにeコマースの手段としての可能性を実現するかだと述べている。「お気に入りの小売業者のeコマースサイトを、楽しみのためにスクロールすることを選ぶ人はいない。ARやVRの場合、人々が集まるプラットフォームに、どのようにコマースを統合し、ブランドエンゲージメントを統合するかを問う機会がある。単なるブランド認知キャンペーンではなく、消費者と交わり、消費者が立ち止まって購入にいたらせることができるのに十分な価値をどうやって提供するのか?」

アイバイダイレクトのマーク氏は、消費者はショッピング体験中にデバイスを切り替える傾向があることが、さらに複雑な要素となっていると話す。「テクノロジーはスムースで固定されていると思いたいが、フラストレーションを引き起こす。もっともシンプルなものでもいまだに複雑で、期待通りに動作しないことがある」。

「常に技術の先を行き、さまざまなプラットフォームで提供できるように努めている」とマーク氏は付け加えた。「デスクトップでうまく機能しても、iPhoneやiPadではうまく機能しないこともあるし、その逆もある。私たちは、バーチャルトライオンがモバイルでも、また(消費者が)パソコンに戻ったときにも、非常にうまく機能するよう全力を注いでいる。人々はいまでもデスクトップで注文を完了したいので、すべてのプラットフォームで相互にスムースに移動できるようにしている」。

現在これらの技術を使用していない多くのマーケターは、ARとVRのビジネスケースを見つけるのに苦労しているが、現在ARを使用していないマーケターの34%が将来的に投資する計画だと回答し、現在VRを使用していない37%が将来的に投資する予定があると回答している。

ARとVRのネイティブオーディエンスは若年層に偏っているが、時間とともに成熟する

マーケターが直面しているもうひとつのハードルは、ARやVRの技術に対する消費者の無関心だ。マーケターの回答者は、どちらの技術にも投資しない理由として、関連性に次いで、ARについては25%、VRについては23%が顧客の関心や採用がないことを挙げている。

ARとVRはどちらもゲーミングと強く関連しており、ビデオゲーム開発会社ゲームファム(Gamefam)のCEOジョー・フェレンツ氏は、若い世代が中心となっていることが多いと指摘した。たとえばRoblox(ロブロックス)のメインのデモグラフィックは、6歳から19歳くらいの子どもからヤングアダルトであると彼は述べている。

「これはFacebookで目にしていたことと似ている。Facebookは、15年前に20歳だった人たちが利用していた。今20歳の人たちは、自分たちのソーシャルメディアの使い方やインターネットの使い方にもっと合致していると感じるほかのプラットフォームを探している。(年齢層の高いオーディエンスを取り込むには)ゲーミング、個々のアプリケーションの変化、大規模なエンターテインメント体験を通じる必要がある。それが囲いを開くことになる」。

FGXインターナショナルのジェランタビー氏は、従来ARは35歳以下の人に使われてきたが、彼の会社では、技術がより利用しやすくなるにつれて、すべての消費者の間でバーチャルトライオンが増加したと述べている。「これまでARはごく一部の人たちのものだった」と彼は言う。「つねに18歳から34歳(のデモグラフィイク)だった。しかし私たちのようにすべての年齢層に販売するカテゴリーでは、より利用しやすくなったことをうれしく思っている。老眼鏡のように(買い物客の)年齢層が高い特定のカテゴリーの一部では、まだこの技術が浸透していない」。

だが、ジェランタビー氏は、より広く消費者に採用されるためのカギは、ユーザーに簡単な学習曲線を提供することだと言う。「AR、VR、どんなデジタルプラットフォームでも、テクノロジーの中心につねにあるのは、直感的でなければならないということだ。誰かにその使い方を少々詳しく教えなければならないのであれば、すでに負けている。したがってデザイン、シンプルさ、可用性、接続機能、スピードを慎重に考慮しなくてはならない。規模に関する問題が解消され始めている今、すべてのカテゴリーが本当に参加できる分野はかなり広がっているというのが大きな結論だ」。

使いやすさがARとVRの将来を左右する

VRの背後にある技術が成長し、Metaのような企業がユーザーやマーケターにとってよりアクセスしやすい選択肢を作るために引き続き金を費やしていくことで、採用が進むかもしれない。しかしマーケターが広く採用する以前に、VRは特に新しく、より邪魔にならないハードウェアのリリースを通じてARと同じような利用のしやすさを達成する必要があると思われる。

FGXインターナショナルのジェランタビー氏は、健康志向の企業が今後VRをより活用していくことも想像しているという。「カーム(Calm)やヘッドスペース(Headspace)のようなセルフケアや瞑想のアプリの周辺には、非常に多くの産業が存在する」と彼は指摘した。「人々は関係を絶ち、ぼんやりする方法を探そうとしている。VRはそれをやるにはすばらしい方法であり、外界を遮断することができる」。

一方ARは、アプリのインターフェースを超えて消費者がいる場所で消費者に出会うために、新たな方法で現実の生活に溶け込まなければならなくなるだろう。「エンターテインメントであれ教育であれ、どのように価値を付加し、消費者のアクセシビリティを高めるか——技術や時間に関係なく消費者にとって何が簡単かを把握しようとしている」とゼネラルミルズのジェンセン氏は言う。

美容やファッションのような業界のブランドにとって、製品に価値とアクセシビリティを付加することは重要だ。コティ(Coty)MACのようなブランドはARミラーを実店舗に統合し、最適な体験を生み出すためにより多くのコントロールを発揮している。このミラーでは、顧客がさまざまなヘアカラーを試したり、アイメイクやリップスティック、チークがどのように顔に映るかを最新の照明を使ってシミュレーションすることができる。

「これに関しては、ビューティが先行していた」とブリリアントアースのパルムッター氏は言う、「口紅が自分にどう見えるか、それが間違いなく主な用途だ。製品に対してどう感じるかはある意味次の世代の話である。匂いや触感をどう永続させるのか、それに対する答えはない。しかし私たちが行っているメタバースのテストでも目にしているように、次の世代はより没入感のあるものになるかもしれない。私たちはこの技術のちょうど中間地点にいる。もっとリアルにするために、さらに最適化したり、学習したりできるはずだ」。

ヒュージのクロール氏いわく、没入型環境を作るには技術的な障害がつきものだが、基本的なアイデアがしっかりしていれば、ブランドは魅力的なユーザーイベントを実現することができるだろう。「前半は、コンテンツを作ることだ」と彼は言う。「それからそのコンテンツをシーンにリンクさせ、マルチプレイヤーユニバースにいるユーザーを一緒にリンクさせなければならない。このような体験を作り出すには、とにかくあまりに多くの課題が内在している。しかしその魅力的なユーザー体験に力を与えるには、すべてはコンセプトから始まり、次にコンテンツなのだ」。

そして潜在的な収益を引きつけるものも、劇的な成果をもたらすことができる。アライドマーケットリサーチによると、ARとVRの米国市場は2030年までに1347億6000万ドル(約19.5兆円)に達すると予測されており、マーケターはそう遠くない将来、両方の技術に引き付けられることになるかもしれない。

[原文:Glossy+ Research: How brands and retailers are actually using AR and VR]

CATHERINE WOLF AND LI LU(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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