今どきの就活生は、情報収集にもSNSを活用しているようだ。そもそもZ世代就活生は、SNSにどのようなことを求め、どのように活用しているのか。SNSごとの違いとともに見ていきたい。
就活サイトでわからない実態を知るために利用
大学生は日常的にさまざまなSNSを利用しているが、それは就活においても同じようだ。No Companyの「Z世代就活生のSNS活用に関する実態調査」(2022年9月)を見てみよう。
就職活動においてSNSで情報収集をすることがあるか聞いたところ、57.2%が「ある」と回答。就職活動時の情報収集の方法には、就活情報ナビサイト、就活関連の書籍、友人や知人、先輩からの口コミなどが以前から利用されてきたが、SNSでの情報収集もメジャーになりつつあるのだ。
企業に対して、どのSNSやメディアで就活情報を発信してほしいかについて聞いたところ、Twitter(63.1%)が1位、次いでYouTube(47.5%)、Instagram(44.1%)となった。
募集要項や採用スケジュールなどの必須情報のチェックとエントリーのために就活情報ナビサイトを利用し、そこでは得られない情報を求めてSNSを利用するというわけだ。特にTwitterには志望する企業の社員が実名で情報を発信するアカウントや、就職活動のお役立ち情報を投稿するアカウントがあり、注目を集めているようだ。
企業に対して、オンライン上でどのような情報を発信してほしいかについて聞いたところ、「1日の仕事の流れ」が最多の57.9%、次いで「福利厚生」(46.4%)となった。
福利厚生を除くと、上位5つ(前述に加えて「社内の人間関係」「採用/不採用の基準とその理由」「実際の勤務時間と残業時間」など)は企業の採用サイトの募集要項や就活情報サイトなどにはあまり掲載されることがない情報であり、企業のリアルな姿を知りたいと考える学生が多いことがわかる。
SNSで仕事内容や働き方、社風などに関する情報を見て企業に興味を抱いた経験があるか聞いたところ、45.5%が「ある」と回答。SNSで特定の企業の仕事内容や働き方、社風などに関する情報を見て、選考や入社の意向度が変化したかについて聞いたところ、「(意向度が)非常に上がった」が17.3%、「やや上がった」が56.9%という結果となった。
全体的に就活生は、就活サイトなどではわからない仕事や社内の実態についての情報をSNSで求めようとしているのだ。
Twitterでは就活垢、インスタは就活メイク情報を収集
就活生は、情報収集以外でもSNSを活用している。内容はSNSごとに大きく異なっている。
たとえばTwitterは、前述のように就活用ライフハックを発信するアカウントが多い一方で、就活専用の「就活垢」も多い。主に、就活関連の情報交換用に利用されているようだ。大学に入学する際に「大学垢」を新たに作るのは常識となっているが、それだけでなく就活専用のアカウントを作ってやり取りするのも当たり前となりつつあるのだ。
Instagramでは「#就活」は99.7万件、「#就活生」は21.3万件、「#就活生と繋がりたい」は14.4万件。主に就活情報アカウントや企業などが、就活関係の情報やライフハックなどのハウツー系情報、自社の情報などを発信する場となっているようだ。
「#就活カラー」は13.4万件、「#就活メイク」は5.8万件、「#就活ヘア」は8.6万件など。「#就活カラー」は就活向けのダークな髪色の投稿であり、美容院や就活生自身が投稿している。「#就活メイク」「#就活ヘア」は、就活情報アカウントや美容院の投稿が多いが、就活生自身が投稿しているものもある。
Twitterは主に情報交換用として、Instagramは就活に役立つ服装やヘアスタイル、役立つ情報収集の場として利用されているのだ。
就活生の等身大の姿がわかるTikTok
最近は、TikTokも就活に活用されつつある。TikTokで「#就活」は12億再生、「#就活生と繋がりたい」は3790万再生、「#就活あるある」は1億4000万再生、「#就活ヘア」は520万再生、「#就活しんどい」は150万再生などとなっており、就活関係のハッシュタグがついた動画はやはり人気が高い。
TikTokでは就活ヘアや面接のコツなどのライフハックもあるが、就活のあるあるネタを投稿するアカウントのほか、就活生が悩みや内定をとった喜びなどを投稿する場となっているところが特徴的だ。本音が多く見られ、等身大の就活生の姿がよくわかる状態となっている。「今日も不採用通知がきました 持ち駒もないのでまた1からのスタートです」「もう就活終わろうかなと悩み始めてます」「初めて対面のインターンに行く」など、歩く自分の足元動画に就活の日常や内面の悩みを文字で載せたものなど、切実でリアルなものが多く見られる。
TikTokの就活生における人気ぶりは、以下の調査からもわかる。Suneightの「Z世代の就活生のTikTok活用実態」に関する調査(2022年2月)によると、就活生に普段どのくらいTikTokを見るか聞いたところ、「1日1時間未満」が35.0%、「1日1時間以上」が29.0%などとなり、「1日3時間以上」も14.0%いた。
最近は、企業もTikTokで就活生向けに発信することが増えている。同調査によると、23卒の学生の81.0%がTikTokで「企業の動画」を見たことがあり、そのうち80.2%が企業のTikTokの動画がきっかけで「企業に興味を持ったことがある」と回答している。
TikTok動画がきっかけで興味を持った理由は、「企業イメージがつかめたため」(58.5%)、「企業の世界観がつかめたため」(41.5%)、「簡潔に企業の魅力がわかったため」(36.9%)、「短い動画で最後まで視聴できたため」(35.4%)などとなった。さらに、企業のTikTokを見た学生の66.2%がTikTokで企業に興味を持ち、「実際にエントリーした」経験がある。
今どきの就活生は、Twitterで就活垢を作って就活生同士つながり、情報交換。TwitterとInstagramで就活生向けのコツを収集し、TikTokであるあるネタでほっとしたり、慰められたり、本音を漏らしたりしているようだ。企業側も様々なSNSを活用し、新卒採用に生かしている。
そのようなさまざまなSNSを見ることで、就活の実態だけでなく、就活生の悩みや心、求めているものなどがわかる。気になる方はチェックしてみてはいかがだろうか。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
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