SNSは世界中の人々とつながることができる非常に便利なツールですが、時にはうっかり仕事上の機密情報を漏らしてしまったり、裏アカウントが発掘されて炎上したり、非公開グループに送信した投稿が報道機関にリークされたりすることがあります。オーストラリア・ディーキン大学の上級講師であるVan-Hau Trieu氏らが、一体なぜ人々はSNSに共有してはいけないものまで投稿してしまうのか、そしてSNSスキャンダルを避けるにはどうしたらいいのかを解説しています。
Employee’s Unauthorized Disclosure of Organizational Information on Social Media: The Role of Emotions and Boundary Permeability
https://aisel.aisnet.org/icis2021/user_behaivors/user_behaivors/5/
Why do people overshare online? 5 expert tips for avoiding social media scandal
https://theconversation.com/why-do-people-overshare-online-5-expert-tips-for-avoiding-social-media-scandal-189528
2022年8月、フィンランドのサンナ・マリン首相が友人宅のパーティーで踊る姿を撮影した動画が流出して謝罪に追い込まれました。この動画はプライベートなInstagramアカウントに投稿されたものでしたが、どこかから報道機関へリークされ、世界的な話題となっていまいました。このように、オンラインで共有した写真や動画には流出の危険があるものの、重要な機密やプライベートな画像をSNSに投稿してしまう人は後を絶ちません。
アメリカを含む19カ国の若者を対象にした調査では、18~35歳のインターネットユーザーの半数以上が「人々は個人情報や写真、動画を共有しすぎている」と考えていることが明らかになりました。その一方、40%が「自分の個人情報を投稿して後悔したことがある」と回答しており、懸念を抱きつつもうっかり不用意な投稿をしてしまいがちな模様。SNSへの不用意な投稿は単に自分が恥をかくだけではなく、雇用主がSNSを利用して求職者の身辺を調査する際に問題視される可能性もあるほか、不適切な投稿を行ったせいで失職してしまう危険もあります。
Trieu氏らの研究では、人々がSNSで情報を過剰共有ししまう理由は「感情」にあることが示唆されています。現代の人々は強い感情を持つとSNSを通じて友人や家族、同僚とコミュニケーションを取り、反応やサポートを得ようとすることがよくあります。これは幸せや興奮を覚えた場合もあれば、怒りや欲求不満を感じた場合もあり得るとのこと。感情的になると仕事とプライベートの垣根を跳び越えやすくなり、SNSにおける拡散力を過小評価してしまい、うっかり不適切な投稿をしてしまいやすくなるとTrieu氏は指摘しています。
Trieu氏は、SNSにおける過剰共有を避けてスキャンダルを防ぐ方法について5つのヒントを挙げています。
◆1:仕事とプライベートの境界線を明確にする
うっかり仕事に支障が出る投稿をしてしまわないよう、SNSの使用にルールや制限などを設けることが必要です。また、友人・同僚・家族にもSNSの運用方針や仕事とプライベートの境界について伝えておき、誰かが境界線を踏み越えたら懸念を訴え、自分の境界線を尊重してくれない相手との付き合いを再考するべきだとTrieu氏は述べています。また、特定のSNSではプライベートアカウントのみを所有し、別のSNSでは仕事用アカウントのみを運用するという方法でも境界線を確立できます。
◆2:他人の境界線を尊重する
自分にとっての境界線を踏み越えられたくないのであれば、当然他人の境界線も尊重するべきであり、許可なく他人の写真や動画を投稿するのは控えるべきです。Trieu氏は、「その人が写真を撮られたり動画を撮影されたり名前をタグ付けされることを望まない場合は、その人の希望を尊重してください」と述べています。
◆3:SNSアカウントをロックダウンする
ほとんどのSNSにはプライバシー保護に役立つ設定が用意されているため、投稿を閲覧できるユーザーを制限したり、公開する個人情報を制御したりすることができます。また、アカウントのプロフィールに入れる情報についても注意を払う必要があり、雇用主にアカウントを知られたくない場合は仕事に関する情報は記載しない方がベターです。
◆4:投稿する時にしっかり考える
まず、傷ついたり怒ったり興奮したりしている時は、感情的になって冷静な判断が下しにくいのでSNSを使用しない方が安全です。何かを投稿する時はいつも心を落ち着けてから、「この投稿は何人の人に表示されるだろう?」「誰かが傷つくだろうか?」「誰かにメリットがあるだろうか?」「同僚や上司に見せても平気か?」「自分に敵意を持っている相手が見ても問題にならないだろうか?」といったことを自問自答し、その上で投稿の可否を判断するべきだとのこと。
◆5:危ない投稿はすぐに削除する
うっかり個人情報につながる内容や不適切なコンテンツを投稿をしてしまうことは誰にでもあり得ますが、SNSではそうした投稿を削除することができます。他人によって投稿されてしまった場合でも、気づいたら本人に削除するよう依頼したり、すでに拡散し始めている場合はウェブサイトに連絡して削除を依頼したりすることをTrieu氏は推奨しています。
Trieu氏は、「ソーシャルメディアで共有されるものはプライベートではないことに注意してください。『プライベート』メッセージでさえ、簡単に転送され、スクリーンショットを撮影され、再投稿され、他の場所で共有されます」と述べ、同僚や上司に言えないようなことはオンラインでも投稿するべきではないと主張。「ソーシャルメディアは仕事や私生活を豊かにしてくれますが、思慮のない投稿や過剰共有は自分や他人にダメージを与える可能性があります。仕事や私生活でよりよくあるためにも、ソーシャルメディアでは賢くあるべきです」とアドバイスしました。
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