メディア企業のCROの職務内容は、10年前とは大きく異なっている。
「かつては仕事の大部分がクライアントを訪ねて営業をかけることだった」と語るのは、デイリー・ビースト(The Daily Beast)のCROを5年近く勤めているミア・リビー氏だ。同社にとっては広告が主な収益源であったため、当時はCROという肩書きを「広告販売責任者」と彼女は考えていたと言う。
DIGIDAYポッドキャストの最新エピソードに出演してくれたリビー氏の勤務時間の約半分は、プロダクト、編集、オーディエンス、サブスクリプションチーム、営業チームとの社内ミーティングに費やされており、その目的は広告、サブスクリプション、ライセンシング、コマースのすべてを健全なバランスで連携させることだと述べた。
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2022年に入ってデイリー・ビーストは、サイトのユーザーを一時的な訪問者から有料購読者へと収益化する、より効率的な方法を見つけたいと考えた。これは、読者を購読者に変えるためのパイプラインを構築することを意味していたが、その過程でファーストパーティデータを収集する方法を見つける必要もあった。
しかし、景気減速の兆しが見え始めているなか、いまやこの有料購読者獲得戦略は、2020年のパンデミックによる景気後退よりもはるかに長く続く可能性がある逆風に耐える方法として検討されているとリビー氏は言う。
以下は、説明のために軽く編集し要約した内容である。
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変わり続けるCROの職務内容
収入源の多様化によってCROの役割は変わった。10年前に私が(デイリー・ビーストに)参加したときは、広告が唯一ではなくても、主要な収益源だった。これは会社によってはもっと最近でも(広告が主要な収益源)そうだだった。以来、私たちは複数の異なる収益源に大幅に分散させてきた。そして私が思うに、CROは現在全体的なパイの一部を構成する複数の収益源を持つビジネスを運営しており、以前には考えられなかったような方法で、ユーザーとユーザー体験についてより深く考える必要がある。
率直に言って、広告に関して言えば、今では収益目標を達成することに以前よりもずっとフォーカスしている。そして場合によっては、ユーザー体験を犠牲にしてページに掲載される広告を増やすことをいとわない人もいると思う。なぜならそれによって収益が増えるからだ。
しかし、私の役割としては、その追加された広告がページにどのような影響を与えるかに本当に注意しなければならない。それによって人々がもっとスクロールしなくなるのか。広告が多すぎるからサイトに来るのを嫌がるのか。私たちはオーディエンスから得ている収益の流れがあるので、ユーザー体験を真に強固なものにし、常にエンゲージメントとロイヤルティを構築する必要がある。そのことは真剣に考慮しないといけない。
「グレートミドル」の収益化
我々が抱えているビジネスは、はるかにユーザー中心となっている。ユーザー体験は私たちにとって非常に重要だが、その上で各ユーザーを収益化する最善の方法を考えている。そのことは、彼らがデイリー・ビーストと持つエンゲージメントの深さに完全に依存している。
私たちのホームページに直接アクセスしてくれる、驚くほど忠実なユーザーたちがいることを知っている。これらの人々は私たちがサブスクリプション登録にあたって当てにしている人々であり、私たちは彼らが登録する可能性が高いと考えている。一方でサイトに一度も来たことのない人もいる。これらの人々は、必ずしもサブスクリプションに加入するとは限らないので、私たちの目標は、彼らにサイトを訪れてもらい、また再度戻ってくるようにすることだ。彼らがザ・デイリー・ビーストにますます慣れ親しむことで、いつか忠実なユーザーの1人になってもらうことが目的だ。
そして、「グレートミドル(大きな中間層)」がある。この層は、この両極端の中間に位置する。そしてその中間には、それらの人々を収益化する無数の機会がある。私たちが「把握しているユーザー向けのプロダクト」と呼んでいるもの、すなわちニュースレター、アプリ、サイト上のプッシュ通知へと彼らを駆り立てることができる。無料であってもプロダクトに登録してもらえれば、ユーザーは以前よりもはるかに貴重な存在になる。私たちのデータによると、これによって彼らはより頻繁に戻ってくるようになるので、サブスクリプションに加入していなくても定期的に収益を上げることができる。
2020年のやり方を一旦置いておく
2020年第2四半期が私たちにとって素晴らしい四半期ではなかったことは明らかだ。しかし、読者が私たちに何を求めているのかを本当に把握し、それを届けることができたように感じている。今、私たちは経済や政治を取り巻く多くの未知数に対処していると思うが、私たちはもう一度、私たちのユーザー体験を真に強力にし、人々が戻ってき続けたいと思う製品を作り、不確実な時期であっても広告パートナーにちゃんとサービスを提供したいと思っている。
この2つ(パンデミックと、現在の不景気)は、サバイバルのための創意工夫が必要なことを除けば、ビジネスの観点からは必ずしも一致していないと思う。同じことを何度も繰り返してはいけない。2020年第2四半期のやり方を繰り返そうとしても、現在ではうまくいかないだろう。私たちは常に市場を読み、ユーザーが私たちに何を求めているのかを常に理解し、それに応える必要がある。
[原文:‘It takes ingenuity to survive’: How The Daily Beast’s Mia Libby is bracing for an economic slowdown]
Kayleigh Barber(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)