フォートナイト をマーケティングチャネルとして確立できるか:著名ストリーマー、サイファーPKの構想

DIGIDAY

人気ゲーミングストリーマー兼ユーチューバー、アリ・ハッサン氏(通称「サイファーPK」、SypherPK)は先頃、フォートナイトクリエイティブ(Fortnite Creative)のマップメイキング部門を、同氏が1月に設立したばかりのコンテンツクリエーションスタジオ/コンサルタンシー、オニ・スタジオ(Oni Studios)内に開設したと発表した。

この新事業の狙いは、創成期にある新たなマーケティングチャネルの制作および配信の両面をひとつにすることで、メタバースへの敷居を下げ、関心のあるブランドをより多く迎え入れることにある。

オニ・スタジオのフォートナイトマップメイキングチームは現在、3名のフルタイム雇用者からなる。同社は2022年末までにこれを15名に増やし、広範なネットワークを構築する請負業者も引き入れる計画だ。この新部門の構想は約1年前から練られていた。現時点まで、同社は主に、新進ストリーマー/動画クリエイターのインキュベーターおよびコンサルタンシーとして機能しているが、ブランドディールはオニ・スタジオおいて重要度を増しており――同社は毎月10のブランドディールを結んでいると、CEOダニエラ・アリ氏は話す――それに伴い、同社はブランドコンサルティングおよび、成長を続けるメタバースマーケティング部門へと手を広げている。

ブランドの関心を集め続けるフォートナイト

「専任マーケティングチームの立ち上げは単純に、ブランドの需要に対する回答だ」とハッサン氏は話す。「僕はこれまで片手では足りないくらい多くのカスタムマップを手がけてきたし、各エクスペリエンスのデザインと技術面に対する僕自身の貢献には絶大なものがある。でもだからといって、これは僕がひとりで自身のチームを率い、可能性を掘り下げ、完璧なマップを創り上げる、というものではない」。

オニ・スタジオがフルタイムのフォートナイトマップメーカーを雇用したのはわずか2カ月前のことで、そのため初めから終わりまでブランデッドエクスペリエンスを手がけたことはまだないが、ハッサン氏はすでに、ホンダ(Honda)のHondaverse(ホンダバース)といったアクティベーションの販促における助言や制作技術に関する専門知識を提供している。

メタバースマーケティングはいまだ胎動期ではあるが、フォートナイト専門の制作スタジオはブランドのニーズに応える、すでにいくつも形成されており、その最新のものがこのたびハッサン氏が立ち上げたスタジオとなる。2021年を通じ、ジレット(Gillette)コカ・コーラ(Coca-Cola)、米フードデリバリー企業グラブハブ(Grubhub)など、非ゲーミング関連ブランド勢が次々とこの流れに乗り、フォートナイト内に自身のブランド名を冠した世界を構築した。

「これを一時的なブームとは考えていない。フォートナイトメタバースは――いい言葉がないから便宜的にそう呼ぶが――間違いなく今後も残る」と、独立系フォートナイトスタジオ、アトラス・クリエイティヴ(Atlas Creative)のCEOマイケル・ヘリンジャー氏は断言する。「自身のスペースの創造に興味津々のブランドから問合せがひっきりなしに来ている。つまりこれは、1回だけのお試しモードではなく、フォートナイトというバーチャルスペースに自らの場を本気で設けたい、そこで長期に渡るエクスペリエンスを持ちたい、と考えているブランドが増えていく、という流れの兆しにほかならない」。

いかにエクスペリエンスを提供するか

ハッサン氏のスタジオが同業他社らと一線を画す理由は、自ら創造する世界の存在をシームレスに発信できる能力にある。フォートナイトやロブロックス(Roblox)といったプラットフォーム内でのバーチャルブランドアクティベーションの場合、その常道は従来型メディアのそれとは少々異なる。ブランドに必要なのはプラットフォームにコンテンツを上げることだけで、あとは閲覧数の伸びを見守っていればいい、というわけにはいかない。

そのコンテンツを価値あるエクスペリエンスにするには、3次元のブランデッドワールドに対する真のエンゲージメントおよびパーティシペーションが求められる。ハッサン氏の場合、著名なフォートナイトクリエイターという自らの地位を活用し、自社のアクティベーションを自身のTwitch(ツイッチ)ストリームやソーシャルフィード上で共有することが可能であり、実際、氏は先頃実施したHondaverseのアクティベーションの販促でも、この戦略を用いた。

「それこそがオニ・スタジオマップメーキングチームの売りにほかならない。我々には、そうしたクリエイティブなエクスペリエンスの創造に欠かせないインフルエンサーと一連のサービスがすべて揃っている」とアリ氏は話す。アリ氏はハッサン氏の妻で、自らも著名なインフルエンサーでもある。「ブランド、インフルエンサー、サービスプロバイダーの三者が共通のビジョンおよびゴールを目指して足並みを揃えていること、それが極めて重要なことであり、それがあるからこそ、このモデルは機能する」。

フォートナイトアクティベーションの構築と販促を共に行なえるハッサン氏の能力がオニ・スタジオの強みのひとつ。

著名なフォートナイトインフルエンサーの存在は、オニ・スタジオがこれまでに雇用した腕の立つマップメーカーたちにとっても魅力のひとつとなっており、同社はその利点を活かして今後も有能な人材を引き入れたいと考えている。フォートナイトクリエイティブにはフリーのクリエイターが大勢おり、オニ・スタジオの所属クリエイターたちよりも、手がけるプロジェクトの選択に関する自由――そしてより高額な報酬の可能性――が約束されている。

一方、オニ・スタジオに所属する者たちは、さまざまな利点やより安定した収入に加えて、自身の仕事をハッサン氏が有する数百万人ものファンと共有できる、という得がたい機会が得られる。「オニ・スタジオとそこで働く素晴らしい人たちを紹介されてすぐに思ったのは、彼らが提示してくれた機会もゴールも、すべて僕自身のそれと完璧に合致する、ということだった」と、オニ・スタジオでフルタイムで働くフォートナイトデベロッパーのひとり、ジョーダン・フレンケル氏(通称「イートユーシェイ」、eatyoushay)は話す。

強力なファンベースも不可欠

ハッサン氏がHondaverseアクティベーションに関して技術的な助言を提供したのは確かだが、同エクスペリエンスの開発の大半は独立系フォートナイトスタジオ、ビヨンド・クリエイティヴ(BeyondCreative)が手がけた。とはいえ、ホンダがハッサン氏の強大なフォロワー力を同アクティベーションの販促――つまり、メタバースマーケティングの最終的な配信面――に利用したことは、オニ・スタジオの複合モデルの強みの実証にほかならない。

「サイファーPK氏はフォートナイトに巨大なファンベースを有している」と、米ホンダのメディア部門トップ、フィル・フルスカ氏は話す。「つまり彼は、高品質の画/映像と新型ホンダHR-Vの精巧なレプリカの制作能力をフルに活用し、Hondaverseをフォートナイトクリエイティブのマップモード内に構築する人物として最適だった、ということだ」。

もっとも、同社のフォートナイト部門はこの類のエクスペリエンスだけに特化しているわけではない。ハッサン氏のコミュニティに向けたエクスクルーシブなエクスペリエンスの創造にも、オニ・スタジオのインキュベータークラスにおけるクリエイターのトレーニングにも、今後活用される。ただし、メタバース所有権を一刻も早く主張したくて仕方のないブランドの増加が予想されるなか、パートナーシップが同スタジオの最優先事項であることは、この先も変わらないだろう。

「僕がフォートナイトに超がつくほど熱心で、アンリアルエンジン(Unreal Engine)が持つ能力の絶大な信奉者である事実は、別に驚くことじゃない」とハッサン氏。「あのクリエイティブモードはほかのプラットフォームの何光年も先を行っているし、そのおかげで僕らは、他よりもはるかに成熟した、イマーシブでエンゲージングなエクスペリエンスを構築できるのだから」。

[原文:How a prominent streamer plans to make the metaverse marketing ecosystem more accessible to marketers

Alexander Lee(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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