店内 リサイクル がビューティ業界で主流に:課題は高まる透明性と非営利モデル化

DIGIDAY

かつては一部のビューティ小売店にしかなかった店内のリサイクルボックスは、いまや一般的になりつつある。

セフォラの店内リサイクルパートナー、パクトコレクティブ

もっとも最近店内リサイクルを採用したビューティ小売業者はセフォラ(Sephora)だ。7月18日にパイロットプログラムを35カ所に拡大し、エスティ ローダー カンパニーズ(Estée Lauder Companies)やロレアルグループ(L’Oréal Group)傘下の数々のブランドなど、この数年間に店内リサイクルを導入したブランドや小売業者の仲間入りを果たした。しかしグリーンウォッシングに対する消費者の懐疑心は高まっており、ブランドには製品の行方についての透明性を提供するというプレッシャーがある。

ミア・デイビス氏は、クレドビューティ(Credo Beauty)のインパクト・持続可能性担当バイスプレジデントだ。そして、セフォラのリサイクルプログラムの提携先である、設立から1年のビューティリサイクル非営利団体、パクトコレクティブ(Pact Collective)の共同創設者でもある。デイビス氏は「人々は自分が何をどれだけ使っているかを、そしてモノの行方を見直し始めている」と述べている。同氏によると、セフォラが米国とカナダで店内リサイクル用ボックスを導入したことは、店内リサイクルプログラムにとって重要な年の一部であるという。

パクトの回収ボックスは、現在、クレドビューティ、コスバー(Cos Bar)、ビューティカウンター(Beautycounter)、ハドソンズベイ(Hudson’s Bay)、ウィナーズ(Winners)、多くのインディーズブティックなど、北米220カ所のビューティ店舗に設置されている。この3年間に米国で店内リサイクルを採用したブランドや小売業者にはコレス(Korres)や、リサイクルビジネスのテラサイクル(TerraCycle)と提携しているデシエム(Deciem)やノードストロム(Nordstrom)がある。

リサイクルの現実

このような店内ボックスが登場している背景には、ビューティ製品のボトルを自治体のリサイクルボックスに捨てると結局は焼却か埋め立てになる場合が多いことを消費者が理解し始めたことがある。2021年4月、アルーア(Allure)はプラスチック製パッケージに「リサイクル可能」と表示しないことを決定した。これは、ビューティ製品の容器がサイズや素材ゆえに実際にはリサイクル可能ではないことが多いからだ。

パクトコレクティブの共同創設者であるビクター・カサーレ氏は、1990年にMACコスメティックス(MAC Cosmetics)の主任化学者としてMACの店内リサイクルプログラムの設立を支援した際にこの教訓を学んだ。その後、カサーレ氏は詰め替えができるコスメブランド、モブビューティ(MOB Beauty)の創業や、カスタムスキンケアブランドのピュアカルチャー(Pure Culture)の共同創業などを経て、リサイクル可能性についての自分の長年の研究が新しい解決策のための仕事につながったと述べている。

「地方自治体の仕分けシステムは自動化されている。システムには高速の幅広いベルトがあり、一番仕分けされるのは大きめのボトルやガラス製ボトル、プラスチック製ボトルなどだ。小さなものはすべてベルトの端からコンテナに落ちて、通常は焼かれるか埋め立てられる」。カサーレ氏は、カリフォルニア州のレコロジー(Recology)などの自治体リサイクル施設に電話してそのような現状を知った。「すごく動揺して、怒りを感じた」と言い、ビューティ製品の容器がどうなるかを従業員に尋ねたときに交わした会話を振り返る。容器の処分について従業員から聞かされて、『どうして本当のことを言わないのか?』と尋ねたら、『言ったとしたら、みな怒ってリサイクルしなくなるから』と言われた」。

デイビス氏も、標準的な施設におけるビューティ製品容器のリサイクルの状況について調査した際に似たような経験をしたという。

「悲惨だった。ひどいだろうとは思っていたが、回収施設でバージンプラスチックの回収が実際にはとても少ないことにショックを受けた」とデイビス氏。

ブランドらのさまざまなリサイクルの取り組み

2021年5月にニューヨークに米国第1号店をオープンしたコレス(Korres)は、プラスチックリサイクルプログラムのプレシャスプラスチックス(Precious Plastics)と協働して店内にリサイクルラボを設置することを選んだ。客は予約すれば、店内に設置された機械で容器が素材に還元されるのを見ることができる。参加者には無料ギフトが進呈される。

MAC以外にも、店内リサイクル回収を早期に始めたところには2014年のロクシタン(L’Occitane)、2009年のオリジンズ(Origins)、2009年のキールズ(Kiehl’s)などがある。これらのブランドはテラサイクルと提携してプログラムを運営している。テラサイクルは多くのビューティブランドや、プロクター・アンド・ギャンブルをはじめとする米国最大手コングロマリットとも協働している。

「消費者からはビューティ分野のリサイクルと持続可能性がますます意識されている。廃棄物を最小限に抑え環境を優先するために企業がその役割を果たしていることを消費者は期待している」と述べているのは、米国キールのマーケティング担当バイスプレジデント、ダイアナ・マローン氏だ。キールズは2019年、1年間に回収したパッケージが100万個に達した。2020年にはパンデミックによるシャットダウンでその流れは中断されたものの、2021年には回収数は70万1000個までに回復している。

「現在の顧客はとても情報通だ」と、ロクシタンのグループコーポレートコミュニケーション責任者のマリアンナ・フェルマン氏は述べている。「店内リサイクルという考えは、利便性に影響するかもしれないが、環境改善のためにポジティブな新しい購入モデルを取り入れたいという消費者からの高まる願望と受容に向けた対応だといえる」。

特に若年層の消費者によって変化への要求は推進されている。

デシエムの持続可能性・社会的影響担当シニアディレクター、ジャクリン・カンカム氏は次のように述べている。「主に店舗やカスタマーサービスプラットフォームを通じてZ世代の顧客から関心や要求が届けられている。だが、X世代、特に最大のオーディエンス層の親たちから店内リサイクルプログラムについて質問されたり、彼らがリサイクルを利用しているのが判明しつつある」。

リサイクルの透明性への高まる要求

消費者がグリーンウォッシングという考え方をより意識するようになるにつれて、ビューティ小売業者らはリサイクル製品の行方についての透明性を向上すべきだというプレッシャーを感じるようになっている。

パクトコレクティブをローンチする以前は、クレドビューティもテラサイクルに依存しなければならなかった。しかし製品がどこでリサイクルされているかをクレドが尋ねた際に返ってきた情報量は「ゼロ」だったとデイビス氏は言う。

「我々はリサイクルの行方について徹底的に透明でありたいと思う」とデイビス氏。

テラサイクルの透明性の問題

テラサイクルは2021年、ラベルの透明性の問題をめぐる訴訟に和解した。ラストビーチクリーンアップ(The Last Beach Cleanup)が起こしたこの訴訟では、提携先のパッケージにあるリサイクル可能性に関する表示が正確ではないという主張がされた。テラサイクルは和解でラストビーチクリーンアップの裁判費用を負担し、サプライチェーン認証プログラムを設けることに同意した。その合意によると、テラサイクルは「自社サイトと各製品のラベルに表示されるリサイクル可能性の正当性を裏付ける情報と文書を記録し、書面で保持する」と述べ、容器が実際にリサイクルされたことを確認する書面を提示することになった。

Glossyへのメールでテラサイクルのスポークスパーソンは、「要請に応じて施設の名前を契約パートナーと共有している。また、契約パートナーには我々のプロセスを監査する権利がある」と述べている。スポークスパーソンによると、テスト・検査・認証企業のビューローベリタス(Bureau Veritas)により北米とほかの国々でのビューティ関連リサイクルのサプライチェーンを監査され認証されたという。テラサイクルは同社独自のプロセスを保護するために、リサイクルプロセスを監査する企業に対して機密保持契約と非競争契約を義務付けている。

リサイクルが非営利であるべき理由

デイビス氏は、ビューティ製品の容器リサイクルに関しては複数の理由から非営利モデルが必要だと考えている。まず、非営利モデルであるがゆえに、パクトコレクティブはクレドビューティの競合他社を参加させることができた。「この業界の大勢の利害関係者に参加してもらいたいと思った。これをビジネスにしたら、あっという間に競合相手になってしまうだろうと感じた」。

デイビス氏とカサーレ氏が語っているビューティ関連リサイクルの現実は率直なものだ。現時点ではパクトコレクティブが回収した製品は同社の分別施設に留まっているままである。コレクティブは、十分な量の素材が集まり(分別施設の次の段階である)処理施設にそれを購入してもらえるようになるのを待っているところだ。

デイビス氏は次のように述べている。「我々は売れるだけの素材の量を確保できる規模になりつつある。対応してもらうためには大量でなければならないというのはばかげている」。パクトコレクティブは素材処理のためにイーストマン(Eastman)などのリサイクル施設と現在交渉中だ。

また、パクトコレクティブの最終的な目標には、詰め替え可能や堆肥化可能なオプションなどプラスチックを使わない持続可能なパッケージソリューションに向けて取り組むことがある。

「我々の使命はプログラムのリサイクルの部分を廃止することだ」とデイビス氏。「非営利でなければならない理由、それは我々の事業が不要になることが目標だから。それはビジネスの機能方法としては一般的ではないのだが」。

[原文:In-store beauty recycling is going mainstream

LIZ FLORA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

Source

タイトルとURLをコピーしました