アリババの米国事業が軌道に乗らない理由:中国進出支援の苦戦と誤算

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中国のオンライン小売業者のアリババ(Alibaba)は最近、米国内での事業に関して悪いニュースが相次いでいる。

同社は7月29日、米国証券取引委員会(SEC)の監視リストに追加された。直近の会計年度の財務監査が適切に行われなかったことを指摘され、中国のテック大手企業である同社は、上場が停止される可能性が出てきたのである。これに対する対応として、同社は8月1日、「該当する法や規制を遵守し、上場の状態を維持するために努力する」と語った。これは、7月25日のフィナンシャルタイムズ(Financial Times)の記事で、アリババが米国の企業をeコマースプラットフォームに誘致するのに苦戦しており、当初の目標を達成できていないことが報じられた後のことだ。

中国進出の苦戦とパンデミック到来

アリババは、米国の販売業者に対して、より簡単に国際的な事業展開ができるよう支援することに重点を置き、Amazonなどのプラットフォームに対する主な競合上の優位点として熱心に売り込んでいた。しかし専門家たちによると、同社は米国の企業が中国の市場を十分に理解し、販売することを支援できなかったという事実が、海外で苦戦する一因になったという。2019年のローンチ直後にパンデミックが起きたことも、事態を悪化させている。当初、アリババのマーケットプレイスで最初に成功した米国の出品者のなかには、たとえば輸出企業のLTAインターナショナル(LTA International)、動物実験を行わないビーガン化粧品ブランドのMGSアクセサリーズ(MGS Accessories)、サステナブル製品メーカーのカルミックシード(Karmic Seed)などがあるが、アリババウェブサイトを閉鎖したようだ。

アリババは自社の米国での売上高を正確に明かしていないが、海外事業からの収益は過去3年間で、合計収入の7%でしかない(2022年度に100億ドル(約1兆3500億円)未満)。同社は、米モダンリテールからのコメントの要請に対して、プレスの期限までに回答していない。

同社は10年間にわたり、米国での存在感を高めようとしてきた。2010年にはeコマースサービスを提供するベンディオサービシズ(Vendio Services)を買収したが、これは、中国企業である同社にとって米国での初の大規模な買収となった。2014年には、Amazonに対抗するため米国を拠点とするイレブンメイン(11 Main)というウェブ店舗を開設したが、人気を得られず、1年後には閉店した。2016年には米国の営業所を設立し、米国を拠点とするグローバル企業を雇い、アリババグループが運営する中国最大のオンラインショッピングモール、天猫(Tmall)での販売を開始した。2019年には、米国のベンダーに対して正式に門戸を開き、自社のオンラインB2Bマーケットプレイスにショップを設置した。

アーリーアダプターへの対応

eコマースソフトウェアのソリューションプロバイダであるショップウェア(Shopware)でグローバルマーケティング開発ディレクター、ベン・マークス氏は、米モダンリテールへのメールで次のように語った。「米国の小売業者は中国(または、ブラジルやインドなど)の消費者にどのようにして販売すべきかを知らず、アリババはアーリーアダプターに対してそうした問題を解決しなかったようだ。この成長の失敗は、同社のプラットフォームの取り組みが2019年に開始した直後にパンデミックが発生したことによってさらに悪化した」。

パンデミックの結果として、中小企業の運用経費は大幅に減少し、その後、サプライチェーンが制約されたため、より利益率の高い国内販売が増加したと、マークスは付け加えた。

アリババのブランドは、すでに多くの業者が存在していた市場に新しいものを提供したわけではなく、米国内の消費者にも広く知られてもいなかったと、コンサルティング企業のグローバルデータ(GlobalData)で小売マネージングディレクターを務めるネイル・サンダース氏は語る。

「アリババは、出品者の獲得に力を注いだ。同社は米国の企業が中国市場および世界規模での販売を支援することができるというのがその根拠だった。同社は、大規模なブランドでは一定の成功を収めたが、小規模な企業は必ずしも世界的な取引を望んでいるわけではなく、巨大な中国市場に参入するために必要な規模を満たすことができなかったことから、取り込むのが困難だった」と、サンダース氏は述べている。

「国内でのShopify(ショッピファイ)とamazonの認知度と利便性も、間違いなく要因となっている」と、マークス氏は追加している。

出品者数の目標を下方修正

アリババは、alibaba.comで100万以上の米国の小売業者と契約し、Amazonのような企業と国際的に競争することを望んでいた。しかし、ファイナンシャルタイムズ(Financial Times)が最近報じたように、同社は出品者数の目標を、「毎年2000社」に引き下げた。

「100万社の企業という目標を達成するのは極めて困難だ。この数は、米国のような巨大な市場にとっても相当のものだ。中規模や、かなりの小規模の企業まで掘り下げる必要があり、これらの多くは中国で商売を行う能力もないし、希望してもいない」と、サンダース氏は説明する。

「米国の企業が中国で販売を行う際、多くの場合、価格でも競争する必要があり、労働力や業務運営のコストを比較すると、多くの企業にとっては不可能なことだ。キャンセル率の高さは、一部の企業は商売を試みたが、望んでいたような成功を得られなかった企業があったことを示唆している」と、サンダース氏は付け加えた。

以前にアリババのウェブサイトでサクセスストーリーとして宣伝された、LTAインターナショナル、MGSアクセサリーズ、カルミック・シードなどの米国の小売業者はアリババでの販売を終了したか、ほかのプラットフォームでプレゼンスを作り上げているようだ。フロリダを拠点とする輸出管理企業のLTAインターナショナルは、アリババで「新しい販売で140万」を呼び込んだと宣伝されたが、現在はサイト自体が存在しない。美容品企業のMGSアクセサリーズの商品はアリババのマーケットプレイスに存在せず、サステナブル商品メーカーのカルミック・シードは競合他社のShopifyに店舗を設置した。

「アリババが成長目標を年間2000社の小売業者に修正したことは、同社のプラットフォームに100万以上のSMB(中小規模の企業)を引き入れるという最初の構想が失敗だったと明確に表している」と、マークス氏は指摘する。

「アリババは量で勝負しようとしたが、多数のSMBを効果的に採用したり、または米国のSMB市場に対して海外販売の機会を納得させられるような米国内チームを作り上げることに失敗した」と、マークス氏は述べている。

[原文:Why Alibaba’s U.S. operations have struggled to take off]

Vidhi Choudhary(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Alibaba

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