Facebook広告、iOS14以降の戦略の内情:「広告のエコシステムに逆風が吹いている」

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AppleがiOS14を市場に送り出してから1年半近くになる。iOS14では、ユーザーのウェブ全体での行動をアプリがトラッキングするのを許可するかどうかを、ユーザーが選択できるようになった。そして、メタ(Meta)の保有するFacebookの広告プラットフォームは、かつてはターゲティング広告によってD2Cブランドの爆発的な普及を促進したが、現在、iOS14への対応に腐心している。

広告収益が減少

2022年度の第2四半期において、Facebookの親会社であるメタは広告収益が前年に比べて減少したことを報じた。これは、ターゲティングの変更に伴い、マーケターたちが支出を抑えていることを示している。これに対してメタは、有料広告のパフォーマンス向上のため、自社のオーガニックなフォロワーを増やすことに投資するよう、ブランドに対して推奨している。ソーシャルメディア大手である同社は、新しい人工知能と機械学習への投資により、買い物客により適切な広告を見せられるようにすることも計画している。しかし、それが懐疑的なマーケターを安心させるに足るかどうかはいまだ不明だ。

Facebookは小売業者の広告主に対して、これらの不確定性が実験の余地を与えていると説明している。一部のブランドは、Facebookが顧客のロイヤルティを作り上げるために役立つ方法として勧めるオーガニックコンテンツ戦略に注力し、基本に立ち返ろうとしている。しかし、コネクテッドTVやTikTokなど、別の有料プラットフォームを試しているブランドもある。

メタのコマースビジネスグループのバイスプレジデントを務めるキャサリン・シャプリー氏は、需要の修正やインフレのようなマクロ経済の状況と、iOS変更との両方が、ブランドが新規および既存の消費者にアプローチする能力に影響を与えていると、米モダンリテールに語った。しかし、メタは広告商品とテクノロジーへの「重点的な投資」を続け、より効果的な広告を行っていくと、同氏は語っている。Facebookは現在、広告主を支援する新しい戦略を提示しようと試みるとともに、広告主が閲覧者数を増やすのに役立つテクノロジーの開発に注力している。

「現在、業界では広告のエコシステムの周囲に逆風が吹いており、どのような規模のビジネスでもパーソナライズされた広告が重視されることを、我々は熟知している」と同氏は述べている。

変化への適応

Appleによる広告トラッキングへの打撃は、iOS14へのアップデートにおいて、ユーザーが自らのプライバシーをより細かくコントロールできるようにすることを意味する動きとして現れた。このアプリトラッキング透過性(App Tracking Transparency)アップデートでは、アプリ間でトラッキングされることを許可するかどうかをユーザーに確認するようになった。これは一方で、自分のブラウジング行動に基づいてFacebookの広告を見せられることを、ユーザーが実質的に拒否できることを意味する。

これに対して一部のブランドや小売業者は、iOS14の使用開始の直後に、メタやほかのプラットフォームにおけるCPM(広告1000回あたりのコスト)が上昇しはじめる一方で、誰かが広告を見たあとに商品を購入したかどうかをトラッキングすることが困難になったと報告している。

このアップデートの結果として「業界全体の各プラットフォームでパフォーマンスの変化が起きている」と、シャプリー氏は述べている。

広告パフォーマンスの向上

これに対してメタは、この変更を踏まえて広告パフォーマンスを向上させる方法に取り組んでいる。

シャプリー氏は、「消費者のデータの爆発的な増加」があったというリール(Reels)を通じて、動画の収益化を促進することが最優先事項であると述べた。同社はまた、広告システムを再構築し、送られてくるデータを「より少ないデータで、より多くの効果を得られる」ようにしている。また、人工知能と機械学習に「多額の投資」を行い、より関連性の高い広告を消費者に見せることで、広告のパフォーマンス向上に役立てる計画もある。

同氏は次のように述べている。「当社のシステムは、より少ないデータでより多くの効果を得られるように学習する。このため、このシステムを駆動するAIは、当社がそのパフォーマンスを広告主に還元する上で非常に重要だ」。

これらの投資の総合的な目標は、人々により関連性の高い広告を見せることだと、同氏は語っている。

同氏は次のように述べている。「当社は、パーソナライズされた広告が、人々とビジネスの両方にとって優れたものだと信じている。それなしでは、多くの商品やサービスを立ち上げることもできないだろう」。

D2Cマーケティングの継続的な進化

将来の投資とは別に、これまでは新規顧客を見つけるためにターゲティング広告に強く依存してきたD2Cブランドは、新規顧客を探すための新しい方法を見いだす必要に迫られている。

イーマーケター・インサイダー・インテリジェンス(eMarketer Insider Intelligence)のプリンシパルアナリストを務めるアンドリュー・リプスマン氏は、Facebookを使用しているブランドの広告支出に対する回収率(ROAS)は、もはや従来のような水準ではないと語る。それに加えて、Facebookのユーザー数自体も減少した

同氏は次のように述べている。「機会が減少した。規模が非常に巨大なため、依然として多くの機会は存在するが、過去数年間と比べれば、適切な消費者と結びつくことができる機会は少なくなっている」。

他プラットフォームへの移行

iOSの変更の前に、D2Cブランドは広告支出の約35%をFacebookに費やしていた。しかし、イーマーケターが引用したロッカーボックス(Rockerbox)のデータによると、この数値は2022年の第1四半期には27%に低下している。Facebookに多くの支出を行っていた一部のブランドは、より大きく支出を減らしている。たとえば、家具ブランドのフロイド(Floyd)はFacebook広告への支出を、マーケティング予算の80%から25~30%に減らすことを計画している

小売業者のなかには、Googleへの支出を増やす企業もあり、広告支出における割合は38.6%から40.5%に伸びている。オフライン広告も、イーマーケターのデータによれば広告支出の12.3%から15.4%に増えている。

また、小売業者はコネクテッドTVやTikTokなどの新興の広告プラットフォームもテストしている。しかしこれらは、金銭的な面でも、コンテンツの面でも限界があると同氏は指摘する。

「ブランドは、増幅されていくようなコンテンツを作成できることを明確に意識した上で、この戦略に取り組む必要がある」と同氏は述べている。

オーガニックコンテンツへの投資を推進

一方でメタはブランドに対して、有料広告を補完するためにオーガニックなコンテンツへの投資を増やすよう呼びかけており、それが、ブランドにとって顧客のフォロワーを作り上げるために役立つと、Facebookのシャプリー氏は述べている。同氏はペロトン(Peloton)のインストラクターのフォロワーや、ブレンドジェット(BlendJet)などの企業が既存の顧客向けに新しいレシピを提供していることを例にあげ、「スーパーファン」のグループが出現する可能性があると語っている。

「企業は多少クリエイターに近いものとなる。オーガニックなソーシャルコンテンツとパーソナライズされた広告を組み合わせて顧客を見つけ、ある種のロイヤルティを持つニッチなオーディエンスを作り上げている」と同氏は述べている。

同氏は各ブランドに対して、今後の変化に合わせて実験を試みるよう促している。Facebookが委託した調査によると、調査対象となった消費者の45%が、ソーシャルメディアのクリエイターが宣伝した商品を購入したいと考えていることが明らかになった。そしてこれは投稿に限った話ではなく、買い物客の47%はライブ動画から直接商品を購入すると回答した。

オーガニック戦略のテスト

ベン・ヤハロム氏は、オンライン専業ブランドとして操業を開始した男性向けTシャツブランドのトゥルークラシック(True Classic)の最高ビジネス責任者を務めている。同社は2年間で売上収益が2億ドル(約272億円)に達し、現在はほかの種類の衣料品にも進出し、卸売や小売の可能性を探っている。

Facebookのオーガニックコンテンツは、同社のマーケティングにおいて不可欠な要素であり続けると同氏は語る。特に、新色についてのアンケートや、ユーザー生成コンテンツの募集などのエンゲージメント戦略においてFacebookは重要だという。同ブランドはFacebookに7万1000人以上、インスタグラムに23万4000人以上のフォロワーを抱えている。

「当社が企業として行おうとしているのは、極めて明確な需要があり、同時に、明確に顧客の不満がある共通の領域は何なのかを理解し、それを活用することだ」と同氏は述べている。

最終的に何を得られるか

トゥルークラシックは、iOS 14の変更にもかかわらずメタでの有料広告を推進し続けている。ヤハロム氏は、同社の広告予算のうち50~60%がメタをベースにする商品に使われていると語っている。

しかし同氏は、ブランドのコンテンツ戦略を必ずしもチャネルごとに分けているわけではない。その代わりに、同ブランドはオーガニックな共感を呼ぶものを見つけてから、それを利用して、何を有料広告でプロモートすべきかを判定することにより、最大の成功を収めることができていると語っている。

「当社は、支払うものに対して最終的に何を得られるかを理解しており、それに基づいて投資の決定を行う」と、同氏は述べている。

[原文:‘There are headwinds happening in the industry’: Inside Meta’s post-iOS14 strategy]

MELISSA DANIELS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Illustration by Ivy Liu

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