陽子を「アニメーション」で表示しようと試みるプロジェクトとは?

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身近な物質は原子でできており、原子は原子核と電子で構成されています。さらに原子核は陽子と中性子によって構成されており、陽子は「クォーク」と呼ばれる粒子3つから成っています。量子力学的な存在であり、どのような姿形なのかをはっきりと捉えることができない陽子に関する何百もの実験結果を「アニメーション」で表現することで、陽子の秘密を解き明かそうとするプロジェクトが進められています。

Inside the Proton, the ‘Most Complicated Thing’ Imaginable | Quanta Magazine
https://www.quantamagazine.org/inside-the-proton-the-most-complicated-thing-imaginable-20221019/

1967年、スタンフォード線形加速器センターが「陽子に電子をぶつけると跳ね返り方が変わる」ことを観察し、陽子には多数の物質が含まれているという研究結果を発表しました。その後幾度となく同様の実験が行われ、跳ね返り方や散乱した粒子を回収することなどで、陽子の内部をさまざまな角度から推測できるようになったといいます。より高いエネルギーを持つ電子と高エネルギーの衝突型加速器を使うことで、前述のクォークの存在が示唆されてもいました。

陽子は1個の「アップクォーク」と、2個の「ダウンクォーク」でできていると考えられており、クォークのモデルを動かすことで陽子の形を推測する試みが行われています。陽子を構成するクォークをアニメーションで表したのが以下で、画像をクリックするとクォークがどのように動くのかを見ることができます。


ハドロン電子環加速器(HERA)を用いて行われた実験では、電子が運動量の小さいクォークと、その反物質である反クォークの渦から跳ね返ってきたことが確認されています。それをアニメーションで示したのが以下の画像。


このことから、クォークはグルーオンと呼ばれる「力を伝える粒子」によって束ねられていると説明され、それぞれのクォークとグルーオンには赤、緑、青の3種類の「色」の電荷があり、これらの色を帯びた粒子が自然に引っ張り合い、陽子などのグループを形成し、その色を足して中性の白になるという理論が形成され、「量子色力学」と呼ばれるようになったそうです。

しかしながら、検出が困難になることがあるクォークの存在や計算の複雑さから、陽子の実態は未解明のまま。次世代実験では、2030年代に電子・イオン衝突型加速器を起動し、HERAがやり残したことを引き継いで、陽子の最初の3D復元図を作成可能にするための高解像度スナップショットを撮ることを計画しているとのことです。

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2022年10月24日 07時00分00秒 in サイエンス, Posted by log1p_kr

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