新型コロナウイルスによる2020年のロックダウンで、ビューティブランドは店舗閉鎖に伴い、自社のウェブサイトにバーチャルコンサルテーションを一斉に追加した。それから2年が経ち、コロナ禍の状況が依然として不透明である現在も、こうしたサービスはオムニチャネル戦略の一環として使用されている。
「顧客はいま、チャネルを超えたシームレスな体験を期待している」とセールスフロア(Salesfloor)のCEOオスカー・サックス氏は話す。セールスフロアは小売企業向けテクノロジープロバイダーで、提携先は資生堂やエバNYC[Eva NYC]、タッチャ[Tatcha]、アミカ[Amika]などのビューティブランドや、コス・バー[Cos Bar]、ショッパーズ・ドラッグマート[Shoppers Drug Mart]、ブルーミングデールズ[Bloomingdale’s]をはじめとする小売店。新型コロナウイルスが数カ月ごとに感染拡大を見せたり、サル痘などの新たな脅威が現れたりするたびに、ブランド各社は顧客の購買行動が不確かなまま、オムニチャネルの道を模索している。
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パンデミックが始まってからというもの、バーチャルコンサルテーションの需要は急増しており、セールスフロアの場合、収益は倍増の勢いだ。バーチャルコンサルテーション向けプラットフォームのヒーロー(Hero)は、クレドビューティ(Credo Beauty)やデシエム(Deciem)などのビューティブランドと提携し、販売スタッフのオンラインによるオンラインコンサルテーションを可能にした。同社はBNPL新興企業のクラーナ(Klarna)の目に留まり、2021年には約1億6000万ドル(約208億円)で買収されている。その結果、クラーナはヒーローのテクノロジーを活用、顧客に対してバーチャルショッピングサービスの提供を開始し、買い物客と販売スタッフの対話を実現させた。
パンデミック前、ブランド各社はバーチャルコンサルテーションの導入を「視野に入れて、ゆっくり検討を始めており、この類のツールの下準備は整いつつあった」とセールスフロアCEOのサックス氏は話す。「コロナ禍で、もともと4年かけてきたものが1年で形になった」。
バーチャルコンサルテーション戦略を考えているブランドには、実際に店舗スタッフを使うのか、チャットボットを使うのか、2つの選択肢がある。店舗スタッフを用意できるブランドの場合、いくつか考慮すべき重要なポイントがある。なお、店舗スタッフのコンサルテーションを提供する企業には、コス・バーやショッパーズ・ドラッグマート、クレドビューティ、セフォラ(Sephora)などがある。
考慮すべきポイントは、ローカル化である。これはショッピング体験にとって「極めて重要」だとサックス氏は強調する。
「買い物客の近くにある実店舗を活用するのは、オンライン顧客の多くがそのあと店舗に足を運ぶことになるため、顧客をひきつける最高の手段だ」と同氏。「コールセンターに美容のプロを配置して、オンラインで対応させても、買い物客としっかりとした関係が構築できない。それでは、翌日店舗に寄って直接話を聞くことができないし、オンラインから始めて、そのあと店舗で商品を実際に触れて感じて購入するという展開も望めない」。
コス・バーの場合、サイトでは専門の店舗スタッフがバーチャルコンサルテーションを行い、買い物客はジオロケーション技術で推奨された近隣店舗を選ぶことができる。CEOオリバー・ガーフィールド氏はサービス導入時の2020年11月に、このサービスは「ビューティエキスパート独自の体験をデジタルチャネルに拡大し、各人がお客様との一対一の関係を構築、成長させることができるようになっている」と話している。
セフォラのeコマース担当シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのキャロリン・ボジャノウスキー氏がGLOSSYビューティポッドキャストで話した内容によると、同社はパンデミック開始時にバーチャルコンサルテーション形式を試みたという。その際、買い物客の需要を予測して対応したものの、買い物客が実際に何を欲しがっているのかが分かったあとに軌道修正した。「20分間のフルフェイスのコンサルテーションが必要で、動画でやりたいと思うアドバイザーもいるかもしれないと考えた」という。「でも、クイックヒットこそが顧客が欲していたことだった」とも述べ、ビューティアドバイザーとテキストで素早く交わすチャットのメリットについて指摘した。
実店舗を持たないブランドにとっては、AIチャットボットも選択肢のひとつだ。
「ラグジュアリーブランドの要は販売スタッフだ。商品の価格帯が低くなるほど、ウェブサイト経由の取引が多くなる。そのあと、販売スタッフが選択肢を自然に狭めながら、接客していく」とセールスフロアのサックス氏は話す。
チャットボットも確実に売上を促進する優れたツールだ。エバNYCも2021年にチャットボットを導入している。セールスフロアのテクノロジーを利用した「Viva(ビバ)」と呼ばれるチャットボットをエバNYCの顧客が使用した場合、使用しない顧客と比べると対話が倍増している。
エバNYCでブランド担当バイスプレジデントを務めるジェイン・モーラン氏は、次のように話す。「バーチャルコンサルタントのサポートがあると、ウェブサイトのユーザーは自分だけのサイト体験を味わえるようになる。その結果、新規ユーザーがリピーターに変わっていく。これからさらに市場が進化を続けていけば、ファーストパーティデータを活用したパーソナライズ化したサイト体験は、今後もeコマースの成功に欠かせないものになるだろう」。
チャットボットは現在、画像を載せたり、商品リストのサイトとリンクさせたりして、さまざまな使い方が可能になっている。「いまや単なる会話ができるチャットツールではない」と話すのはセールスフロアのサックス氏。「『お客様のお肌はオイリーですか、それともドライですか』と尋ねられたら、具体的に画像で例が示される。肌タイプの違いも視覚で確認できる」。
エバNYCでは、チャットで推奨された製品は製品リストの「for you」に分類されて、なぜその製品が最適なのかその理由にも触れている。
セールスフロアのデータによると、ブルーミングデールズでは、顧客がビューティアドバイザーとやりとりした場合、オンラインのコンバージョン率が10倍高くなる。一方、資生堂では、ビューティアドバイザーが商品を選別し、顧客の買い物をサポートする「Storefront(ストアフロント)」機能を利用すると、平均発注額が50%の増加を見せている。
バーチャルコンサルテーションへのシフトはこの先も長く続くとサック氏は予測する。
「オンライン診療がそうであるように、店舗もこれからバーチャルサービスを増やしていくだろう」と同氏。「つまり、実店舗が、オンラインショッピングのコンバージョン率を上げるための重要な戦略拠点に早変わりするということだ。もはや、実店舗vsオンラインという構造は成り立たない」。
[原文:The state of virtual beauty consultations]
(翻訳:SI Japan、編集: 山岸祐加子 )