メキシコの高級百貨店リバプール、ノードストロームの創業家に次ぐ株主に:「中南米以外」への市場拡大の足がかりか

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メキシコの高級百貨店であるリバプール(Liverpool)がノードストローム(Nordstrom)に狙いを定めていることは、同社が9月、ノードストロームファミリーに次いで2番目のノードストローム株主になったことで明らかとなった。

同社は約59億ペソ(2億9380万ドル(約435億円))でノードストロームのパッシブ株の9.9%を獲得した。リフティブ(Refitiv)のデータによれば、リバプールは、ノードストロームの相続人であり9.7%の株式を保有しているアン・ギッティンガー氏の株式保有量を超え、同社の出資金の15.9%を保有している元会長のブルース・ノードストローム氏に次ぐ地位を占めた。ノードストロームはすでに、リバプールによる会社の占有を困難にする株主ライツプランであるポイズンピルを発動している。

リバプール(本国での正式名称はエル・プエルト・デ・リベルプール(El Puerto de Liverpool))は大規模百貨店チェーンで、アパレル、化粧品、テクノロジーなどの商品を販売している。同社の年間収益は2021年に30.8%増加し、1510億メキシコペソ(約75億ドル(約1兆1100億円))に達したが、1月29日までの同じ12カ月の合計収益が148億ドル(約2兆1900億円)だったノードストロームには届いていない。米モダンリテールと対談した専門家は、リバプールによるノードストロームの株式獲得は、買収が目的というより、同社がノードストロームからの知識を獲得してビジネスを多様化する試みる可能性があると回答している。

「メキシコのなかでは、同社は間違いなく主要企業のひとつだ」と、インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)でラテンアメリカとスペインのシニアアナリストを務めるマッテオ・カーベルス氏は述べている。同氏は、同社がこれまでの数四半期に極めて良好な業績を挙げたとしている。「同社は長いあいだ、メキシコの小売エコシステムの中心だった」と同氏は付け加えている。

リバプールとは

エル・プエルト・デ・リベルプールは1840年代に設立され、メキシコ全体に販売を拡大してきた。同社は現在、リバプール百貨店122店舗、サバービア(Suburbia)169店舗、ショッピングモール28施設とブティック60店舗を運用し、ギャップ(Gap)、ポッテリーバーン(Pottery Barn)、ウエストエルム(West Elm)などのブランドを取り扱っている。サバービアのビジネスユニットは、より安価な商品を扱っている。

ガートナー(Gartner)でディレクターアナリストを務めるブラッド・ジャシンスキー氏は次のように述べている。「ほかのデパートや小売業者が直面したパンデミックや、ほかのいくつかの問題にもかかわらず、リバプールは非常に堅実な操業を続けてきた。これは同社が自社の在庫を管理している証だと思う」。

ジャシンスキー氏は、リバプールはその歴史のほとんどにおいてメキシコに特化してきたが、ほかの市場にも多少の関心を示してきたと語る。大手デパートである同社は2006年、故国の家族のためウェブサイトや電話で商品を購入したいと考える米国内のメキシコ人消費者に特化した取り組みを開始した。これは、米国内に居住しているメキシコ人は多くの場合、メキシコに居住している家族に仕送りをするという考えを基にしたものだ。

中南米での事業拡大

また同社は、中南米全域をカバーする小売業へと成長するための活動も行ってきた。リバプールの子会社は2010年、中央アメリカの耐久消費財小売業者であるリーガルフォレスト・ホールディング・カンパニー(Regal Forest Holding Co)の株式30%を獲得した

リバプールが米国の小売業者に関与した例は、ノードストローム乗っ取りの可能性の件だけではない。同社は2016年に、ウォルマート(Walmart)のメキシコでのアパレル部門であるサバービアを157億ペソ(当時の金額で8億5300万ドル(約1260億円))で買収した。当時サバービアは117店舗を運営していた。

ジャシンスキー氏は次のように述べている。「同社はいくつかの実験を行ってきた。しかし、同社はメキシコ全体に多様化しても、市場の多様化は行わなかった」。

リバプールはノードストロームに何を望んでいるのか?

リバプールは最近、同社がノードストロームを買収するという噂を否定した。同社は9月の規制当局への提出書類で、自社の資産の多様化を試みているのであって、ノードストロームを買収するため動いているのではないと述べた。

カンター(Kantar)のグローバル小売担当シニアバイスプレジデントを務めるデビッド・マルコッテ氏は、メキシコの小売業者のあいだでは国内にとどまらずビジネスを多様化するトレンドがあったと語っている。メキシコの食料品店で、百貨店チェーンでもあるシェドライ(Chedraui)の米国子会社であるボデガ・ラティナ・コーポレーション(Bodega Latina Corp.)は昨年、倉庫形式の食品および消耗品ストアのスマート・アンド・ファイナル(Smart & Final)を約6億2000万ドル(約918億円)で買収した

「メキシコの現在の政府はそれほどビジネスに好意的ではないため、多少の緊張があった」とマルコッテ氏は述べている。

ノードストロームは、ポイズンピルとも呼ばれる株主ライツプランを発表したとき、「特定の買収提案や会社の支配権を獲得するための提案に対抗して採用したわけではない」と主張していた。マルコッテ氏はこの処置が、アクティビスト投資家やほかの企業が買収に関心を示したコールズ(Kohl’s)における状況と同じような事態になることを避けるために、このような措置を取ったと語る。

両社の相性

ポイズンピルによってノードストロームの買収は非常に複雑で高価なものになるだろうと、専門家は指摘する。しかし、これらの専門家は、同業他社から多数の株式を獲得するのは異例だという意見もあった。リバプールが役員会の席を得ることができれば、同社はノードストロームが米国市場にどのように取り組んでいるかを詳しく学び、その知識を自社ビジネスに還元できるだろう。マルコッテ氏は、多数のノードストローム株を保有することはリバプール自身のネームバリューを高めるためにも役立つと語る。

リバプール百貨店が対象としている消費者層は、ノードストロームと類似しており、店舗の外観も似ていると、専門家は語る。

マルコッテ氏は次のように述べている。「両社を知る限り、非常によく似ていると分かるだろう。問題は、両社がここからパートナーシップをどのように進めていくのかということだ。両社の今後の関係について言及するにはまだ早いだろう」。

[原文: Why Mexican department store Liverpool is eyeing Nordstrom]

MARIA MONTEROS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

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