アドテク 業界でもサステナビリティが急務に。マーケターは脱炭素化を要求

DIGIDAY

多くのマーケターたちが「パーパス(目的)」をマーケティングの中心に据えようとするなか、アドテク業界で最新の話題のひとつが「サステナビリティ」だ。現在、多くのカンファレンスにおいて、サステナビリティについての議論が行われている。

「サステナビリティ」に注目が集まるようになった要因のひとつに、アドテクのベテランであるブライアン・オケリー氏がCEOを務めるカーボン排出測定会社スコープ3(Scope3)の取り組みがある。彼は最近、グリーンメディアサミット(Green Media Summit)で、プログラマティック広告が「環境に大きな影響を与えている」と参加者に語った。

同氏は、「サプライパスの最適化」という言葉を生み出した功労者だ。高炭素排出のサプライパスから、炭素排出量の少ないパスへの広告支出をシフトさせるという考え方は、すでに多くの人の賛同を得て前進しつつある。

「ここ数年のあいだ、私たちは皆、サプライパスの問題を知っている」と彼はカンファレンス参加者に語り、「お金や透明性、プライバシー目的ではできなかったことも、地球を救うためであればできるかもしれない」と話した。

業界に変化を起こすためには大きな文化的シフトが必須

DIGIDAYの取材に対し、コンサルティングサービスのアドプロフス(AdProfs)の創設者であるラトコ・ヴィダコビッチ氏も同様の意見を述べている。企業が公的にCSR(企業の社会的責任)コミットメントを掲げることで、バイヤー側もサプライ側に対してプレッシャーをかける理由を得ることになり、「レバレッジを持つSPO(サステナブル株式公開)として機能する」と述べた。

消費者パネルデータを使用してCSR目標の達成度合を測定するブランドを支援するスタートアップ、ベラ(BERA)の創設者兼CEOであるライアン・バーカー氏はDIGIDAYに対して、「マーケターが広告キャンペーンで炭素排出量の少ないサプライパスを求める傾向が高まっている」と話した。これは、「ブランドへの愛着」のような消費者の感情と売上との相関関係がより明確になりつつあるなか、とくに顕著な傾向だ。

しかし、アドフォーム(Adform)のジョセフ・ドレスラー氏によれば、たとえ(環境問題を改善するために貢献したい、という)人々の善意があったとしても、業界に実際の変化が起こるためには、大きな文化的シフトが必要だという。そして、売り手側の業界で収益に責任を持つ人々の精神を試すことになるだろう。

同氏はグリーンメディアサミットの出席者に、「最後に受け取った100件のRFP(提案依頼書)を調べたところ、サステナビリティやグリーン目標について言及しているのは5件未満だった」と伝え、「だからブランドがサステナブルであると言いたいのであれば、メディアプランニングやプログラマティックのレベルまで浸透させなければ、何の影響もない」と諭した。

アドテクパートナーを減らすという選択

ジャウンス・メディア(Jounce Media)の調査によれば、広告インプレッションの少なくとも20%がアドテクサプライチェーン全体を通して、仲介業者が当初の取引手数料の一部を受け取るかたちで複数回の取引を通過しており、業界の炭素排出量もそれに応じて増えている。ただし、だからと言ってアドテクパートナーの数を減らした場合、パブリッシャーの収益が減少するのか、という疑問は生じる。

サミットの講演者であるマギー・マッティングリー氏は、SPOの取り組みで業界の先頭(異論はあるかもしれないが)を走るザ・トレード・デスク(The Trade Desk)の広告在庫管理責任者だ。同氏は、「パートナー数を減らすことによる短期的な収益の犠牲を受け入れる意志が、パブリッシャー側にあるかどうかを自問自答しなければならない」と述べた。

メディアオーナー向けの技術基準を実装するための業界団体であるプレビッド(PreBid)は、団体会員が収益を維持しながら炭素排出量を削減する方法をよりよく理解するためのガイドラインを現在準備している。

「ページ上で100個のピクセルを繰り出していても、実際に収益を生み出しているのはどれくらいか?」と同団体の会長であるマイク・ラシック氏は、グリーンメディアサミットで投げかけている。「(ガイドラインは)これらの異なるパートナー間の収益や価値に対する貢献度合いをテストするようなことで、誰が本当に収益を上げているかを理解できる」。

問題はサステナビリティを企業の競争要素として利用する”だけ”なこと

DIGIDAYと別の場で取材に応じたオープンX(OpenX)のCEOであるジョン・ジェントリー氏は、「業界の最新のサステナビリティに関する宣言と、グリーンウォッシングの境界線は非常に薄いものだが、一般的にはポジティブな傾向である」と述べた。

また、「誰かが(環境問題としてのサステナビリティに対する)解決策を見つけようとしているなら、それを支持するが、サステナビリティを企業の競争要素として利用するだけで、グローバル基準に沿った実際の解決策を見つけようとしない人々には問題がある」と同氏は付け加えた。

炭素排出量オフセットの専門家であり、アドテク分野の経歴も持つベン・フェルドマン氏は、「グリーンウォッシングのレッテルを避けたい業界の企業は、炭素オフセットクレジットを購入するだけではなく、もっと積極的な取り組みが必要だ」と話す。また、「炭素オフセット制度には問題がある。『炭素を排出する許可がある』と言えてしまうからだ」と言い、「企業は大気中から炭素を除去する方法などに取り組むべきだ」と言い添えた。

[原文:How SPO is driving ad tech’s decarbonization push

Ronan Shields(翻訳:塚本 紺、編集:島田涼平)

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