「我々が コマース でフォーカスするのは、家計のやりくりだ」:ウォール・ストリート・ジャーナル ジョシュ・スティンチコム氏、レスリー・ヤゼル氏

DIGIDAY

ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal、以下WSJ)は、同メディアを有するダウ・ジョーンズ(Dow Jones)にとってコマース事業がどのような事業になるのかを1年がかりで検討した後、ようやくコマースに参入する。

先月ローンチされたWSJのバイサイド(Buy Side from WSJ)は、WSJとは別にニュースルームを運営する独立したサイトだが、これはマーケットウォッチ(MarketWatch)やバロンズ(Barron’s)を含むダウ・ジョーンズのほかのメディアとの共通のミッションである「人々の経済的意思決定を支援する」ことを重視していると、同社の最高収益責任者ジョシュ・スティンチコム氏は述べている。

バイサイドのローンチ(おそらく不況の直前ということになるだろう)のタイミングは、ほかのパブリッシャーであればユニークかつ困難な挑戦になっていたかもしれない。オーディエンスが財布の紐を締め始め、ブランドもアフィリエイトマーケティング予算を見直し始めているからだ。しかし、バイサイドのコンテンツ責任者であるレスリー・ヤゼル氏は、各記事で個人的な経済のやりくりに焦点が置かれているおかげで、現在の景気後退がチームの編集戦略にむしろ役立つと考えている。

スティンチコム氏とヤゼル氏は、DIGIDAYポッドキャストの最新エピソードに出演。バイサイドがどのように消費者への商品紹介と彼らの財布の内訳とのバランスをとりつつ、「価値」というレンズを通して購入を決定できるようにしているか、また、いかに金融機関とのアフィリエイトパートナーシップに照準を合わせているか、語ってもらった。

以下は会話のハイライトで、わかりやすくするために少し編集して要約してある。

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コマースコンテンツに対するWSJのアプローチ

ヤゼル氏:私たちは消費者向けの商品を販売しているし、収益化することもできる個人向けの金融アドバイスもある。この中心にあるのは、コーヒーメーカーを買うかどうか、どのクレジットカードを選ぶかどうか、高利回りの預金口座に切り替えるかどうかなど、お金に関する「選択」だ。WSJはこうした金融系コンテンツにおいて大きな権威を持っていると感じており、人々の役に立つコンテンツとして提供したいとも思っている。

なおかつ、私たちのコンテンツは今の経済状況にうまく適応しているとも思う。なぜなら、私たちが提供する主要な価値のひとつは、人々のために非常に厳密にキュレーションと計算を行うことだからだ。「厳密にキュレーションしている」がどういうことかと言うと、たとえば、インターネットにあるさまざまな「ベストな◯◯リスト」を見ていると、「クレジットカード・ベスト19枚」や「(何の商品であれ)ベスト12!」といったコンテンツを見ることがある。私たちはそれをにさらに厳選しているのだ。キャッシュバックのポイントカードであれば、人々が本当に簡単に判断できるように、候補を4つに絞ったりしている。

絞り込みのためには、基準を作成する。私たちは金融サービス業界の専門家パネルと協力して、絞り込むために容赦なくスプレッドシートで比較分析をする。さらに、読者のための計算もしている。どう言うことかというと、今人気のサブスクリプション式のコーヒーサービスの加入を検討している人がいたとして、味やサービス内容だけをどれだけ厳密に比較しても価値はない。例えば、重さあたりの実際のコストも調べる。これによって、お気に入りのマーケットや食料品店で購入するものと比較できるからだ。

金融機関との提携による財務面のメリット

スティンチコム氏:金融サービスとの提携は価格設定モデルの点で多様性がある傾向がある。また、CPC(クリック単価)とCPA(顧客獲得単価)という、メディアコマース領域における価格設定に関するDIGIDAYの記事を読んだが、金融サービスの領域ではCPAとCPL(リード獲得単価)の組み合わせとなっている。ある種のプロダクトでは、ローン額に基づく一定のパーセンテージであることもあれば、ほかのモデルでは、たとえば確証された、新規のクレジットカードリードごとに50ドル(約6830円)、といった一律定額モデルだったりする。

平均的に言えば、こうした種類のアフィエリエイト報酬は、たとえば、クレジットカード発行者にとっての顧客の生涯価値が大きいという点で、多くの消費者向け製品よりも1人当たりの金額が大きい。そのため、CPLやCPAに幅を持たせたり、固定料金を設定したりすることが多い。そして、これらは時間の経過とともに変化する可能性がある。なぜなら、成長し、より多くの量を提供し、特定の発行者により多くの利益をもたらすことができた場合、1人当たりのレートをより良く交渉することができるからだ。

金額は高いが参入障壁も高い

スティンチコム氏:金融サービス業界はもっと複雑だ。ほかのカテゴリーにはないコンプライアンスの問題がある。たとえば、クレジットカード発行会社の認定アフィリエイトパートナーになる前に、自分たちを証明する必要がある。このプロセスでは、適切なコンプライアンスを達成していることを証明し、そのために適切なリソースをできることを証明する必要がある。それが参入障壁となっている。

競争相手もいるが、パートナーである競争相手もいる。レッド・ベンチャーズ(Red Ventures)はバンクレート(Bankrate)のようなこの分野のかなり大きなサイトを運営しているが、非常に洗練されたパブリッシャーフレンドリーなアフィリエイトサービスも提供している。私たちは彼らと緊密に協力しており、彼らと協力して多くの金融機関を仲介することができている。なぜなら、彼らは業界のコンプライアンスと複雑さについて完全に理解しており、その市場への私たちの参入を促進することができるからだ。これは消費者向けサービスのスキムリンクス(SkimLinks)に似ている。

[原文:Why The Wall Street Journal is centering personal finance on its new commerce site Buy Side

Kayleigh Barber(翻訳:塚本 紺、編集:黒田千聖)

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