「賞味期限」はフードロス増加の引き金に:表記しない食料品店が増えつつある背景

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英国を拠点とする食料品店のウェイトローズ(Waitrose)はこの9月から、食品廃棄の削減を目的として、果物や野菜を中心とする500以上の商品の賞味期限の表記を撤廃するという新しい方針を打ち出した。

その目的は、買い物客に、恣意的な日付で商品を廃棄する代わりに、その商品がまだ新鮮かどうかを判断してもらうことだ。食料廃棄削減の推進派は、表示に関する国家標準がまだ存在しない米国でも、この方法が一般的になることを期待している。

毎年900億食分の食品が廃棄されている

その一方で、食料品店と小売業者は食品の有効期限について業界で定められた標準を守っている。新興企業や推進組織のなかには、食料品店が販売できなくなった食品を、たとえば寄付やディスカウントストアとの提携など、別の方法で対応することを推奨している。

食品廃棄をなくすために活動している非営利団体のリフェド(ReFED)は、毎年900億食分の食品が廃棄されていると推測している。そして、住宅での食品廃棄のうち、約7.6%はラベルに記載された日付への懸念から起きているものだ。

リフェドのCEOを務めるダナ・ガンダーズ氏は次のように述べている。「人々は食品に記された日付を誤解している。その結果、まだ食べられるにもかかわらず廃棄してしまうことになる。食品に記された日付は新鮮さ、その食品が最良の品質である期間を示すものだ」。

ウェイトローズの活動に先立ち、英国では、テスコ(Tesco)と、マークス・アンド・スペンサー(Marks and Spencer)という2つの食料品店チェーンが、過去数年にわたって同様の動きを見せている。一方、米国では、食料品店チェーンのクローガー(Kroger)が2019年にラベル付けの方法を変更し、「賞味期限(Best if Used By)」を記載することで、消費者が食品を捨てる前に自分で調べるようになることを期待した。

全体として、米国は食料廃棄の運動において多少遅れているのは、国家標準が存在しないためだとガンダーズ氏は語る。過去の合衆国議会でこのような法案が提出されてきたことはあるが、採決には至っていない。小売業者にとっては、有効期限のラベルをなくすことで、廃棄するしかない食品の売上を増やせる可能性があると、ガンダーズ氏は述べている。

同氏は次のように述べている。「これは消費者だけが損をするという話ではない。サプライチェーンのなかでは、食料品店や配送センターのなかでも、有効期限によって多くの食品が廃棄されている。この新しい方法によって、すべての関係者が恩恵を得られるようになる」。

業界での実践

消費者ブランド協会(Consumer Brands Association)と食品マーケティング協会(Food Marketing Institute)は2017年に導入した2つのベストプラクティスが、業界標準になったとガンダーズ氏は語る。「賞味期限」と「消費期限(Use By)」だ。「賞味期限」は、その食品はその日までに食べるのが最良だが、その日以後も食べられることを、そして、「消費期限」は、その日に食品を破棄すべきことを示している。

古い食品は病気の元になるという誤解が広まっているため、ここで消費者への教育が重要になると、ガンダーズ氏は語っている。

「よく耳にする食中毒や食品由来の病気は、一般的にサルモネラ菌やリステリア菌など食品に含まれる病原体によって起きるもので、食品が古くなっているかどうかにかかわらず発生する」とガンダーズ氏は述べる。

グリーンブルー(GreenBlue)でバイオエコノミーおよびリユース・イニシアチブのディレクターを務めるオルガ・カチョーク氏は、国家標準が存在しないため、商品の表示方法については、多くの場合、民間部門に委ねられることが多いという。商品には多くの日付が記載されており、「消費期限」以外は単なる勧告にすぎず、食品が食べられるかどうかを正確に監視しているわけでも、伝えているわけでもないと、同氏は語っている。

「小売業者は、紛らわしい表示に関係する食品廃棄への対処について、多くの影響力を保有している。自社のプライベートブランドの商品という点でも、多くの製造業者やブランドに波及するような食品廃棄削減の目標を設定するという点でもだ」と、同氏は述べている。

この分野で行動の余地を広げるよう働きかけている企業のひとつが、トゥー・グッド・トゥー・ゴー(Too Good To Go)だ。同社はアプリベースのマーケットプレイスで、ユーザーを、参加しているレストランや食料品店につなぎ、販売できなくなった食品を転送するサービスだ。同社の本拠地である欧州では、小売業者と提携し、商品に貼付するための新しいラベルを作り上げた。このラベルは「見て、嗅いで、味わって(Look, Smell, Taste)」と記載されており、消費者が自分自身で判断を行うよう勧告する。同社は現在、米国を含む17カ国でサービスを提供している。

同ブランドで米国の主要アカウントを統括しているタイラー・シモンズ氏は次のように述べている。「米が腐ってしまったか、シリアルが悪くなってしまったかどうかは見わけることができる。日付は製造業者による最良の推定値だが、保守的な推測だ」。

商品寿命の延長

シモンズ氏は、同社には米国内で商品を販売している1万以上のパートナーが存在し、アプリに270万人の登録ユーザーが存在すると、米モダンリテールに語った。このアプリでは、まだ新鮮で食べられるが、日付に従えば破棄されるような食品を入れた「サプライズバッグ」をユーザーが注文する。顧客はこのバッグを平均的な小売価格の数分の一、たとえばニューヨーク市のグルメガレージ(Gourmet Garage)から、26ドル(約3610円)相当の食品のバッグを8ドル(約1110円)で購入できる。

シモンズ氏は、欧州諸国では、各国がより集中的な政策をとっているため、小売業者も消費者は、食品廃棄物への取り組みを受け入れやすいと語る。たとえば、フランスでは2016年、食料品店が食品を廃棄することを禁止する新しい法を制定した。トゥー・グッド・トゥー・ゴーは同年に同国で設立された。

米国には全国で一貫した食品廃棄ポリシーが存在しないため、食品をどのように消費者と共有するか、どのようにラベル付けするかは、小売業者や製造業者に大きく委ねられていると、シモンズ氏は語る。しかし多くの業者にとって、そうすることが良いビジネスになりうるという。

同氏は次のように述べている。「企業が消費者にとってより魅力的になるには、行動を起こす必要があり、それを公共的な方法で行うべきだ。大多数の人は、何らかの形で食品廃棄があることを理解していると、私は考えている。企業が消費者と交流することで、より積極的な集団行動を可能にする」。

[原文:What’s behind the growing grocery movement to eliminate expiration dates]

著者:MELISSA DANIELS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Too Good to Go

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