ビューティルーティンに入り込む 機能性美容飲料 の台頭【ビューティ&ウェルネスブリーフィング】

DIGIDAY

スーパーの冷蔵ドリンクセクションをみると、アーユルヴェーダの強壮剤、ウェルネスショット、アダプトゲンコーヒー、プロバイオティックソーダなど機能を謳う飲料が数多く並んでいる。最近、ボナペティ(Bon Appétit)誌に「飲料のピークがやってきた」と宣言した見出しもあったほどである。しかし美容業界にとっては、すぐに摂取できる機能性美容飲料の台頭に注目する価値があるのだ。

美容飲料サプリメントは決して新しいものではない。この10年間でバイタルプロテインズ(Vital Proteins)、ムーンジュース(Moon Juice)、ビューティシェフ(The Beauty Chef)といったブランドが、美容に特化したパウダーを水やスムージー、ヨーグルトをはじめ食品に混ぜるという考えを広める役目を果たしている。しかし、次のイテレーションでは顧客が自分で混ぜるステップを省略し、ビオチン、ヒアルロン酸、ビタミンEなどの必要な美容成分を含むパッケージ済みの飲料を提供している。バイタルプロテインズは、2019年にすぐに飲めるコラーゲン入りウォーターを発売。同時期にスパークリングコラーゲンティーのブランド、スキンティー(SkinTé)がデビューしている。直近には、美容エナジードリンクブランドのゴージィ(Gorgie)の1月のローンチがある。また、2月には、ロサンゼルス拠点でセレブに人気のラ・ジョリー・メドスパ(La Jolie Medspa)がピックミーアップ(Pick Me Up)ビューティウォーターを、ジュースブランドのプレスト(Pressed)が美容にフォーカスした濃縮ショットを発売している。

美容ショットのプレスト

「美の定義は心と体と魂のウェルネスの組み合わせとして再定義されており、すべてが一緒に機能する。内側からのホリスティックな美容だ」と述べているのは、プレストのグローバルブランド戦略責任者、アンドレイ・ナジャール氏だ。「美容とウェルネスのニーズをサポートするために消費者や小売業者から寄せられた質問や要望に対応して、よりフォーマルな方法で(美容への取り組みを)始めている」。

ナジャール氏は、プレストはフルーツや野菜中心のシンプルな飲料処方とウェルネスにフォーカスした飲料ショットの提供により美容に隣接する企業として位置付けられていると述べている。同氏によると、プレストの濃縮ショットは総じて「驚異的な成長」を遂げているという。だが、具体的な数字は共有されなかった。プレストの美容ショットには、ザクロ、アロエベラ、ビオチンなどの成分が含まれている。顧客は53%が男性で47%が女性だ。D2C eコマースで6万人以上のロイヤルティメンバーを抱えるほかに、ターゲット(Target)とホールフーズ(Whole Foods)への卸売と、自社の店舗を100店舗以上持っている。

プレストはウェルネスへの注力を続けている。インスタグラムやほかのソーシャルのプロフィールを約2カ月以内にリローンチし、それらを内面と外面の美容にフォーカスしたライフスタイルマガジンのようにする計画がある。これまでの同社のソーシャルチャネルは製品中心だった。エンゲージメントがもっとも高い投稿は健康的な生活を送るためのヒントやツールを提供するものである。

「テクノロジー業界から、自分が所有するすべての製品に機能が必要であることを教わった。アパレルではアスレジャーのような機能的なアパレルが登場している」とナジャール氏。「(機能性食品を)求める方向にいっそう進んでおり、追加のメリットは何か、消費者にとって製品をよりシンプルにするにはどうすれば良いかなどを自問した。当社のこれまでの運営方法を考えれば美容への進出は当然に思えた」。

ユーロモニター(Euromonitor)によると、米国だけでも484億ドル(約6.5兆円)規模の機能性飲料市場は2025年まで毎年6.6%成長すると予測されている。エナジードリンクは推定186億ドル(約2.3兆円)で市場の最大シェアを占めており、104億ドル(約1.4兆円)のスポーツドリンクがそれに続く。健康上のメリットがあると謳われている機能性飲料も注目を集めている。データ企業のスピンズ(Spins)によると、2020年11月から2021年11月にかけてカテゴリーの売上は16%近く増加しているという。

トレンドが繰り返される機能性飲料分野

すぐに飲める機能性美容飲料の台頭は、美容、ウェルネス、食品にわたる複数のトレンドの融合である。 LEKコンサルティング(LEK Consulting)のマネージングディレクター、マリア・スタインゴルツ氏(Maria Steingoltz 氏によると、機能性飲料は過去20年間に生まれた健康に良いという幅広いトレンドが現在繰り返されているものだという。健康に良い飲料や食品というものの意味は進化している。当初は健康に良い製品にするには、製品から特定の成分、たとえば塩分や脂肪分などを排除する必要があった。その次には、健康に良いというのはもっと具体的なニッチがあり、グルテンフリーや植物ベースなど消費者のライフスタイルや食事のタイプに対応していた。しかし、現在では食品に成分を追加して、メリットを強化したり追加することにフォーカスされている。

また、LEKコンサルティングのマネージングディレクター、アリソン・シリング氏は、研究開発の向上によりさらに健康的で高性能な飲料と水溶性の新成分が出回っていると指摘する。

ナジャール氏は、世界が加速し、消費者がより多くの情報を入手するにつれて製品にはもっと多くの効能が求められるようになると付け加える。つまり、その日のエネルギーにはならない糖分の多い炭酸飲料や、重要なポイントに触れるまでに冗長な製品レビューやチュートリアルビデオに費やす時間は誰にもないのだ。

「感情的な(つながりだけでは)もはや十分ではない」とナジャール氏は語っている。

下着ブランド、ライブリーの起業家が立ち上げたゴージィ

起業家のミシェル・コルデイロ・グラント氏は、2022年8月に南フロリダに引っ越した後ゴージィにつながるひらめきを感じた。彼女は地元の人たちが長時間かけて(外出や食事などの)夕方の準備をすることに誇りを持っているのに気づいた。そしてその準備中にエナジードリンクを飲む傾向があった。だが、ドリンクのブランドは、コルデイロ・グラント氏が自分のファッション感性や健康重視のライフスタイルに合うと感じられるものではなかったという。2016年に下着ブランド、ライブリー(Lively)を立ち上げた経験を持つ同氏はブランド構築に精通している。

コルデイロ・グラント氏は、美容ドリンクブームはソーシャルメディアにより内面からの美容を含めて人々が気にするものが変わったことに起因すると考えている。

ゴージィは、D2C eコマース、ホールフーズ、フェアウェイマーケット(Fairway Market)で販売されている。ドリンクは3ブレーバーあり、それぞれに美容成分のビオチン、緑茶カフェイン、L-テアニン、ビタミンB6とB12が配合されている。

コルデイロ・グラント氏は次のように述べている。「自分の人生のあらゆることが自分のソーシャルプロフィールの一部になる。ゴージィは2022年8月にTikTokで始まった。自分のゴージィのアイデア(が実行可能かどうか)を確認するためにTikTokに投稿してみたら、(クラウドソーシングのアイデアは)2週間で10万のいいねを獲得した」。

1月のゴージィの正式なローンチの一環には、同社のエナジードリンクが楽しくセクシーであることを示すためにエディトリアルマガジンと小さなディスコボールを中心にしたプレスとPRメーラーがあった。さらに、NYFW、テニスのウィンブルドン選手権、40校以上の大学キャンパス、30カ所以上のフィットネススタジオでアクティベーションを主催した。多くの点でゴージィはタブエナジー(Tab Energy)の後継ぎのようなものかもしれない。タブエナジーは、コカコーラ(Coco-Cola)のタブ(Tab)の低カロリー飲料バージョンで現在はもう存在していない(ところで、あの楽しいコマーシャルを覚えている?)だが、コルデイロ・グラント氏はゴージィは女性ファーストの視点があるものの対象は男女両方だと明言する。

「女性創業者の第1章は、女性による女性のためのものだった。第2章は女性によるあらゆる人のためのもの。女性が主導する女性視点の会社(の製品)は万人向けではないという固定観念を打ち破りたい」とコルデイロ・グラント氏。

機能性飲料のトレンドと変遷

タブエナジーと同じように現れては消えてゆくドリンクのトレンドに終わりはない。米国人の炭酸飲料の消費量が減り始めたため、企業は炭酸水に注力するようになった。ル・クロワ(Le Croix)のようなブランドはフレーバー付きのセルツァー水を普及させたが、2019年頃には確実に落ち込んだ。その後、アルコール入りのセルツァーや、2022年までに横ばいになったホワイトクロー(White Claw)のような低アルコールブランドの出現があった。かつてバズったウェルネス・美容飲料ブランドのダーティレモン(Dirty Lemon)でさえもコカコーラとのパートナーシップにより2018年にアイリスノヴァ(Iris Nova)となったが、2020年にスタッフの半分を解雇し、2022年11月に終了している。アイリスノヴァの創業者のザック・ノーマンディン氏にコメントを求めたが返事はなかった。

「機能性飲料のカテゴリーは今後も伸びていくと思う。次のイテレーションがどうなるかはわからないが、マクロカテゴリーはなくならないだろう」とスタインゴルツ氏は述べている。

すぐに飲める機能性美容飲料の売上が伸びるにつれて、従来の美容小売業者のセフォラ(Sephora)とアルタビューティ(Ulta Beauty)での卸売の機会が増えると思われる。セフォラはすでにムーンジュースやハム(Hum)といったブランドの摂取可能なサプリメントを販売しており、アルタビューティはラブ・ウェルネス(Love Wellness)、オリー(Olly)、オラ(Ora)を販売している。ナジャール氏によるとプレストは美容小売業者への販売拡大を目指しているという。

「製品が美容の価値提案と一致している限り、飲料が美容小売店で販売される可能性はある。さまざまな切り口があるので(すぐ飲める機能性美容ドリンクは)出現し続けるだろう」と スタインゴルツ氏は述べている。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: The beverages coming for your beauty routine

EMMA SANDLER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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