「ゲーム内広告」向け新測定基準、 IAB が構築に取り組む

DIGIDAY

インタラクティブ広告協議会(IAB)は、最近急成長を見せるゲーム内広告に対応するため、現在のガイドラインに代わるゲーム内広告向け測定基準を構築している。このプロジェクトは、IAB、IABテックラボ(IAB Tech Lab)、メディア・レーティング・カウンシル(MRC)の3組織協働の取り組みだ。

インタラクティブ広告協議会(IAB)は、最近急成長を見せるゲーム内広告に対応するため、現在のガイドラインに代わるゲーム内広告向け測定基準を構築している。このプロジェクトは、IAB、IABテックラボ(IAB Tech Lab)、メディア・レーティング・カウンシル(Media Rating Council;以下、MRC)の3組織協働の取り組みで、英国IABの会員組織のみならず、大手のゲーム内広告会社やブランド、エージェンシーで構成されるタスクフォースからも膨大な情報が提供されている。

IABが現行のゲーム内広告測定基準を発表した2009年当時、ビデオゲームやアドテクの開発状況は現在とまったく違う段階だった。「2009年当時の基準は今やすっかり時代遅れだ」と話すのは、ゲーム内広告会社ビッドスタック(Bidstack)のシニアバイスプレジデントを務めるルイス・シャーロック氏だ。同社は、IABのゲーム内広告タスクフォースに参加している36社の1社である。「現行の基準は一般的な表示基準に追加したものとしては申し分ないが、広告が表示される3D環境が一切考慮されていない」。

「今の基準はあまりにも時代遅れだ」

コロナ禍におけるゲームミングの過熱ぶりは凄まじく、IABがその動きに注視し続けていたのは事実だ。しかし、このところのゲーム内広告のイニシアチブは、MRCの決断が発端である。MRCが、IABの2009年基準における欠点を検討した2021年9月の暫定ガイダンスメモを公表することを明らかにしたのだ。「このメモには、こうした特別な広告は、現在のビューアビリティ測定方法が利用できないと記されている」。そう話すのはキャリー・ティルズ氏だ。同氏は、IABのタスクフォースに参加するゲーム内広告企業フレームプレイ(Frameplay)で最高戦略執行責任者を務め、IABのゲーム・eスポーツ委員会の共同議長も担う。「なかには利用できるものもある――ゲームの周辺あるいはゲームに付随する広告で、既存のブラウザを利用した広告配信技術を利用したものであれば、確かに利用可能だ。しかし、ゲーム内に備わっている広告の場合、現在のビューアビリティの基準が適用できない」という。

「正直なところ、この動きは単に必要に駆られて生じたにすぎない――とにかく、今の基準はあまりにも時代遅れだ」とIABのエクスペリエンスセンターでバイスプレジデントを務めるゾーイ・スーン氏は指摘する。「2009年のビューアビリティの基準では、広告が配信されたと見なされるには広告を閲覧できる状態の累積時間が10秒必要だったが、ほかのメディアで使われている実際のビューアビリティ基準をチェックすれば、その数字がいかに必要以上であるのかがわかる」。

2009年の基準は3D環境におけるビューアビリティに問題があるだけではない。プログラマティック広告の黎明期に発表されたので、ゲーム内のプログラマティック広告の影響はほとんど考慮されていなかった。現在の広告は、プログラマティック広告の形で、ビデオゲームに配信される場合が多い。「テクノロジーの視点でみると、数多くのムーブメントが展開されている」とビッドスタックのシャーロック氏は話す。

改訂された基準は6月に仕上がる

2022年2月24日、IABがタスクフォースの第1回会合を開催し、プロジェクトは本格的に開始した。タスクフォースには前述のビッドスタックなどに加え、Googleや電通、マイクロソフトアドバタイジング(Microsoft Advertising)、ザクシス(Xaxis)、ABCネットワークス(ABC Networks)をはじめとする企業の代表が顔をそろえる。IABの計画では、まず2022年3月に基準改訂のたたき台となる原案を作り、4月にはその原案に手を入れたものを用意する。5月末に練り上げた原案を公開して、広く意見を求め、6月のいずれかの時点で最終版を発表したいと考えている。「通常の分科会は、IABの会員でなければ参加できない――しかし、今回はタスクフォースという形態をとることにした。というのも、業界全体の賛同を得たいからだ」とIABのスーン氏は語る。「我々は、業界のエコシステム全体から参加してもらいたいと考えた。ブランドやエージェンシーの売買サイド、それに、モート(Moat)のようなベリフィケーションパートナーもその対象だ」。

改訂された基準が6月に仕上がると、旧基準で認証された企業はすべて、新たなMRC認証プロセスを経なければならなくなる。「現在のビューアビリティパートナーのなかに、こうしたバーチャル環境下における広告のビューアビリティ計測で実際に認証されている企業はない――単に、まだ認証されていないということだが」とゲーム内広告企業フレームプレイのティルズ氏は話す。「『認証されていないから、即、悪者』とは限らないものの、こうした測定は必要とされており、導入すれば、業界全体の信用が高まることになるだろう」。

確かに、ゲーム内広告の関係各社にしてみれば、新たな基準の策定は単なる自己満足ではない。ゲーム内広告の測定の標準化は、広告主がこの比較的新しい分野で、安心して持続的なビジネスを展開するために不可欠である。企業のマーケティング戦略において、ゲーム内広告が新奇な手法から中核へと変化するにつれて、ブランド各社はゲーム内広告キャンペーンの結果を厳しく精査するようになった。特に、ブランドの認知に関するインパクトの計測は重要である。「イノベーションは、ペプシコ(PepsiCo)の企業文化でもっとも重要な位置にあり、計測は極めて重要な柱だ」と話すのはペプシコでグローバルなメディアイノベーションとパートナーシップを統括するケイト・ブレディ氏だ。「ゲーミングのような新しいチャネルを評価する場合、ビューアビリティや無効なトラフィック(IVT)、注目度などの正確な測定を活用しながら、イノベーションに対するリターンの最大化を支援してくれる最先端ビジネスのパートナーと提携している。フレームプレイもそのうちの1社だ」。

より魅力的でアクセスしやすい分野に

目下、IABのゲーム内広告タスクフォースの参加企業は、3月末の基準改定のたたき台作成を目指して、週1回の会合を重ねている。こうした取り組みの結果、ゲーム内広告業界はおそらく、成り行きを静観するブランドやマーケターにとって、より魅力的でアクセスしやすい分野になるだろう。

「これでようやく長年の懸案事項が解決する」とスーン氏は話す。

[原文:Why — and how — the IAB is developing new measurement standards for in-game ads

Alexander Lee(翻訳:SI Japan、編集:長田真)


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