次の10億ドル規模の「 イットブランド 」を作り上げるのは、ビューティーアクセラレーター

DIGIDAY

次の10億ドル(約1394億円)規模の美容ブランドは、おそらく業界のインサイダーではなく、アウトサイダーから誕生するだろう。

過去5年間で、生まれたばかりのブランドを支援するよう設計されたビューティアクセラレーターがいくつか誕生している。少し例を挙げれば、セフォラアクセラレート(Sephora Accelerate)、クレドフォーチェンジ(Credo for Change)、アルタビューティ(Ulta Beauty)のミューズアクセラレーター(MUSE Accelerator)、タワー28(Tower28)のクリーンビューティサマースクール(Clean Beauty Summer School)、トゥルービューティベンチャーズ x ブリッジメンターシップ(True Beauty Ventures x Bridge Mentorship)、グロウレシピメンターシップ(Glow Recipe Mentorship)などがそうである。こうしたアクセラレーターの台頭は、ビューティのあり方という意味で、明らかな変化を示している。つまり、イノベーションは企業内のトップからではなく、業界の外側にいる人々、特に有色人種の創業者たちから生まれているのだ。

サードパーティパートナーとつなぐメンターシップ

アクセラレーターは、情報のギャップを埋め、メンターシップを通じて創業者のビジョンの実現を支援するという重要な役割を担っている。2019年、サンドラ・ヴェラスケス氏は、自身のルーツであるメキシコへのオマージュを込めたバス&ボディ・ウェルネスブランド、ノパレラ(Nopalera)を創業した。ブランドを始めたばかりの頃を振り返ると、メーカーやサードパーティロジスティクス倉庫、共同梱包業者を見つけるのに苦労したと彼女は言う。

「業界の外から来たので、私を助けてくれる人を見つけるのに大変な努力を要した」とヴェラスケス氏。「コホートとアクセラレーターが紹介してくれた人々は、私が必要とするサードパーティパートナーを推薦することができた」。

フレグランスブランドのアワーサイド(Ourside)の創業者ケータ・バーク=ウィリアムズ氏も同じような話をしている。彼女が最初に参加したアクセラレーターは、タワー28のクリーンビューティサマースクールだった。彼女は、フレグランスメーカーを見つける手助けをしてくれるメンターとペアを組んだ。

「会社を作り、経営するということはどういうことなのか、自分なりの考えや視点があったが、明らかに美容とフレグランスの分野には多くのニュアンスがある」と彼女は述べた。

BIPOCの創業者を支援するプログラム

多くのビューティアクセラレーターは、2020年のブラック・ライブズ・マター運動が美容業界内の人種差別を浮き彫りにしたことを受けて登場し、オーロラ・ジェームズ氏の15パーセントプレッジ(15 Percent Pledge)に署名するブランドといった、アクティビズムなども推進した。15パーセントプレッジは小売業者に対し、BIPOCによるブランドの販売比率を高め、BIPOCの創業者たちを支援するよう呼びかけている。

2022年、クレドフォーチェンジは、BIPOCの美容ブランドであれば、成長段階に関係なく、誰でも応募できるようにしたが、これは美容業界におけるクレドの多様性へのコミットメントを示す動きである。セフォラは2021年、有色人種の創業者を支援するためにアクセラレータープログラムをリローンチし、その結果、セフォラ初の有色人種の創業者のみで構成されるコホートが誕生している。グロウレシピのメンターシッププログラムは、有色人種が所有し、創業した企業であることを条件としている。また、米国を拠点とし、フルタイムの従業員が4人以下でなくてはならない。

セフォラのマーチャンダイジング・ビジネス開発およびストラテジー・バイスプレジデントのラウバン・デュレイ氏は次のように語る。「このプログラムの刷新でもっともエキサイティングなことのひとつは、いまやすべての参加者にセフォラでブランドを発売する機会が与えられているということだ。この1年間で、アクセラレートプログラムを通じて6つの新しいBIPOC所有のブランドをセフォラに導入し、今後数カ月以内にはさらに多くのブランドがデビューする予定だ」。リローンチ以降、クルフィビューティ(Kulfi Beauty)、トピカルス(Topicals )、54スローンズ(54 Thrones)など、セフォラアクセラレートに参加しているすべてのブランドがセフォラの棚に並ぶようになった。

資金調達よりも教育やアクセスを重視

美容業界の複雑さを考えると、新しい美容創業者が足場を固めるまでに複数のアクセラレーターを経験することは珍しいことではない。ヴェラスケス氏の場合は、トゥルービューティベンチャーズ、タワー28、クリーンビューティサマースクールのピッチで優勝したクリーンビューティスクール、そしてファレル・ウィリアムズ氏のブラックアンビション(Black Ambition)など、6つのアクセラレーターを経験している。ブラックアンビションでは、現在彼女は100万ドル(約1.4億円)の賞金の資金調達の最終候補者になっている。ブラックアンビションは、テックスターズ(Techstars)などの従来のアクセラレーターとは異なり、参加ブランドから株式を受け取ることはない。

賞金を授与するにもかかわらず、ビューティアクセラレーターは資金調達よりも教育やアクセスにより重点を置く傾向がある。タワー28のピッチコンテストで2022年の優勝者となったヴェラスケス氏は、有色人種の女性起業家を支援するニューボイシズファウンデーション(New Voices Foundation)から1万ドル(約139万円)の助成金を受けたほか、フィールドチームエージェンシーのヘッドカウント(Headcount)の小売専門家やワインバーグゴンサー(Weinberg Gonser LLP)の法務チームとの貴重な時間を得ている。また、セフォラとアルタビューティのバイヤーとのミーティングも保証された。

創業者同士のネットワークを構築

ビューティアクセラレーターは、成長の後期にあるブランドにも大きな影響を与えることができる。アクセラレーターは一般的に新時代の美容の創業者を育成するために設計されているが、創業者のなかにはネットワーキングの機会を求めてアクセラレーターに参加し続ける人もいる。これには、そのプログラムに参加している仲間の創業者だけでなく、定評のある美容界のリーダーとのネットワークを構築する機会も含まれる。

「グループ内のほかの創業者たちとネットワークを作っている」と語ったのは、アフリカの伝統的な美のリチュアルを取り入れたスキンケアブランド、54スローンズの創業者クリスティーナ・テグベ氏だ。テグベ氏は、セフォラアクセラレート、クレドフォーチェンジ、グロウレシピのアクセラレーターに参加したことがある。「(ほかの創業者たちと話すことは)価値を高めることになる。これらの創業者たちも、選ばれてそのプログラムにいる。結局のところ、人間関係を築くことがすべてであり、人は好きな人たちと一緒に働きたいと思うものだ」。

消費者が本物のブランドを求めるようになるにつれ、アクセラレーターで育ったこれらの創業者たちは、美容の未来を定義する準備ができており、小売業者もそれをわかっている。

セフォラのラウバン・デュレイ氏は次のように述べる。「セフォラアクセラレートプログラムは、すばらしい可能性を秘めた新興ブランドを見つけ出し、そうしたブランドを発展するビジネスへと成長させる支援をしてきたという確かな実績がある。セフォラでは、製品の差別化が主なフォーカスエリアのひとつである。我々の仕事はトレンドを先取りし、つねに進化する品揃えと、顧客に真に共感されるブランドを届けることだ」。

レガシー企業も新興ブランドに注目

セフォラやアルタビューティなどの大手小売業者は、自社独自のプログラム以外でも、あらゆる場所で新興ブランドに正面から取り組む必要があることを知っている。

そして、レガシー企業もようやく外部の才能の可能性を理解しつつある。10月、エスティローダーカンパニーズ(The Estée Lauder Companies)のベンチャー部門であるニューインキュベーションベンチャーズ(New Incubation Ventures)は、アーリーステージの消費者ブランド向けのプラットフォームおよびイベントシリーズのファウンダーメイド(FounderMade)と提携し、ブランドイノベーションコンペティション(Brand Innovation Competition)をローンチした。10月のファウンダーメイド・ウェストショー(FounderMade West Show)では30の新興美容ブランドが選ばれ、ニューインキュベーションベンチャーズのチームと1対1で面談を行った。ノパレラもその30社のうちのひとつだった。

「レガシーブランドは、私のような人とのつながりを必要としている。なぜなら私たちが新鮮な人材だからだ。私たちこそ、何もないところから正真正銘のブランドを作り出している」とヴェラスケス氏は述べている。

[原文:Beauty accelerators are quietly building the next wave of ‘it’ brands]

EMMY OLEARY(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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