リーチとクオリティを両立する、これからの動画広告配信とは:発言内容まで解析できる「 GP 」のYouTubeコンテクスチュアルターゲティング

DIGIDAY

あらゆるジャンルの動画コンテンツをデジタルで見ることが当たり前になったいま、私たちは日々おびただしい数の動画広告に触れている。なかでもYouTubeは、日本国内で月間7000万人*という圧倒的なユーザー数を抱えていることから、広告主が動画広告を検討する際に、真っ先に名前があがってくるほど人気が高く、まさに「デジタル上のマスチャネル」の様相を呈している。

テレビCMと違い、デジタルの動画広告はターゲティングとスキップできることが特徴だが、同じユーザーに対してしつこく流しすぎると「うざい広告」という烙印を押されかねないし、内容やタイミングが合わなければすぐにスキップされてしまうという負の側面がある。

スキップされることなく最後まで見てもらうには、興味・関心のある層が見ているコンテンツに適切なタイミングで届けることが重要であることは言うまでもない。しかし、毎分500時間分**もの動画がアップロードされるYouTubeにおいて、これまでは安全で適切なコンテンツだけに配信することは容易ではなかった。

広告主とユーザーの両者に喜ばれる理想の動画広告配信とはどのようなものなのか。動画広告のあるべき姿と変わりつつある指標やメディアプランニングについて、電通デジタル 戦略アカウントプランニング部門のマネージャー・小野寺信行氏とメディアプランナー・井澤正道氏、そしてアドテクノロジーの黎明期から広告配信サービスを手がけてきたフリークアウトホールディングスの新規事業、GP営業統括の石瀬賢一氏に話を聞いた。

* https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/marketing-strategies/video/youtube-recap2022-2/
** GP登壇資料より

◆ ◆ ◆

――動画広告の現状をどうとらえていますか?

小野寺信行(以下、小野寺):ウェブ広告の動画マーケットは、2017年頃から右肩上がりで伸長しています。動画プラットフォームでいえばYouTube一択だったところにAbemaやTVerなどが参入し、近年ではインターネット結線のTV(コネクテッドTV)で動画コンテンツを視聴する人も増えました。動画広告については、動画コンテンツの間に挿入されるインストリーム広告だけではなく、記事中に表示されるインリード広告や記事下に表示されるオーバーレイ広告などのアウトストリーム広告の配信環境(インベントリー)も充実していますし、動画広告でリーチできるオーディエンス規模が大きくなり、特にブランド広告主が動画素材(広告)を活用するシーンが増えてきたと感じています。

小野寺 信行/株式会社電通デジタル 戦略アカウントプランニング部門 マネージャー。2012年から国内外のDSP・DMP(CDP)・SSPベンダーにて、ブランドからパフォーマンス領域まで幅広いクライアント企業のメディアコミュニケーション(プランニング&ディレクション)・データアライアンス(CDP構築・Data接続/連携など)をリードし、2019年に電通デジタルに参画。現在は大手グローバル企業の国内マーケットにおけるマーケティング活動を支援している。

井澤正道(以下、井澤):なかでもYouTubeは、オーディエンスの含有率が圧倒的に高く、CPMは500円以下、1インプレッションあたり約0.5円と効率良くデリバリーできるところが大きな魅力です。広告リーチ規模を担保できる動画広告のファーストチョイスは、今なおYouTubeであることに変わりありません。最近のYouTubeにはプロコンテンツが増えましたが、根底にあるのは誰でも投稿できるCGMであるところです。ゆえにコンテンツ数が膨大なのですが、玉石混交の大きな海の中でブランドイメージを毀損しないよう「ブランドセーフティ」をどう担保するかなど、課題はたくさんあります。

――ブランドセーフティのほかに、どのような課題があるのでしょう。

井澤:そもそも動画広告は15秒や30秒の動画を全部見てもらうことでメッセージが伝わるものだから、見られないと意味がありません。途中でスキップされず最後まで見られたかという「完全視聴率(VCR=ビューアブルコンプリーションレート)」をKPIにするクライアント企業が最近増えてきたように思います。

石瀬賢一(以下、石瀬):見られているかという「ビューアビリティ」で注意しなければならないのは、BGM動画の存在です。YouTubeコンテンツの多くは音楽などのエンタメ系で、よく作業中のBGMとして利用されているのですが、画面を見ていないのでスキップされにくい。するとレポートの完全視聴率は上がりますが、実のところユーザーは「見ていない」という矛盾が発生します。

石瀬 賢一/株式会社GP、Head of Sales(営業統括)。2011年に中途でフリークアウトの営業初期メンバーとして参画し、飲料・食品系などナショナルクライアントのデジタルマーケティング支援を担当。営業局長を経てIPOを経験したのち、外資系アドテク企業の日本事業立ち上げフェーズに参画。2017年に再びフリークアウトホールディングスに戻り、現在はGlobal Advertising Divisionに所属し、2022年3月に子会社として設立した株式会社GPのHead of Salesとして大手広告代理店やブランド広告主に対し、YouTube向けの動画広告プロダクトを提供している。

小野寺:あとは広告を目にするタイミング、「モーメント」の部分ですね。ビジネスパーソンが完全オフのモードで野球や音楽など趣味の動画を楽しんでいるときに、B2Bの広告が流れてきたら心理的なズレが生じてしまう。ターゲットは合っていても「今じゃない」と感じてしまったらスキップされかねません。

――ブランドセーフティ・ビューアビリティ・モーメントという課題に伴い、KPIも変わってきているのでしょうか。

井澤:これまでは効率よくリーチを獲得することが求められていたので、リーチボリュームやリーチ単価、さらにはその先のCPCやCPAなどの成果指標をシミュレーションして、プロモーション成果を達成していくというプランニングアプローチをしてきました。もちろん、それは今もベースにありますが、その先の「質」の部分、「本当にちゃんと見られているか」に意識がシフトしてきています。これからは完全視聴率が動画広告における大事なKPIになりますし、配信後にはどんなコンテンツに広告が流れたのかというプレースメント(コンテンツ)をしっかりチェックすることも求められると思います。

井澤 正道/株式会社電通デジタル 戦略アカウントプランニング部門 メディアプランナー。2022年に電通デジタルに参画し、大手グローバル企業を中心としたマーケテイング支援に従事。フルファネルにおけるメディアプランニング・ディレクション/リードを担当する。

小野寺:テレビCMを見てすぐに商品を買うことが少ないように、動画広告は見るべき指標が違うはず。視聴率や動画広告を見た人の間接効果、態度変容などの副次的な効果を見なればならないし、それをクライアント企業と一緒に検証していくシーンがこれから増えていくのではないでしょうか。

同じ動画でもテレビと違うデジタルの利点はなんと言ってもターゲティングですから、まずはきちんと見てもらうために、「ライトターゲット(コンテンツ)・ライトモーメント」にライトクリエイティブで広告を届けることが重要です。これまでは、たとえば「サッカーが好きな人」というように人(興味関心)ベースでターゲティング配信をしてきましたが、個人情報の扱いはこれからますます厳しくなっていきますし、来たるCookieレス時代にはコンテンツ(コンテキスト)をAI解析してターゲティングする手法がひとつのメインストリームになると考えています。

オーディエンス規模を従来のようなターゲティングベースでYouTube広告を配信した際、たとえば、「経営者層や意思決定者層」をターゲットにした広告が、すごく安価に効率的にリーチ獲得できている一方で、プレースメントレポートを見たところ、実はYouTubeの子ども向けチャンネルや音楽コンテンツなどに多くインプレッションが出ていたというケースもありました。また、この場合、動画の中身を解析していないため、ネガティブワードの発言があったとしても配信されてしまっていた可能性もあります。

特に、外資のクライアント企業はブランドセーフティやスータビリティ(適合性)をとても強く意識されています。日本のマーケットでそれを実現するには、膨大な日本語コンテンツの文脈をきちんと解析できる精度の高いコンテクスチュアルターゲティングが必要で、いくつかYouTube上のブランドセーフを担保するソリューションを比較検討しているときに出合ったのが、日本語の解析エンジンを搭載しているGPでした。

――GPの特徴をお聞かせください。

石瀬:GPはYouTube向けに自社開発したコンテクスチュアルターゲティングのプロダクトです。大まかに流れを説明すると、最初にクライアントの広告素材を見せてもらうなど、どんなターゲットに出したいかというブリーフィングを受けてから、我々がコンテキストのプランニングを開始します。

たとえば外資の自動車なら、競合ブランドが出ているコンテンツに出したほうがいいとか、ファミリー向けのクルマだったら家族でキャンプしているコンテンツを入れるなど、条件に合うコンテキストをリストで提案し、それをクライアントに確認してもらいます。

方向性が決まったら、動画一つひとつの内容やタグタイトルなど、あらゆるものをAIで解析する。その後、本当に安全な動画コンテンツをホワイトリスト化して、そこだけに配信していくというソリューションです。

――ホワイトリストはどれくらいの頻度で更新していますか?

石瀬:ホワイトリストはあらかじめ用意しているものではなくて、完全オーダーメイドのブランドカスタムです。条件にもよりますが、アラインされたリストの解析に要するのは2営業日ほどです。だいたいひとつのキャンペーンで数十万くらいのコンテンツをチェックして、プロモーションごとにホワイトリストを作成します。

小野寺:昨今はユーザーからの厳しい目もあるなか、一例ですが、「煽り運転に関するコンテンツの前に輸入車メーカー様のブランド広告が流れてしまっている」というようなブランド毀損に繫がりかねない事象を避けるためには、既存のYouTubeセーフリスト(コンテンツ)***への配信に留まらず、プロモーションごとに動画(配信先コンテンツ)の内容まで解析した上、広告設計・配信ができるGPの技術はとてもありがたいです。

*** 「HYTRA DASHBOARD Channel Safe List」
https://www.dentsudigital.co.jp/news/release/services/2020-1027-000663

――動画の内容は、どのレベルまで確認できるのでしょう。

石瀬:文字情報だけでなく、映像に表示される写真や発言・ナレーションも解析項目に入っています。ある料理コンテンツに「ここでアルコールドーピングをして……」と言いながらビールを飲むシーンが出てきたときは、「ドーピング」という言葉がネガティブワードとして検知されました。ネガティブワードが一概にNGというわけではないので、それを踏まえて流すか流さないかの判断をしてもらうことができます。

井澤:GPは自社(国産)で開発されているプロダクトなので、プロモーションによって変わるニーズにも細やかに対応してもらえますし、どこまでのジャンルや中身まで広げていくかを相談しながら進められるので心強いです。昨今だとCTVや様々なAIソリューションが生まれているなかで、従来の成果指標型のメディアプランニングに加え、プログラマティックやコンテクスチュアル広告など新しく生まれる技術やソリューションを活用することで、我々のような代理店はプランニングを通して新たな価値を届けていかなければならないと感じています。

――GPを利用しているのは、どのような業種や商材が多いですか?

石瀬:ニーズに合わせて細かくターゲティングできますから、自動車メーカーであれば、セダン・クーペ・SUV・電気自動車というように、車種によって変わる用途や活用シーンにも対応できます。ほかにもB2Bや美白ケア化粧品など、機能性を訴求する商材での引き合いが多いですね。

精度の高いターゲティングによって安全で適切なコンテンツにデリバリーするのはもちろんのこと、同時に動画を見ているユーザーをケアすることも心がけています。「今じゃない」「それじゃない」という広告が流れて疎外感を抱かれないよう、コンテンツと広告をうまくマッチさせることが大事ですし、モーメントをとらえた配信をすることで、ユーザーフレンドリーなコミュニケーションが生まれるのではないかと考えています。

小野寺:せっかく配信しても極論「うざい広告」というマイナスの印象を与えてしまうと元も子もないので、ユーザーからの視点が考慮されているのも安心できるポイントです。最近は時代の潮流に乗って、「コンテクスチュアル」をうたうサービスがたくさん出てきましたが、技術レベル(手法やできること)は会社によって異なるので、代理店には各々のプラットフォーム・メディアの特徴や数値ベースのプランニングだけに頼るのではなく、プラットフォーマー・ツール・サービスの裏側のロジックや技術・精度・期待値などを見極める力が求められます。いくつか実際に利用したなかで、YouTubeというメガプラットフォームにおいて、精度の高いターゲティングを実現しているのがGPでした。

――通常配信と比較したことはありますか?

小野寺:某輸入車メーカー様の車種プロモーションで、YouTubeのTrueViewインストリーム広告とGPを同じ金額規模で均等配信してみました。その結果、TrueViewの単価感はGPの約3分の1でリーチ効率もよかったのですが、配信後のプレースメントレポートを見ると、ターゲットオーディエンスに配信しているにも関わらず、インプレッションシェアの95%以上が子ども向けやゲーム実況のコンテンツでした。ちょうど広告配信期間に親戚の集まりがあり、そこで親戚の1人が、自分の子供にスマホを使って子ども向けコンテンツを見せていたところ、該当の広告が流れてきたのですが、その動画をひたすらスキップされる、という切ない経験もしました(笑)。このような事象が起きうるリーチインプレッションは価値あるリーチインプレッションかといわれると正直懐疑的です。

一方、GPでの配信はプレースメントを見ると一目瞭然で、キャンプやゴルフ、釣りなどの狙ったコンテンツにきちんと届けられていますし、スキップできる条件でありながら完全視聴率も2倍ほど高い結果となりました。

井澤:効率よくリーチを取りたい、もしくはTVCMとのクロスリーチの創出・インクリメンタルリーチの創出が目的ならYouTubeの通常配信、きちんと見られる(適したコンテンツ・モーメントに広告を配信したい)など明確なニーズがある場合はGPを活用しての配信、というように、これからは目的に応じて使い分けをすることが重要になってくるのではないでしょうか。もちろんプランニング次第なのでGPでもリーチが取れないわけではありませんが、要は量と質のバランスをどう調整するか、という問題だと思います。

――今後GPに期待することは?

井澤:クライアント企業によっては、CTVのみなど、デバイスを絞りたいと希望するケースも増えてくると思うので、そのようなデバイスカットの設計における精度の高いコンテンツ選定かつリーチボリュームの担保において(マーケットへの期待含め)、GPには引き続き期待しています。また、GPの動画解析技術はYouTube以外にも応用できるはずなので、SNSやCTVでも同様にコンテンツ解析・配信に活かせるようになるといいですね。

石瀬:YouTube以外の活用も模索しているところですが、フリークアウトにはAPACやUSなどに海外拠点があるので、まずはYouTube向けプロダクトの海外展開を進めています。GPに搭載した日本語解析エンジンを、ベトナム語などの現地言語に対応させて東南アジアで販売していますし、YouTubeの本場であるアメリカでの販売拡大を見据えて英語版の解析エンジンもすでに搭載済みです。日本産のコンテキスト配信が、世界でもクオリティを求める際の選択肢になればうれしいです。

小野寺:リーチとクオリティを両立・担保していくことが、これからの動画広告配信のスタンダードになると思います。プレースメントレポートまでチェックするクライアント企業はまだ少ないのが現状ですが、井澤が話したように、「これまでできなかったことが新しいテクノロジーによってできるようになった」のですから使わない手はありません。テクノロジーの発展(技術)を活かし、クライアント企業の広告プロモーション目的に応じて最適なメディアプランニングを提示し、ディレクションし、成果にコミットすることで、常に一歩先のブランドコミュニケーションに我々が寄与していけると確信しています。今後はさらにGPをほかのプラットフォームと複合的に使った際、どのような相乗効果があるのかも科学していきたいと考えております。

Sponsored by GP
Written by DIGIDAY Brand STUDIO(山本千尋)
Photo by 合田和弘

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