否定された「 TikTok Shop拡大撤回」報道と米ライブコマース事情:ライブストリーミングショッピングの未来とは

DIGIDAY

7月第1週、TikTokが米国においてQVC(言わずと知れた24時間テレビショッピングチャンネルだ)スタイルで展開する予定だったライブeコマース計画を撤回したと報じられたことで、マーケティングおよび広告業界で多くの議論(と注目を集めようとするための意見の投稿)が巻き起こった。

この報道をもともと報じたのはファイナンシャル・タイムズ(Financial Times)だったが、TikTokはこれを否定し、バイトダンス(ByteDance)傘下の同プラットフォームにはもともとTikTokショップ(TikTok Shop)事業を西側諸国に拡大する具体的な計画はなかったと述べた。

小さい米国ライブコマース市場

事業計画がどうであれ、想定されていたライブコマース拡大が有望に見えたなかでの今回のローンチ失敗(あるいは、もともと予定していなかった)は、ソーシャルライブショッピングが中国のように米国で軌道に乗るためには何が必要なのか、という疑問を再度提起している。米国に拠点を置くブランドのマーケターにとっては、アジアの広告主にとってうまくいったことが必ずしも自国でうまくいくとは限らないということ示しているのだ。少なくとも、いまのところは。

広告エージェンシーのモディフライ(Modifly)で有料広告部門を統括するブランドン・ビアンカラーニ氏は、「欧米では、 コンテンツを視聴するために(ユーザーがTikTokを)使っているのか、Facebookを使って友達や家族に会うのか、実際に買い物をするのか、といった行動のあいだに大きなギャップがある」と述べた。

数字の観点から見ると、ソーシャルコマースのライブストリーミングに関しては、アメリカはかなり遅れている。中国では、eコマースのライブストリーミングによる昨年の売上が3000億ドル(約410兆円)近くに達し、国の小売総売上の12%弱に達するとeマーケター(emarketer)は予測した。一方で同社によると、アメリカではこの数字は非常に少ないため、報告さえされていないという。

いまだ実験段階のライブコマース

マーケターたちによると、ソーシャルメディアに対する欧米の一般消費者の不信感を含むさまざまな理由が、この市場規模の小ささの要因として挙げられる。たとえば、アメリカ人はソーシャルメディアを買い物ではなくインスピレーションや発見のために利用している。また、ユーザー体験に一貫性がなく、データとアトリビューションに制限があり、マーケティング自体を嫌う世代も増えている。景気後退が迫り、消費者が財布を少し引き締めていることも逆風だ。

ライブストリーミングショッピングやeコマースへの、ブランドマーケターたちの興味は高まりつつあるが、ビアンカラーニ氏によるとモディフライのクライアントたちはまだ実験段階にあるという。

IMGNメディア(IMGN Media)の最高戦略責任者であるノア・マーリン氏は「新しいツールであることもあって、間違いなく関心はあった」と語る。「ただ、ほとんどの場合、まだ完成形に達していないという感じだった」。

それでも、新たな収益源を生み出そうと、プラットフォームたちはライブストリーミングによるeコマース市場へ進出した。昨年のホリデーシーズンには、YouTube、Facebook、ピンタレスト(Pinterest)などがライブショッピングがホリデーショッピング戦略に大きな役割を果たすと発表した。TikTokも、コマースのテスト、有料のライブ・サブスクリプション、デジタル・ギフトなど、ライブ機能に多大な投資を行っている。

今後も「テスト」は続く

デロイト・デジタル(Deloitte Digital)のソーシャル、コンテンツ、インフルエンサー担当アソシエイトディレクターであるアリ・バーコウィッツ氏は、「ライブソーシャルコマースは今後も存在し続ける。ソーシャルプラットフォームたちは、若い消費者のフィードに、ショッピングチャンネルのような体験をもたらそうと考え、(どうやったら浸透できるのか)解読しようとし続けるだろう」と電子メールで述べた。

「その過程で私たちは多くのテストを目にするだろうし、間違いなく多くの失敗も出てくるだろう。しかし、ライブソーシャルコマースの利点は、そのフォーマット自体はすぐには消えない点にある」。

[原文:Marketing Briefing: Debunked ‘TikTok Shop’ report reignites conversations around the future of livestream shopping for brands

Kimeko McCoy(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)

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