暗号資産業界紙のブロックワークス（Blockworks）は今年、2000万ドル（約25億円）の収益をあげ成長軌道に乗っている。2021年の同社の収益は1300万ドル（約16億円）だった。その戦略の大部分は「新たな富の波」とも言える、分散型自律組織（DAO：Decentralized autonomous organizations）をターゲットにしている。
DAOは基本的に熱心な暗号資産投資家のための自主的なクラブだが、会社と同程度組織化された、公式なものも存在する。共通の目標の下で活動し、意思決定において各メンバーに平等な発言権を与える形の集まりが最も典型的だ。
ブロックワークスの共同創業者であるジェイソン・ヤノウィッツ氏によると、これらのクラブ会員たちは仮想通貨を購入することでクラブに参加するため、時には数十億ドル相当といった、多くのクラブにとっては運用・使用能力をはるかに超えた額の暗号通貨を抱えたクラブが誕生する可能性もあるようだ。
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DIGIDAYポッドキャストの最新エピソードで、ヤノウィッツ氏と共同創業者のマイケル・イッポリート氏は、なぜ彼らが営業スタッフを教育して、DAOに広告機会を売り込むのか、そして何千人ものDAOメンバーからのフィードバックがどれだけ正直で役に立つかについて語った。さらに両氏は、ブロックチェーン専門の出版者として、彼らのNFT戦略と、なぜパブリッシャーはほかのブランドやアーティストとは違ったアプローチでNFTを売る必要があると感じているのかについて掘り下げている。
本記事では、会話の要点をいくつか紹介する。内容は、わかりやすくするために若干の編集を加えてある。
DAOの収益が持つ、明るい見通し
ヤノウィッツ氏：1年前の時点では、DAO全体に対して1人のセールス担当者を置いて、彼らがDAOのエキスパートになるということを考えていた。しかし今では、私たちの考えは拡大している。DAOは新しい機関であり、DAOはあらゆる種類のソフトウェア・ビジネスよりも大きくなるだろう。
DAOは最終的に米国最大の銀行より大きくなると思う、と言うとおそらくばかげて聞こえるかもしれないが、今現在すでにユニスワップ（Uniswap）は35億ドル（約4400億円）の資金を持っている。ENSは約10億ドル（約1270億円）持っている。そのため、私たちはただセールスチームではなく、マーケティングチームや編集チームに対してもDAOがもたらす未来について指導している。私たちは、これらの「クリプト・ネイティブ」な機関が何を意味するのかを皆に教えているのだ。
DAOのセールスピッチの調整
イッポリート氏：企業ではなくDAOへセールスすることの違いは、DAOの人々が持つ所有意識とコミュニティにある。この違いは、小さな会社に売ることと大きな会社に売ることの違いに似ている。
一般的に、小さな会社に販売しているとき、相手は（会社に対して）深い当事者意識を感じている。そして、彼らは自分のお金を使っているというよりは、「（会社は）私の赤ちゃんで、非常に大事な存在だ」という感覚を持っているものだ。そのため、顧客への価値提案の内容は通常と大きく異なってくる。つまり、彼らに販売する際には、会社とひとりの人間としてつながりを持ち、その会社を理解していることを示す必要がある。大企業に販売する場合、人々は所有感・当事者意識を失い、実際には個人の時間を守ろうとする。
この点で、DAOも通常とは少し異なる価値提案となる。暗号通貨のいいところは、コミュニティ全体が（仮想通貨の購入を通して）参加しており、全体が成功することを望んでおり、所有者意識が強い点にある。私たちは、DAOに対して何かを売り込むときには、それが実際に意味のあるものであり、常にそのコミュニティに価値を追加していることを確実にしたいと考えている。
Web3.0がメディア業界に与える影響
イッポリート氏：メディアの状況は変わりつつあり、人々はサブスクリプションを増やしている。こうしたなかで私は、暗号資産や私たちが話しているDAOやNFTといったもののいくつかは、メディアに非常に面白いソリューションを提供していると考えている。そして、今後5年ほどのあいだに、メディアビジネスと興味深い方法で統合されると思う。
NFTは、メディア企業がどのようにマネタイズするかという点で、大きな変化を表している。非常に魅力的に聞こえるかもしれないが、私たちは（NFTが抱える能力を）まだ完全に知っているとは思えない。私たちにとってNFTは主に実験だ。そして、私たちの暗号資産コミュニティともっとつながるための方法でもある。
結局のところ、私たちはこの業界を愛しており、業界全体を前進させるために何かをしたいと思っている。その一部は、これまで不可能だった新しいモデルを試してみることだと思う。最初のプランとして私たちは、主催するカンファレンスである「パーミッションレス（Permissionless）」と連動したNFTリリースし、人々をワクワクさせ、コミュニティに参加してもらう予定だ。
パブリッシャーとしてのNFTへのアプローチ
イッポリート氏：一般論として、投資機会のためにNFTを購入する場合は、非常に慎重になる必要がある。NFTは非常にエキサイティングな分野であり、非常に大きな可能性を秘めていると思うが、まだ初期段階だ。NFTの専門家であり、NFTベースのコミュニティに多くの時間を費やしている人の多くは、すぐに（購入したNFTの）価値が100倍になり転売できると期待して買ってはいけない、と言うだろう。
（自分であれば）NFTについて考えるときは、そのNFTを支えているコミュニティに基づいて購入するだろう。（特に）このコミュニティにアクセスして、そのコミュニティに価値を追加する方法を継続的に実験している場合はなおさらだ。それは、NFT、そしてNFTとメディアが一般的にどのように結合するかというテーマに、より広く結びついている。NFTは将来、メディア企業が収益化する非常に興味深い方法になると思う。
［原文：‘DAOs are the new institutions’: Why Blockworks is training its sales team to pitch to crypto groups］
Kayleigh Barber（翻訳：塚本 紺、編集：分島翔平）
