カテゴリーを超えた「 キノコ 」をキュレーション。新たなeコマース・スタートアップ、シュルームブームの狙い

DIGIDAY

6月18日、カリフォルニア州トパンガの森に、Googleの共同創業者で世界第8位の富豪セルゲイ・ブリン氏、ファッションデザイナーのアラナ・ハディッド氏(ベラとジジ・ハディッド氏の姉)、女優のタルーラ・ウィリス氏(ブルース・ウィリス氏とデミ・ムーア氏の娘)をはじめ、多彩な人々が集まった。そうした人々を引き寄せた共通の関心事は「キノコ」だ。

この一団は、新しいeテイラーであるシュルームブーム(Shroomboom)のローンチデーを祝っていた。コンサルティングとPRのバックグラウンドを持つ起業家アレハンドラ・ロドリゲス氏と、AppleやHBOなどのクライアントを担当した広告担当エグゼクティブのジェニファー・パーク氏が共同で設立したこのプラットフォームは、カテゴリーを超えて高まるキノコブームに乗じて誕生した。キノコで作られたファッション、美容製品、ウェルネス製品を提供するこの会社は、キノコに特化した最新のスタートアップとして市場に参入した。このプラットフォームは、ニッチな栄養製品と、サックス(Saks)やセフォラ(Sephora)で見られるようなトレンディなブランドとを組み合わせ、熱心なキノココミュニティとおしゃれなファッションや美容の買い物客との橋渡しをすることを目指している。

「我々は、比較的毎日のようにキノコ製品をローンチする企業を目にしてきた。そして、我々のミッションは、大衆にキノコを広めることだ」とロドリゲス氏は語る。「我々は、みんなに奨励したいマーケットプレイスを築いている」。

あらゆるキノコ関連製品をキュレーション

ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)やアクネストゥディオズ(Acne Studios)などのファッションブランドや、ユース・トゥー・ザ・ピープル(Youth to the People)、タタ・ハーパー(Tata Harper)、ヒューマンレース(Humanrace)などの美容ブランドとともに、このサイトはヒッピーよりも洗練されたブランディングで、あらゆるキノコ関連のものをキュレーションしている。今回のローンチのキックオフのために、トパンガで行われたこの小売業社のイベントでは、アグ(Ugg)、マッドウォーター(Mud/Wtr)、ハディッド氏のファッションブランドであるラ・ディトレス(La Detresse)など、同サイトで販売されているさまざまなブランドがプロモーションブースを出展した。


写真左から:2022年6月16日、シュルームブームのローンチでのジェニファー・パーク氏、セルゲイ・ブリン氏、アレハンドラ・ロドリゲス氏、アラナ・ハディッド氏(提供写真)

マーケティングは、「まさに『すべてのバーティカルを活用し、それを人々が本当に体験できるやり方や何が起きているのかを理解できるような方法でまとめるにはどうしたらよいか』というものだった」とパーク氏は言う。このサイトでは、スキンケアに含まれている霊芝から、サイロシビン(幻覚性キノコに含まれる麻薬)のマイクロドーズ法まで、キノコに関するありとあらゆるものを扱っている。

しかし、このブランドはキノコの世界の風変わりな側面を避けてはいない。森に囲まれたヒッピーの隠れ家的なエルスウェア(Elsewhere)で開催されたこのイベントでは、サイロシビンの愛好家がサイケデリックな効能を賞賛し、DJがステージに上がってサウンドシステムにつながれたコードにさまざまな種類のキノコを接続した。その後、ブリン氏は少数の見物人グループのためにカードマジックを始めた。

キノコは次の大きなトレンド

ベンチャーキャピタルやテック界、ハリウッドなどの投資家たちは近年、キノコに夢中になっている。シュルームブームは、ハリウッドのプロデューサーのマーク・フォースター氏、MTVのクリエイターのボブ・ピットマン氏、元WMEのエージェントのアダム・ヴェニット氏、テスラ(Tesla)のサブスクリプションスタートアップであるオートノミー(Autonomy)の創業者で、以前パーク氏と共同でフェアドットコム(Fair.com)を創業したスコット・ペインター氏といったビジネス関係者から100万ドル(約1億3600万円)のシード資金を獲得している。シュルームブームの創業者たちは現在、ブリン氏をブランドの「友人」と表現しているが、彼からの資金提供については発表していない。

ファッション・コラボに加え、ハディッド氏も投資家としてこのeテイラーをサポートしている。彼女はキノコを「次の大きな流れ」と考えている。シュルームブームは「100%時代を先取りしている」と彼女は語り、取締会のメンバーとして、「私も一緒にその波に乗っている」と述べた。

2021年4月のマルチバース(Multiverse)のローンチに続き、キノコのeコマース・スタートアップとして市場に参入したばかりのシュルームブームは、イベントに集まる熱心なキノコ愛好家のコミュニティを活用し、キノコの効用に関する書籍やドキュメンタリーを制作している。2021年11月、ロドリゲス氏はメキシコのカレイェスで毎年開催される5日間のイベントであるオンダリンダ・フェスティバル(Ondalinda Festival)でスピーカーを務め、ニューヨーカー誌に、バーニングマン(Burning Man)の「より排他的ないとこ」と評された。

幻覚性キノコの効能にも関心が集まる

この熱狂の大きな部分を占めるのがサイケデリックだ。サイロシビンは、オレゴン州といくつかの解禁されている都市を除けば合法ではないため、シュルームブームでは販売していないが、研究および合法化に非常に協力的である創業者たちが興味を持っている分野だ。同団体は、幻覚剤学際研究学会(Multidisciplinary Association for Psychedelic Studies)を支援しているが、この学会はキノコ関連のスタートアップだけでなく、ドクターブロナー(Dr. Bronner’s)などのブランドからも多くの支援を受けている。

ロドリゲス氏はサイロシビンの効能に夢中であり、彼女自身が摂食障害から回復する際に経験したサイロシビンが果たした役割について率直に語っている。

「キノコのおかげで治ったとは言わないが、ただ心と身体の健康のためによりよい生き方を見つけることに対して本当に情熱を注ぐようになった。個人的には、本当に幸せになれるという意味ですばらしいものだった」。

またロドリゲス氏は「脳の批判的、分析的な部分がオフになる。考えすぎ、不安、分析しすぎ、それらすべてがなくなる。脳が自然な状態に戻る」とも述べている。

パーク氏は「キノコの薬効面で起きていることを大いに信じているし、合法化への道がより早く進行するよう願っている」と話す。

いまのところ、同社は消費財を通じてキノコのコミュニティを拡大することに注力している。美容も特にその大きな部分となっているのは、このスタートアップがもともとスキンケアブランドとして構想されているからで、今年中には自社でスキンケア製品を発売する予定だ。

「美容は、我々の戦略の大きな部分を占めている。強力なブランドになるためには、説得力がなくてはならない」とロドリゲス氏は語っている。

[原文:Shroomboom is the new e-commerce startup making mushrooms chic]

LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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