小規模の ベンチャーキャピタル は、不安定な経済をどう乗り越えようとしているのか?:投資戦略やブランドキュレーションの役割

DIGIDAY

不安定な経済状況では、誰もが影響を受ける。

だが、アーリーステージにある美容のスタートアップは、ほかの多くの企業よりも脆弱だ。サプライヤーとうまく取引する際に自由に活用できるリソースが不足している、あるいは顧客と強いつながりを作るのがむずかしいなど、小規模でまだ確立されていないブランドは、より多くのリスクに直面している。そして経済が不況に傾きそうな状況にあって、小規模なベンチャーキャピタルもまた無縁ではいられない。そうしたベンチャーキャピタルは、景気が低迷すると既存のブランド投資に対してさらなる支援を行うために、積極的な投資を控える可能性が高い。そのような小規模なベンチャーキャピタルのひとつに、ジョビキャピタル(Jobi Capital)がある。同社は、ジョビブランズ(Jobi Brands)というセレブリティやインフルエンサーのブランドインキュベーターも運営している。ジョビブランズは最近、俳優のコートニー・コックス氏による新しいハウスクリーニング製品のブランドとなるホームコート(Homecourt)を開発・ローンチした。ジョビキャピタルは、英国を拠点とするベビー服ブランドのモリ(Mori)や俳優ケイト・ハドソン氏の栄養補助食品ブランドのインブルーム(Inbloom)などの消費者ブランドにシードおよびシリーズA資金を通じて投資している。

小規模なVCファンドはどのように不安定な景気を乗り越えようとしているか、それが小規模ブランドにどのような影響を与えるか、そしてなぜジョビは自社ブランドのインキュベーションに関心を持っているのかについて、ジョビキャピタルのパートナーであるライアン・ネルソン氏がGlossyに語った。

ーー不況のような経済問題は、投資戦略にどの程度影響を与えるか?

「我々は長期的な視野で物事を考えているが、新規の投資について話すときは、何をするにせよリスクとリターンを評価している。厳しい時期には、そのリスクはかなり高くなる。新しい企業にとって、サプライチェーンの不足など、いくつかの異なる分野で困難が生じる。また若い企業は、自社の消費者と確立した関係性をそれほど築くことができていない。そうした企業を評価する際、その企業がこれまで(景気の悪い)サイクルを経験していないため、どのように効率的にキャッシュを管理できるのか、同じレベルの収益成長を達成できるのか、といったことがわからない。

ジョビは他のメガコンシューマーファンドほど規模が大きくないため、自然とより保守的になる必要があるし、選択的にならなくてはいけない。このような不況下では、既存のポートフォリオ企業が安定していることを保証することにより重点が置かれる。これらの企業が困難に陥った場合、こちらが支援できるように、資金を確保しておきたいと考えている」。

ーー投資の状況はどのように変化しているか?

「ブランドを構築し、ブランドへの投資を検討している際には、その企業が効率的に成長していて、費用を多くかけて成長するモデルをもはや追求していなことを確認したい。現実には(そのようなアプローチは)循環的だ。結局のところホットディールを奪い合う投資会社を獲得し、企業が資金を得た際には、バリュエーションを上げるためにその資金を使っていることを示す必要がある。

(このような経済状況では)既存の投資家がブリッジラウンドにさらに力を入れるのを目にするようになるかもしれない。これはかなり普通のことだ。私は小規模なファンドが撤退するだろうと予想している。バリュエーションはさまざまな理由で下がっている。たとえば(類似した企業や)金利が(将来の推定)ターミナルバリューに影響を与えるからだ。ある時点で、人々は(再び)バリュエーションが非常に魅力的に思えるようになり、取引活動が再び活発化するかもしれない。また不況下では、その環境に対応できずに閉鎖に追い込まれる競合他社もあるだろう。特定の分野では明確な勝者が存在するだろうし、投資家はそうした企業を後押ししたいと思うだろう」。

ーー若いブランドにとって、このような経済環境における現在の課題は何か?

「若いブランドは、おそらく小規模なファンドや投資家、そしておそらく富裕層の個人に頼っている。厳しい経済状況で、より影響を受け、より選択的になるのが、こうしたタイプの投資家だ。巨額の活動資金を持つ大規模なVCもよいが、資本を効率的に運用するためには、のちの段階でより大規模な取引を行う必要がある」。

ーージョビでは現在ブランドインキュベーションがどのような役割を担っているか?

「(ジョビは)現在、ブランドインキュベーションにより積極的に取り組んでいる。我々は2年前にインキュベーターをローンチしており、その頃から(インキュベーションへの)転換が始まっている。我々は(市場の)シグナルを探し、消費者ブランドが次の大きな流れになるかを評価していた。2019年には、セレブリティやインフルエンサーとタイアップすることで、ブランドをより早く(売上や認知度の成長)マップに乗せることができることに気づいた。最終的には、それは成功を保証するのに十分ではないが、企業にとって最初の数百万ドルの収益への道のりを短縮するのに役立つ。

また(我々が投資している)多くの消費者向け企業では、(創業者やCEOは)同じような課題に直面し、学ばなければならない。だから我々は『自分たちのブランドをインキュベートして、最初からチームをデザインし、セレブリティやインフルエンサーと提携してベストなスタートを切ればいいのではないか』と考えた。我々はスウェットエクイティもいくらか行うため、経済的でもある」。

ーーどのようなタイプのブランドのインキュベーションを求めているか?

「(メディカル)エステティックの分野にとても興味を持っている。インフルエンサー、とくにカーダシアン一家によって、エステティックはより受け入れられるようになった。多くの人がある程度のそうした施術を受けているか、この分野にちょっと手を出し始めている。我々は、人々がより多くの情報にアクセスしやすくなるような興味深いモデルを考えようとしている。消費者ブランドにとって目立つことがいかに難しいかを考えると、我々が目にするトレンドのひとつは、ブランドが立場を明確にしたり、その分野の新時代を築くリーダーになろうとしていることだ。どのように(エステティックのビジネスが)視点を持つことができるか、何かを支持することができるかということだけでなく、人々がより多くの情報に基づいて意思決定できるような情報をどう提供できるかについても考えている」。

[原文:How smaller venture capital firms are responding to economic uncertainty]

EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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