「人々は必ずしも『プロセス』を評価しなくなっている」:動画供給のプレッシャーに苦しむ ソーシャルメディア 起業家の告白

DIGIDAY

ソーシャルメディアの断片化、TikTokの台頭、そしてソーシャルメディアが動画へ急速に軸足を移したことで、クライアントの期待値が高まっている。クライアントがより多くのコンテンツを求め、バイラルな瞬間を生み出そうとTikTokやインスタグラムのリールのようなプラットフォームにコンテンツを供給するようになってきていると、PRやソーシャルメディア関連のエージェンシーパートナーは感じている。

仕事量の急増を受け、あるソーシャルメディアマーケティングの起業家はソーシャルメディア管理を提供サービスから外し、コンテンツ制作に集中することにした。匿名性を保障する代わりに本音を語ってもらうDIGIDAYの「告白」シリーズ。今回は、そのソーシャルメディア起業家から、目まぐるしく変化するソーシャルメディア環境におけるクライアントの期待について話を聞いた。

以下、読みやすさのために若干の編集を加えてある。

◆ ◆ ◆

――コンテンツクリエイターとして、またソーシャルメディアストラテジストとして、現在のデジタル環境でどんなことを経験している?

ひとつ気づいた変化は、我々が出している結果の裏にある過程を、クライアントが必ずしも理解していないということだ。彼らは一度にたくさんのアイデアを出してきたり、一度にたくさんの異なるアイデアをやりたがったりするが、それを実行するには多くの手がかかるということを、必ずしも理解していない。しかも、それを非常にタイムリーに出すことを望んでいる。こういうものは、ひとつのプロセスだ。

今ではそのプロセスが、少し急かされているように感じるときがある。新たな機能が追加され、誰もが周囲に遅れたくないと考え、あらゆるものが目まぐるしいペースで進んでいるせいだ。ソーシャルメディアの専門職に対して、人々は必ずしも途中にあるプロセスを評価してくれなくなっている気がする。

――つまり、優れたコンテンツを迅速に提供しなければならないプレッシャーがあるということだろうか。それが仕事のやり方に及ぼしている影響は?

間違いなく影響はある。私のエージェンシーでは最近、一度に12社のクライアントを抱えていた。やりくりするのは大変であり、今でもきつい。その対応で燃え尽きた気分になったからだ。そこで文字通り、自分の事業内容を変えることにした。以前は、我々の専門分野はソーシャルメディア管理とコンテンツ制作だと言っていた。今は、専門はコンテンツ制作とだけ言うようにしている。

――なぜ変えたのか?

以前はクライアントのために月30本の投稿を作成していた。少し経験を積んだところで、最小限の(サービス)パッケージを、月15本の投稿と週に数本の動画のみのリールに変えた。今では、クライアントにそのコンテンツを提供してもらわなくてはならない。以前は、私自身ががコンテンツを作るだけであり、必ずしもクライアントの手を借りなくてよかった。

しかし今は、「1日に密着」系の動画が必要だ。彼らに専門知識を披露してもらい、ライブで発信し、ほかの人とコラボレーションしてもらわなくてはならない。さまざまなプラットフォームで成功するために、今はこうしたさまざまなことをする必要がある。

とはいえ、彼らも忙しい。だからこそ、私を雇っているわけだ。そのため、クライアントと連絡を取って、こちらの求めるコンテンツを提供してもらうことも、それ自体が間違いなく大変な仕事になっている。

――最も時間と労力を費やしているソーシャルメディアは?

間違いなくインスタグラムだ。TikTokは一番手間がかかっていないだろう。クライアントを問わず、我々はTikTokでなら楽しめる。しかしインスタグラムの場合は、すべてが技術的な話にならざるをえない。クライアントによって、使える(製品の)機能が異なるからだ。クライアントが何かを見て「あれがほしい。ああいうことができるか?」と言い出しても、「(あなたのアカウントでは)そもそもその機能がない」となってしまう。

すると彼らは機嫌を損ねるため、我々は期待値を調整しなくてはならない。リールが登場したときクライアントはより多くを要求するようになった。誰もが何かを見せたがっており、動画コンテンツは文字通り支配者になった。リールが登場すると、それが人々が誰かのコンテンツを見る唯一の方法になった。動画を通して見るようになったのだ。

――インスタグラム・リールが、コンテンツ制作の面でTikTokより負担が重いと言う理由は?

インスタグラムでは、誰もが完璧でありたがる。TikTokは本物らしさが成功のカギだ。ベッドでただ寝ているところや、何かしゃべっているだけの動画でも、爆発的に受ける。なぜなら、人々はあなたを愛し、あなたに共感するからだ。

インスタグラムに関して言えば、誰かの投稿が3日間も目に触れないこともある。フォロワーの投稿の10%しか表示されないため、誰かのストーリーが目に触れない可能性がある。インスタグラムには技術的な要素が多く、それが人々を遠ざけている。

[原文:Confessions of a social media entrepreneur on the pressure to constantly create content

Kimeko McCoy(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:島田涼平)

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