変わる米 テレビ測定 の環境、「新規参入」を狙うプレイヤーも:「新たな指標の確立もあり得る」

DIGIDAY

米国のテレビ測定はもはや1社の独壇場ではない。このチャンスに乗じようともくろむ企業が増えているが、そこにイービクイティ(Ebiquity)が加わろうとしている。

メディア管理企業であるイービクイティは米国のテレビ測定(あるいはその欠如)を、これまで固く閉ざされていた市場への参入手段と捉えている。イービクイティの専門であるメディア監査が米国ではヨーロッパほど広く導入されていないことを考えると、確かに、米国市場への参入はこれまで無理難題だった。しかし、ストリーミングのブームをきっかけに、米国におけるニールセン(Nielsen)のテレビ視聴率の手綱は緩んでおり、イービクイティは、基本的には広告バイヤーの仲介役として、そこに存在感を示す機会を見いだしている。

その理由を理解するのは難しいことではない。ニールセンの苦境は、従来の視聴率モデルがメディア業界のより良い測定への前進をいかに妨げているかをくっきりと浮かび上がらせた。その結果、マーケターは失望し、ニールセンより優れたオーディエンス測定の方法を次々と試している。イービクイティは、その選択肢のひとつになりたいと考えているのだ。

売り込むのはプラットフォーム横断のソリューション

イービクイティの売り込みは単刀直入だ。同社のソリューションはメディアのコスト、品質パラメーターを見るだけでなく、テレビを含むクロスプラットフォームのリーチ、アテンション、ブランドセイリエンス、クリエイティブの有効性を追跡、測定することを視野に入れている。これは米国のオーディエンスデータ会社であるルーメン(Lumen)、システム1(System1)、オーディエンスプロジェクト(AudienceProject)、ティービジョン(TVision)のデータを取り込むことによって実現する。

さらに、アドバンスドTVのソリューションもある。他のサービスと同様、このモジュラープロセスは、広告主にインクリメンタリティの指標をもたらすことに正面から取り組むものだ。これを実現するため、たとえ広告を見なくても、そのブランドとすでに取引していた顧客と新規顧客を分けるキャンペーンを測定する。これはテレビが長年取り組んできた課題だ。

イービクイティのCEO、ニック・ウォーターズ氏は「米国のテレビ市場の力学が変化していることが、私たちのビジネスの後押しになっている」と話す。「ニールセンが米国でつまずき、苦戦していることで、市場参入の余地が生まれた」

このサービスが成功し、少なくとも市場の一部を占めることができれば、特にオンライン測定のアプローチを見直そうとしているマーケターに、他のサービスを売り込む機会が生まれるとウォーターズ氏は考えている。つまり、テレビ測定を巡る現在の騒動は、時間をかけてマーケターにアップセルするきっかけになるということだ。こうしたことは、米国のメディア監査企業MMIを3月に買収したことで、一層容易になった。この買収により、イービクイティは全米に40人のチームを持ち、GM、AT&T、サムスン(Samsung)、ガイコ(GEICO)などの大手広告主にサービスを提供することになった。戦略的日和見主義とでも言っておこう。

ブルーオーシャンでの戦略

分析プラットフォーム、アップウェーブ(Upwave)のCEO、クリス・ケリー氏は「カレンシー(通貨)と測定は相反するものではない」と語る。

実際、ビュー、オンターゲットビュー、クリック、サイト訪問、店舗訪問、売上など、長年にわたって追跡されてきたメディア指標は数多くある。検索のようなチャネルでは、Googleが測定しているように、クリックがカレンシーとなる。デジタルメディアでは、広告サーバーのインプレッション数で測定されるビューがカレンシーとなる。テレビでは、何十年ものあいだ、ニールセンのGRPで測定するビューがカレンシーとして用いられてきた。

「なぜカレンシーとして選ばれた指標が変わらないことを前提にしているのだろうか?」とケリー氏は問い掛ける。「一部の広告主はすでに、オンターゲットビュー、クリック、売上などで取引したいと考えている。そのため、将来的には、ファネルの上下でさまざまなカレンシーを試したいと考えるようになるのは明らかだ」

メディアの世界が果てしない混乱状態に突入したかのように見える今、これはメディアのパフォーマンス測定と管理を行う企業として、イービクイティのチャンスが全世界で拡大することを物語っている。現在、広告の効果は着実に低下している。多くの意味で、メディアミックスの説明が付かない無駄な領域につぎ込まれる資金が増えているためだ。その結果、この力学に変化を起こし、マーケティングの成果を高めるため、シニアマーケターがチームを再編し、パートナーを探す動きに拍車が掛かっている。

2020年、イービクイティはこのチャンスを生かすため、買収から全社規模の再編まで、一連の行動を起こした。ウォーターズ氏によれば、まだ進行中ではあるものの、明るい兆しが見えているという。全体としては、マーケターにポイントソリューションを販売するというより、5年単位でマーケターと共に売上を高め、徐々にさまざまなソリューションに切り替えていくというやり方だ。現在取引している大手広告主70社超のうち、28社がその軌道に乗っている。2021年、その効果が現れ、売上が前年比13%増を記録した。世界展開も成長要因のひとつだ。もっともも成長率が高かったのはAPAC(アジア太平洋地域)の23%で、2位は米国の15%だった。

残される課題とパートナーとしての意気込み

ただし、すべてが上向きになったわけではない。業務効率は今もイービクイティの弱点だ。ウォーターズ氏によれば、特定の業務は一部自動化されているが、まだ手作業の部分があちこちに残されているという。2022年に入ってからメディアパス・ネットワーク(MediaPath Network)を買収したのも、主にそのような戦略的理由からだ。

エージェンシー選定サービス、メディアの価値追跡、広告価格のベンチマーク評価など、基本的にイービクイティが行っていることはすべて、高度に自動化されたテクノロジープラットフォームで行われている。

「我々は(顧客のために)デジタル市場の不足を補ってきた。そして今、放送の世界で同じことをしたいと考えている」とウォーターズ氏は話す。「我々のようなパートナーがいれば、マーケターは市場における自分たちの価値を本当の意味で理解できる。しかし、ストリーミングの世界では、従来のテレビ測定のアプローチが通用しないことを考えると、我々もやり方を変える必要がある」。

[原文:‘Supportive to our business’: Industry arbiter Ebiquity eyes growth amid TV measurement woes

Seb Joseph(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:猿渡さとみ)

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