今夏、旅行 ブランドに「狂騒の20年代」は訪れるか?:旅行者数の劇的回復に大きな期待

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多くのeコマース企業は過去2年間にわたり、タイミングの悪さの犠牲となってきたが、特に大きな影響を受けたのは旅行ブランドだろう。

外出禁止令が最初に施行されたとき、もっとも甚大な影響を受けた業界のひとつである、アウェイ(Away)やジュライ(July)などの旅行かばんブランドは90%を超える売上の下落を報告した。そして、ワクチンの接種開始に続いて昨年夏に旅行者の数が次第に復活しはじめたが、運輸保安庁(TSA)の旅行者数は依然として2019年を大きく下回っていた。

しかし現在では、景気後退の懸念が迫りつつあるなかでも、旅行者数は劇的に回復しつつある。メモリアルデー(5月30日)には230万人の人々が運輸保安庁のチェックポイントを通過した。2019年の同じ日にはこの数は250万人、2021年には190万人だった。それに対応して、旅行ブランドは現在、D2Cブランドのなかでももっとも楽観的な部類だ。これらのブランドはこの夏の季節コレクションに大きな期待を寄せ、在庫を増やすため多くの投資を行っている。また、より大きなブランドを築き上げるための新店舗の開設などにも投資し、過去2年間のどのシーズンよりも多くの人々が旅行することを考えているという事実を活かそうとしている。

「狂騒の20年代2.0」が来るか

女優のシェイ・ミッチェル氏が創設した旅行かばんブランドのベイス(Béis)のプレジデントを務めるアデル・フセイン・ジョンソン氏は、次のように米モダンリテールに語った。「今年の夏は極めて大きなシーズンになると感じていた。当社は去年のホリデーシーズンにこれが起きるだろうと考えていたし、実際に多少の増加は見られたが、今年は『狂騒の20年代2.0』とでも呼ぶべきシーズンになるだろう」。

ジョンソン氏は米モダンリテールに、ベイスではキャリーバッグの売上を旅行の先行指標と見なしており、ベイスのキャリーバッグの売上高は1月から180%も増加し、昨年5月との比較では539%も増加したと語った。

ジョンソン氏にとってこれは、ウィークエンダーバッグのようなベイスのベストセラー商品の売れ行きが急上昇していることに加え、人々が旅行に出かけるのに備えて主な旅行用品を買い揃えたり、買い替えていることを示している。

ジョンソン氏は次のように述べている。「人々がはるかに多く移動するようになり、これまでしばらくのあいだ人々の姿が見られなかったような場所に、多くの人々がおもむくようになっている」。

この夏が旅行業界にとって大きなシーズンとなるだろうという期待から、ベイスはバックパッククーラーなど、ビーチで使うよう設計された用具を含み、シトロン色などの明るい色を採用した、新しい夏用のコレクションを発売した。ジョンソン氏はこの商品や、ほかの季節コレクションを、同社が「人々がベイスに戻ってくる理由を段階的に作り上げる」方法だとしている。しかし、ベイスのキャリーバッグやウィークエンダーバッグなどの中核品目のプロモートは、夏にも引き続き重視していくと、同氏は付け加えている。

また同社は、ロサンゼルスのザ・グローブ(The Grove)で同社初のポップアップ店舗を、6月19日まで営業している。

ジョンソン氏は次のように述べている。「ポップアップ店舗を開設した大きな理由は、ブランドへの認知を広めることと、顧客とかかわりあうことだ。当社はこれによって大きな収益を得られることを期待していない」。

米国とオーストラリアで異なる戦略

ジュライは2019年にオーストラリアで創設された旅行かばんブランドだが、最近になって米国に事業を展開し、人々が以前のように盛んに旅行に出るようになってきた状況で、母国におけるブランドへの認知を広めるため、店舗を重視している。同社は現在オーストラリアに2つの店舗があり、9月には3つ目の店舗を開設する予定だ。

オーストラリアの店舗に加えて、同社は依然として、両方の市場においてブランドへの認知を広めるためデジタル広告を主に使用していると、共同創設者のリチャード・リー氏は語っている。しかし同氏は、ジュライ(この社名は、オーストラリア人がもっとも多く旅行するのが7月であることに由来している)は米国において、オーストラリアとは多少異なる方針で操業すると述べている。オーストラリアにおいては、同社の広告は憧れを特に重視し、ジュライのスーツケースを手に素敵な旅行先に向かう人々を描いた広告素材を用いていると同氏は語っている。

オーストラリアでは米国と比べて旅行の制限がはるかに厳しく、また長く続いた。同国は2月21日になってようやく、ワクチン接種を完了した旅行者の入国を許可するようになった。オーストラリアにおけるジュライのメッセージは、人々が家を飛び出して「旅行を今すぐ予約する」よう呼びかけることを中心にしていると、リー氏は述べている。

一方で米国においては、同社はジュライとほかの実績のある旅行かばんブランドとの違いを強調することに大きく注力していると、同氏は述べている。具体的には、ジュライの品揃えはいくつかの競合他社よりも多く、キャリーバッグに加えてトートバッグやバックパックも販売しているということだ。そして、ジュライもまたベイスと同様に、人々が再び旅行への熱意を持つよう、季節のコレクションをリリースしようとしている。たとえば、同社のサイトで6月初旬に発表された、限定版のマゼンタ色のコレクションだ。

逆風のなかでも規模拡大を進める

しかし、旅行のブームがやってきたとしても、D2Cブランドが直面しているほかの逆風の影響を旅行ブランドが受けないわけではない。ジョンソン氏は、今年のベイスがもっとも重視するのは、同社がひとつのマーケティングチャネルに依存しすぎないようにすることだと語る。特に、iOS14が昨年展開されたことを考えれば、この点は重要だ。同社ははじめてのポップアップ店舗に加えて、ロサンゼルスではじめての看板広告をテストし、ポッドキャストやダイレクトメールの可能性も探求している。

「当社は、これらの経路のいくつかを確実にテストして学びを得られるように、多くのリソースと時間を割いている」と同氏は語る。ジョンソン氏とリー氏はいずれも、供給に関する困難が続くなかで十分な商品の在庫を確保することが、もうひとつの悩みの種だと語っている。

しかし、このような困難な課題にもかかわらず、これらのブランドは規模の拡大を進めている。たとえばリー氏は、ジュライの従業員数は現在25人だが、さらに10人を増やすことをめざすと述べている。

「Covidが旅行やホスピタリティ業界に与えた損害は甚大だったが、当社は同時に多くの機会も見いだしている」とリー氏は述べている。

[原文:DTC Briefing: For travel brands, this summer finally feels like the ‘Roaring 20s’]

Anna Hensel(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:黒田千聖)
Image via Béis

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