パブリッシャー5社に聞く、 ChatGPT による記事制作の透明性:「ガイドラインを設けるかどうか」

DIGIDAY

いとも簡単にアクセスして使用できるChatGPT。ライターたちが「制作指示をChatGPTに入力して記事を生成し、できたものを編集者に提出する」ことを阻むものはあるだろうか。

この質問をパブリッシャー5社の編集チームの責任者にぶつけてみたところ、返ってきた答えはシンプルに「ない」だった。

バッスル・デジタル・グループ(Bustle Digital Group)、米ギズモード、フォーブス(Forbes)、ハンカー(Hunker)、トラステッド・メディア・ブランズ(Trusted Media Brands、以下TMB)の編集者やコンテンツ責任者たちは、ChatGPTでの記事生成の禁止をライターに明確に伝えていないという。また、ChatGPTが公開されて以降にライターたちとのフリーランス契約の内容を改めることもしていない。

少なくとも、現時点では。

AIの使用にガイドランスは必要か

「いい質問だ」とTMBの最高コンテンツ責任者ベス・トムキュー氏は返した。「あまりにも新しすぎるものだ。たしかに、すべての契約に入れておくべき条件だ。制作工程のなかで盗用のチェックは行っているが、こちらから明確に方針を示さない限り、その扱いは一層混迷するだろう」。

フリーランスライター・編集者のジル・シルドハウス氏は、取引先のパブリッシャーからChatGPTに関する連絡は何も来ていないと話す。このため、AI生成コンテンツに関する各社の方針については不明なままだ(ただし、ChatGPTを最近試してみた印象はあまりよくなかったそうだ)。

シルドハウス氏は次のように語った。「どの取引先についても、AIコンテンツに対する姿勢がわからない。フリーランスがAIコンテンツを納品していないとどう判別できるのか。盗用の心配はないのか。ほかにどのような倫理的問題があるのか。社内的にも委託先のフリーランスに対しても、AI使用に関して何らかのガイドラインが必要だ」。

また別のフリーランスライター・編集者のアレサンドラ・デュビン氏は、約15社の取引先のうちChatGPTに関する連絡があったのは1社のみだと話した。それがどのパブリッシャーであったのかは教えてもらえなかったが、同氏によると「寄稿には一切AIを使用してはならないという明確な規定変更」が伝えられたという。

「盗用に関する疑問や、寄稿先各社との契約の下で自分に何が期待されているのかという疑問に対し、答えのない、あるいは私にはわからない疑問がたくさんある」とデュビン氏は話す。「パブリッシャーは必ずガイドラインを設けるべきであり、ライター側も安易な道に進む前にじっくり深く考えることが必要だ。記事に大きな間違いが紛れ込んだ瞬間、読者を失うことになるし、そのパブリッシャーでは二度と仕事ができなくなるだろう」。

そもそもテクノロジーはそこまで達しているのか

記事作成にChatGPTを使用しているフリーランスライターがいるのならば、彼らは自ら自分の首を絞めている可能性がある。

「ChatGPTを使用していることがわかったら、そのライターを雇う必要はない。自分で直接ChatGPTを使えばいいのだから」と話すのは、G/Oメディア(G/O Media)傘下の技術系サイト「ギズモード」の編集長を務めるデビッド・エワルト氏だ。「こちらはChatGPTを使ってもらうために金を出しているわけではない」。

テクノロジーと製品に投資するナイト財団(Knight Foundation)のジャーナリズム担当取締役であるマーク・ラバリー氏は、執筆のほとんどをAIに任せてはならない、と同意する。技術的に未熟であるため、AIを使用するライターが使い物にならないように見える可能性があるという。

ラバリー氏は「機械に作業のほとんどをやらせたのであれば、それは申告したほうがいいだろう。そうしたならば、いったいお前は何をしていたのか、という話になる」と述べた。

その一方で、フォーブスの最高コンテンツ責任者ランダル・レイン氏とリーフ・グループ(Leaf Group)のハンカーでシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーを務めるイブ・エプスタイン氏は、ChatGPT使用に関するガイドラインを設けるには時期尚早だと口をそろえる。編集者に提出できるだけの記事を生成できるまでに技術が進んでいない段階ではなおさらだ、という。

とはいうものの、エプスタイン氏は編集チームの責任者に対し、スタッフやフリーランスのライターたちにベストプラクティスをどう伝えていけばよいかは考えたほうがいいとし、「これを考えないのは無責任だと思う」と話した。

ラバリー氏も「ベストプラクティスは、数多くの実行を通して生まれるものだ」といい、「今は組織にとって何がベストプラクティスなのかを理解するため、実行を進めるべきときだ」と付け加えた。

編集局におけるAIの倫理

結局のところ、重要なのはライターと編集者間の透明性だ。ChatGPTが登場したからといってそれは変わらない。

「フリーランスのライターに対して求められることは明確ではないだろうか。納品物は自分のオリジナル記事であること。それはこれまでとあまり変わらないと思う」とレンフェスト・ジャーナリズム研究所(Lenfest Institute for Journalism)の編集・広報責任者ジョセフ・リクターマン氏はメールで語った。

だが、ラバリー氏によればChatGPTの使用の程度はさまざまだという。たとえば見出しの生成に使うのと記事の骨格の生成に使うのとでは別物だ。そこで問題となるのが、フリーランスのライターにとってどの程度までなら使用可能で、どこからが行き過ぎになるのか、ということである。同氏は「今も難しいが、境界線を引くことこそ、今後はもっと難しくなっていく」と話す。

ポインター・インスティテュート(The Poynter Institute)のメディアワイズ(MediaWise)で責任者を務めるアレックス・マハデヴァン氏は、新技術に伴って現れる「グレーゾーン」は懸念すべきものだ、と語った。

「ジャーナリズムと読者に対する透明性という世界に、グレーゾーンがあるべきではない。ニュースの情報収集の仕組みは極めて明確な必要がある。何でもありになる前に、まずは編集局におけるAIの倫理について、しっかり整理すべきだ」。

[原文:How will ChatGPT change freelancing? 5 publishers weigh in

Sara Guaglione(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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