インスタグラムがショッピング機能を縮小へ:それでも傾注し続けるブランドたち

DIGIDAY

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9月6日、インスタグラムがショッピング機能を縮小するとというニュースが表面化した。同アプリはコマースに多額の投資を行っているが、一部のブランドはこの後退にショックを受けなかった。

ソーシャルメディアが果たしてきた役割

インスタグラムは、長年にわたってさまざまなショッピング機能をテストしてきた。2016年には、ブランドが投稿内で商品にタグ付けできる機能をシンプルに提供しはじめた。2019年には、インスタグラムのアプリを離れることなく商品を購入できるインスタグラムチェックアウト(Instagram Checkout)を発表した。そして2020年には、インスタグラムのエクスプローラーページ内から買い物ができるインスタグラムショップス(Instagram Shops)の新バージョンを発表した。しかし、テック系ニュースサイトのジ・インフォメーション(The Information)によると、インスタグラムは現在、ショッピングへの取り組みを縮小しているという。カスタマイズや複雑さを抑えたシンプルなショッピングタブ、タブライト(Tab Lite)を今後数カ月のうちにテストする予定だという。

コマースをテストしているソーシャルメディアアプリのなかでも、インスタグラムはブランドのあいだでもっとも人気の高いアプリのひとつだった。米モダンリテールの最近の調査によると、インスタグラムのショッピング機能は、調査対象となったブランドにもっとも広く利用されていた。それでも、米モダンリテールの取材に応じた2社は、コマースへの投資はあっても、売上の原動力として頼ることはほとんどなかったと述べた。

インスタグラムの広報担当者は、「我々は、少数のユーザーを対象に、アプリの下部にあるメインナビゲーションバーに加えたいくつかの変更をテストしている」といい、今回の情報の変更を重要視していない。さらに、広報担当者は、「我々は、インスタグラムを、人々が大好きなブランドやクリエイターの商品を発見して購入するための最高の場所にする、という目標に向け、今後も取り組んでいく」と付け加えた。

収益のためのチャネルではない

第2四半期に減収となった親会社のメタ(Meta)は、オンラインショッピングから撤退するという決断によって厳しい局面に立たされた。

ハンドバッグブランドのダグネドーバー(Dagne Dover)では、インスタグラム経由の売上の割合が、全体売上の1ケタ台前半から中盤を占めている。同社は2020年9月、インスタグラムチェックアウトを通じて商品の販売を開始した。

「インスタグラムショッピングは、我々にとって決して好転要素であるとは言えないので、彼らが規模を縮小したことに、実は驚いていない」と、創業者で最高執行責任者のディーパ・ガンジー氏は米モダンリテールに明かした。「当社のほかの収益チャネルに比べればまだ小さいが、当社の収益に最大の影響を与えたのは、彼らがプロモーションキャンペーンを実施した時だ」という。

インスタグラムはこれまでにも、新規顧客の獲得をめざし、インスタグラムショップスで商品を購入したユーザーに、20ドルの割引を提供するプロモーションを実施したことがある。「その期間に売上が上昇することもあったが、これが我々にとって意味のある収益チャネルであるとは決して言ったことはなかった」と、ガンジー氏は付け加えた。

アイウェアのD2Cブランドであるアイバイダイレクト(Eyebuydirect)も、インスタグラムの売上は全体の売上のうちの重要な部分を占めてはいないという。アイバイダイレクトのブランドディレクターであるジム・マーク氏は、「我々の場合、インスタグラムの売上が全体の売上に占める割合は大きくはない。しかし、ブランドの認知度向上には役立っている。インスタグラムのプラットフォーム上で、ブランドのショップや商品、プロモーションの露出が増えたことを実感している」と話した。

マーク氏は、アイバイダイレクトのインスタグラムショップは、ユーザーをウェブサイトへと誘導するが、そうした余分なクリックは必ずしも売上コンバージョンに結びつかないという。「しかし、我々の顧客の多くは、我々が発表する多くの新しいコレクションについて知っている。また、人々がアイウェアを使ってどのように自分の個性を表現しているかを知っている」と、Merk氏は付け加えました。

それでもソーシャルメディアに注力する理由

インスタグラムのコマースへの野望をめぐる最大の疑問は、人々が本当にアプリ内で商品を購入したいのかということだった。広告代理店大手のピュブリシス(Publicis)社でチーフコマースオフィサーを務めるジェイソン・ゴールドバーグ氏は、同社が2020年にショッピング専用タブを初めて公開した際、米モダンリテールに対し、「インスタグラムは、あなたがすでに自覚しているニーズを満たすことよりも、あなたが必要としていることに気づいていなかった商品を発見することを目的としている」と話していた。

実際、ガンジー氏によると、この動きは、ほとんどの人がブランドや製品を発見するためにインスタグラムを利用しており、必ずしも取引をするためではないことを浮き彫りにしている。同氏の経験では、人々はブランドをさらに詳しく調べたり、購入するために、小売業者のウェブサイトに直接アクセスすることを好む。

ダグネドーバーは、それでもなお、ソーシャルチャネルに依存し続けている。たとえそれが絶えず変更を加え、ユーザーと関わる新しい方法をテストすることを意味するとしてもだ。「ソーシャルプラットフォームを活用する方法は、特に個人情報保護法の観点から進化しているが、それでも我々のマーケティングミックス全体において、非常に重要な要素となっている」とガンジーは語った。「我々のブランドを示し、顧客とつながるための素晴らしい方法だ」。

「我々は、特定のプラットフォームにどのように傾注し、ほかのプラットフォームからどのように撤退するかを確認するために、多くのテストを行っている。2022年初頭には、TikTok(ティックトック)のような新しいプラットフォームに注力することを決めたので、Facebook(フェイスブック)とインスタグラムの費用をゼロにしないまでも、かなり削減した」とガンジー氏は話した。ダグネドーバーは、「アッパーファネルへのブランドリーチ」と、「インフルエンサー、他ブランド、著名なクリエイターと提携し、新しい潜在顧客に自分たちの存在をアピールする方法」に大きな焦点を当てる予定だ。

アイバイダイレクトのマーク氏も、ガンジー氏の意見に同調した。

「ソーシャルメディアが我々の成功にプラスの影響を与えていることに疑問の余地はない。我々は、ソーシャルファブリックの一部となるために、TikTokのようなチャネルを常に追加している。これは、我々のブランド戦略の中核をなすものだ」。

[原文:Why brands aren’t surprised about Instagram’s commerce about-face]

著者:VIDHI CHOUDHARY(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

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