Twitchと TikTok でエンゲージメント構築を図るバイス・ニュース:収益化の検討もスタート

DIGIDAY

ニュースパブリッシャーのバイス・ニュース(Vice News)でグローバルニュース担当シニアバイスプレジデント兼グローバル編集長を務めるケイティ・ドラモンド氏によると、同社はTikTok、Twitch、インスタグラムを中心にしたSNS事業を拡大し、信頼関係の構築と18歳から35歳までの「コアオーディエンス」増加に取り組んでいるという。

1カ月ほど前の2022年8月、バイス・ニュースはTwitchでライブストリーミング配信を開始した。ドラモンド氏は9月20日、フロリダ州キー・ビスケーンで開催されたDIGIDAY PUBLISHING SUMMIT(以下DPS)で、「『Twitchはビデオゲームのプラットフォームであり、ターゲットは10代の少年たちだ。なぜ今Twitchなのか?』と多くの人たちから不思議がられた。私にしてみれば『10代の少年たち?素晴らしい!』。
というのも、彼らにこそ、私たちのニュースを読んでもらいたいからだ」と話している。

TwitchはTikTokとインスタグラムとともに、「トラクションも成長も見込める。オーディエンスの増加が楽しみだ」とドランド氏。

Twitchがパブリッシャーの新たな選択肢に

Twitchを構成するオーディエンスの多くはビデオゲームストリーマーのため、ニュースパブリッシャーの選択肢としては考えにくい。しかし今、たとえばリカウント(The Recount)のようなニュース企業がTwitchでニュース番組のライブストリーミング配信を試している。

「Twitchには、どこをとっても理想的なインタラクティブ環境がある」とドランド氏はDPS参加者に話した。「私たちは今、バイス・ニュースのホストやモデレーターがその(Twitchの)チャットでやりとりができて、サポート力とエンゲージメント力のあるコミュニティの発展に力を入れている」。

ドランド氏の話では、現在バイス・ニュースでは、週に2回、Twitchで2時間から3時間のライブストリーミングを配信しているという。バイス・ニュースには世界中に現地リポーターがいるが、ライブストリーミング配信時には、彼らが直接視聴者と対話する場面もよく見られる。その一方で、Twitchのチャットをチェックするフルタイムのモデレーターもいるので、会話の質は保たれる。スパムや悪意のあるコメントを投稿した人がいれば、追い出すのが彼らの仕事だと同氏は説明する。

これまでのところ、バイス・ニュースで最も高い数字を出したTwitchストリーミングでは、約40万人が視聴している。最新のストリーミングは視聴者が11万人だった。

「Twitchからは、このプラットフォームは徐々に盛り上がるタイプだとアドバイスをもらっている。登録者数が一晩で一気にゼロから100万に激増するのを期待しても、それは間違いだと。Twitchでコミュニティを大きく育てるにはたっぷり時間がかかる」とドラモンド氏。

TikTokで現場レポートを視聴者に届ける

一方、ウクライナの武力衝突勃発時、バイス・ニュースでは一般ユーザーが生成したコンテンツ(UGC)をTikTokで発信しないことに決めた。こうした動画は信ぴょう性を確認するのが難しく、時間もかかるからだ。

その代わり、キーフとモスクワのジャーナリストから送られるニュースを直接配信した。これは、世界のさまざまな場所で育った、もしくは、生活しているジャーナリストを雇い、出来事が起きている現地からニュースを届けるというバイス・ニュースの戦略の一環だ。「ニュースの視点やニュアンス、ニュースが伝える専門知識は、私たちにとって攻防をガラリと変えるゲームチェンジャーのようなものだ。ロサンゼルスやブルックリンで人材を雇いすぎていなくてよかったとホッとしている」とドラモンド氏はイベントで語った。

そのときのニュースは2週間にわたりTikTokで配信し、実に約2億4000万人が視聴したとドラモンド氏。これは、たとえ「インターネットでは誤情報が飛び交っていた」時期だとしても、バイス・ニュースの現場レポートが視聴者に届いている証拠だとかみしめるように話した。

「その瞬間から、バイス・ニュースはTikTok重視に変わった。わたしたちのニュースを流すのなら、オーディエンスファースト、ジャーナリストファーストのプラットフォームでなければ……TikTokが提供してくれるのは、ニュースをその場で体験し、生で伝えているジャーナリスト本人に、オーディエンスが直接、しかもすぐさまつながることができる手段なのだ。余分なものはいらない、直球だ」。

インスタグラムの役割を再検討

とはいえ、インスタグラムでバイス・ニュースを視聴するオーディエンスからは、同じような関心やエンゲージメントを確認できないとドラモンド氏は話す。その結果、2023年のオーディエンス開発戦略では、インスタグラムの役割を再検討しなければならなくなったという。バイス・ニュースでは現在、速報を流す場合、ほぼインスタグラムを利用している。

難しいのは、TikTokとTwitchは収益化できるプラットフォームではないという点だ。そのため、このふたつのプラットフォームでは動画を流してもバイス・ニュースの収益にはつながらない――今のところは。

「私の役割は、こうした緊張感漂うストーリーをこの新たなプラットフォームを通しオーディエンスに伝え、信頼関係を構築し、Twitchユーザーにバイス・メディアを知ってもらうこと。しかし、『コルゲート・パルモリーブ社の提供でお届けします』となると――いやいや、それだけはやりたくない。まだ早い。まだそのレベルまで達していないのだ。まずはコミュニティを構築して、信頼を勝ち取らなければいけない。収益化の話を始めるのはそのあとだ」とドラモンド氏は力説する。

同氏はそう言いながらも、TikTokの収益化は2022年末を目処に、また、Twitchの収益化は今後6カ月から9カ月のうちに検討を始めるだろう、と明かしている。

[原文:Vice News looks to Twitch, TikTok to develop audience trust and engagement

Sara Guaglione(翻訳:SI Japan、編集:黒田千聖)

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