ブランド認知を目的とした、 TikTok インフルエンサーの戦略的な選び方とは?:ユニリーバが立ち上げた発酵スキンケアのファーヴァーの事例

DIGIDAY

ターゲット(Target)独占販売の新しいスキンケアブランドを立ち上げるために、ユニリーバの社内インキュベーター、ジ・アンカバリー(The Uncovery)が利用したのはインフルエンサーの興味深い組み合わせだった。そのブランド、ファーヴァー(Ferver)はこの数年増加しているカテゴリーである発酵スキンケアにフォーカスしている。この傾向について、私は2020年コヴトゥール(Coveteur)で取り上げた

発酵を活用したスキンケアブランドの増加

「スキンケアにおける発酵はとてもエキサイティングで有望だ。科学技術を使用して、スキンケア成分の標準的な抽出過程でありがちな望ましくない副生成物を出すことなく、もっと緻密で有効な成分を生産することができる」と、TikTokでは @dermguru として知られているリンジー・ズブリツキー医師は述べている。45.5万人のフォロワーを持つ同医師は、ローンチのためにファーヴァーが起用した有料パートナーでもある。「スケーラブルなテクノロジーにより、発酵成分と発酵製品が安全かつ効率的に消費者に届けられるようになった。発酵の過程で分子を小さくすることによって成分は深く皮膚に浸透して効果が現れる」と同医師は述べており、また、ファーヴァーがスポンサーであるTikTok投稿でそのようなメリットを説明している。

前述の2020年のコヴトュールの記事で取り上げた製品には、ヴィントナーズ・ドーター(Vintner’s Daughter)の225ドル(約2.8万円)のアクティブ・トリートメント・エッセンス(Active Treatment Essence)、バイオフィル(Biophile)の148ドル(約1.9万円)のバイオシュルーム・リジュビネーティング・セラム(Bio-Shroom Rejuvenating Serum)がある。記事の製品リストの中でもっとも安価な製品は、ソコグラム(Sokoglam)のグッド・スキン・デイズ・オン・ブライト・サイド・モイスチャライザー(Good Skin Days On the Bright Side Moisturizer)で24ドル(約3000円)だった。

発酵製品が受け入れられつつある米国でファーヴァーのローンチ

ファーヴァーは2月、15〜21ドル(約1900〜2700円)の価格帯の10製品で静かにローンチした。製品には、バームクレンザー、ミルククレンザー、アイクリーム、デイナイトクリーム、美容液3点、マスクが含まれている。

ジ・アンカバリーのCMO、ローラ・フルートマン氏は次のように述べている。「(発酵スキンケアの)トレンドはとても高い価格の小規模なブランドによって始まり、注目されるようになった。以前はコンブチャ(日本でいう紅茶キノコのような発酵ドリンク)やキムチが何だか知られていなかったが、今ではどこでも買えるようになっており、このトレンドが認識されつつある。特にターゲットで取り扱われているブランドとして今こそ我が社が参入すべき時だ。食品とスキンケア双方の観点から、ほかのブランドらが発酵が何か、そしてそれが良い理由が理解されるための基礎を築いてくれた」。

ファーヴァーは、発酵科学、「クリーン」ビューティ分野におけるターゲットの強力なポジション、そして楽しく魅力的なブランディングとパッケージングのバランスをとろうと努めた。

フルートマン氏によるとファーヴァーのターゲットは20〜40歳の消費者だという。「だが、最大の点はスキンケア製品に効果を求めていて、成分についても認識している人たち向けだということ。ナチュラルでいたいと思い、クリーンな成分を望んでいるけれど、『自分にも同じような効果があるのだろうか、自分が望む効果を出してくれるのだろうか』と少し警戒していて、(効果のために成分を、成分のために効果を)犠牲にはしたくないと思っている消費者もいる」。

ブランド認知のために複数のTikTokインフルエンサーを起用

ファーヴァーは、狙うオーディエンスにリーチするため3人の「主力」インフルエンサーと、ローンチのサポートのためのマイクロインフルエンサーらを選択した。「主力」は、皮膚科医のズブリツキー医師、インターネットパーソナリティのリッキー・トンプソン氏(TikTokフォロワー300万人)、ビューティインフルエンサーのエイミー・チャン氏(別名@Bondenavant、TikTokフォロワーは130万人)だ。インフルエンサーらはビューティからライフスタイルまで異なるカテゴリーを代表しており、それぞれのユニークなオーディエンスに向けてブランド認知度を高めるために選ばれた。

キャンペーンに参加したマイクロインフルエンサーには、コートニー・クルーズ氏(TikTokフォロワー約1.5万人)、ヴェロニカ・オースティン氏(@itsveronicaaustin、TikTokフォロワー10万人)、アヘム・バーカトゥラ氏(@arhemba、TikTokフォロワー6.5万人)らがいる。

ローンチに関してTikTokはフォーカスのひとつであったが、インフルエンサーたちはインスタグラム、インスタグラムストーリーズ、リールにも投稿している。

手軽な価格の発酵スキンケア製品が魅力

トンプソン氏はこのなかで最大のインフルエンサーであり、同氏のファーヴァーのローンチキャンペーンに向けたコンテンツはまだ展開中だ。キャンペーンは3月上旬に始まっている。ファーヴァーが採用した広報会社、エデルマン(Edelman)のシニアアカウントエグゼクティブ、サミー・ガック氏は次のように述べている。「注目されてはすぐにしぼんでしまうキャンペーンを多く見てきたので、TikTokでうまく機能するのは何か、TikTokで目立つ方法について多く調査した。アイコニックなコンテンツを持つクリエイターとの提携を望んだ。リッキー(・トンプソン氏)の発言はどれも引用に値するものだ」。トンプソン氏は、ファーヴァーの「ファーヴェイシャス(fervacious、ファーヴァー製品を使って良い気分になるの意)」という造語が示す、顧客がスキンケア目標を達成したときに感じる感情をコンセプトにした動画を制作する予定だ。これはこの数週間のうちに公開されるという。その後にほかの提携インフルエンサーがその音声が利用することになっているが、ファーヴァーは最終的には一般の人々にも使われるようになることを望んでいる。

@rickeythompson #ad I am LIVING for fermented skincare from @ferverskincare 👑#ferverpartner #targetstyle #fermentedskincare ♬ original sound – Rickey Thompson

「消費者から科学が求められているのを理解しているので皮膚科医を起用したが、同時に楽しいものにもしたかった。対象オーディエンスがいて、彼らに誠実に語りかけているインフルエンサーらを選びたかった」とフルートマン氏。

チャン氏はブランドの価格に惹かれたという。「発酵はスキンケアの世界では目新しいものではない。アモーレパシフィック(Amore Pacific)やSKⅡのようなアジアのラグジュアリースキンケアブランドは製品に発酵を利用しているが、それは成分が生物学的に利用できるようになり、より深く肌に浸透して効果があるからだ。だが、ファーヴァーは発酵を利用して、かつ購入しやすくした最初のブランドのひとつだ」と述べている。

ファーヴァーのチームは、効果的なブランドのローンチには憧れの小売パートナーとの提携と素晴らしいデザインのパッケージだけでは不十分であることを理解していた。戦略的に選んだインフルエンサーパートナーとの強力なソーシャル戦略も必要だったのだ。

フルートマン氏は次のように述べている。「以前はTikTok戦略が必要かどうかがポイントだったが、今ではどんなTikTok戦略を立てるかが焦点になっている。TikTokが、消費者が商品を探したり購入している場所になっているからだ。なので、消費者が関与して情報を得ている場所で、彼らに確実にアピールできる方法を選ばなければ」。

[原文:‘Trend awareness’: How Unilever-incubated Ferver is using TikTok influencers to explain its emerging concept

SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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