TikTok はハメをはずし、リールは美学を優先。ブランドはそのバランスを見極めている:【ビューティブリーフィング】

DIGIDAY

今回のビューティ&ウェルネス・ブリーフィングでは、TikTokとインスタグラムのリールでは、ブランドの戦略がどのように異なるのかに目を向ける。

TikTokに対抗してリールがインスタグラムのユーザーのフィードを占拠しているが、ふたつの異なるプラットフォームで動画に対する軸をどのように調整していくか、ブランドはうまくそのバランスを取ろうとしている。

リールが2022年のインスタグラム最大の焦点に

12月にインスタグラムの責任者であるアダム・モッセーリ氏が、リールは2022年のインスタグラムの最大の焦点になるだろうと発表した後、ブランドは自社コンテンツをそれに適応させていくしかなかった。TikTokで確固たる計画が整っているブランドは短い動画を作るのに優位であり、それをリールに再利用することも多い。しかしブランドは、TikTokとリールはどちらもフォーマットやオーディエンスという点で独特の性質があることに気づいている。

「インスタグラムは全体的に、とにかくソーシャルメディアチャネルのスイスアーミーナイフのような万能の存在になろうとしており、現在リールがその主要な分岐点となっている。明らかにそれを推進しようとしている」と指摘したのは、トゥルーリー・ビューティ(Truly Beauty)のソーシャルメディアマネージャー、タイラー・ムーア氏だ。このボディケアブランドは、TikTokで100万人以上のフォロワーを獲得した最初のビューティブランドのひとつだが、いまもそのソーシャル戦略はインスタグラム優先だと考えている。インスタグラムはいまもトゥルーリーの「最大のコミュニティ」であり、もっとも多く投稿している場所だとムーア氏は言う。また、収益を上げるためのブランド最大のソーシャルプラットフォームでもあるという。

昨年、トゥルーリー・ビューティはインスタグラムのコンテンツをリールに特化したものへとシフトした。当初は1日2枚の写真と1本の動画を投稿するコンテンツ計画だったが、動画2本と写真1枚に軌道修正を行っている。

リールを二次的なプラットフォームとみなすブランドも

「インスタグラムが実際に後押ししているので、リールに載せるのはすばらしいタイミングだ。ブランドはそれを実現したいと思っている」と話すのは、広告会社ムーバーズ+シェイカーズ(Movers + Shakers)のCEOエヴァン・ホロウィッツ氏だ。同社はE.l.f.やNYXプロフェッショナルメイクアップ(NYX Professional Makeup)といったブランドのTikTokでのバイラルキャンペーンを手がけている。「いまは間違いなくブランドにとっては楽勝だが、長続きはしないだろう」。

ムーバーズ+シェイカーズでは、現在リール優先の短い動画キャンペーンは制作していないが、その代わりにTikTokのコンテンツを制作してリールに再利用することを選択している。

ホロウィッツ氏は「我々は明らかにリールを二次的なプラットフォームとみなしている」と言う。同エージェンシーではリールは「TikTokで行っていることをさらに有効活用する」ための方法と捉えている。

「(リールは)我々やクライアントがリール第一の仕事を多く優先させるのに十分な状態にはまだなっていない」と彼は言う。

TikTokとリールの重要な違い

リール上のコンテンツは依然として、多くのTikTokerが拒否している洗練された「インスタグラムの美学」をキープしているため、ブランドは両プラットフォームの重要な違いに気づいている。

「TikTokでは、完全にハメを外すことができる」とムーア氏は指摘し、女の子が彼氏の胸毛を剃る動画など、奇抜なスキット(寸劇)の動画がそのプラットフォームではうまくいく傾向があると述べた。TikTokのオーディエンス向けに作成されたトゥルーリー・ビューティの動画は、笑える寸劇や「カオス」なシーンに焦点を当てていると彼は言う。「TikTokではかなりうまくいったのでインスタグラムにそれを持ち込むということもあるが、インスタグラムのオーディエンスはそうしたコンテンツをそれほど好まない」。

これはオーディエンスの年齢差にも起因している。リールを利用するミレニアル世代は「ソーシャルメディアのコンテンツやその背後にあるメッセージに対してもう少し真剣だ」とムーア氏は説明した。「Z世代はやや遊び心があり、ジョークを理解する」。フォレスター(Forrester)のデータによると、Z世代のティーンはインスタグラムを使うよりも、TikTokを毎週頻繁に使っている。トゥルーリーでは、リールを意識してさまざまなタイプのコンテンツを作り始めた。ムーア氏によると、そうしたリールの動画は「もう少し洗練されていて」「寸劇のようなものではなく、視覚的に非常に魅力のあるもの」だ。

「美的センスに関しては超一流でありたい」と彼は述べた。

広告に関してはインスタグラムが有利か

リールは「あるものはまさにローファイなTikTokという感じで、いまだに少し違和感がある。TikTokはかなりトレンドやサウンドを重視している」とホロウィッツ氏は指摘している。一方、リールに特化した動画は、視覚に訴えるスライドショーやライフスタイルのショットなど、「美的感覚を重視したコンテンツ」で構成されていることが多い。

ムーア氏によれば、トゥルーリーの投稿はTikTokではより多くのエンゲージメントが得られる傾向があるという。フートスイート(Hootsuite)がTikTokとリールに同じ動画を配置した実験でも、TikTokの動画の方がオーガニックビュー数がより高いという結果がみられた。

しかし広告に関しては、2021年6月にリール広告を世界的に展開したインスタグラムでブランドは優位に立つかもしれない。広告自動化会社クリエイトピー(Creatopy)による実験では、リールとTikTokの両方に投稿した同じ15秒の広告が、リールでは38万9000リーチ、TikTokでは19万9000リーチを獲得し、インスタグラムでのインプレッション数がほぼ3倍であることがわかった。CPM(インプレッション単価)はTikTokの4.38ドル(533円)に対し、リールの広告は1.67ドル(203円)と、結果的にかなり安くなっている。クリエイトピーのPPCスペシャリストであるシーラ・ボルショス氏によれば、異なる広告フォーマットがそれぞれのプラットフォームでよりよいパフォーマンスを発揮するかどうかを確認するために、同社ではさらに実験を行っているという。

それぞれのプラットフォームに合わせたコンテンツを

「両方のプラットフォームで広告を掲載することに決めたら、明らかにそれに応じてコンテンツの種類を調整すべきだ」とボルショス氏は主張した。「TikTokでは人間を中心に、より笑えるアプローチでなくてはならないし、動画の質は重視しなくてもよいが、内容に対しては注力する必要がある」。

リールには広告機能があるが、TikTokでブランドの大規模な知名度を獲得しているスポンサードのバイラルチャレンジはまだない。それはTikTokがより「参加型」であるのに対し、リールは「まだ見るためのもの」だからだと、ホロウィッツ氏は分析している。

ブランドは、マーケティングリソースをどこに費やすかを決定する際、それぞれの短編動画プラットフォームがどの方向に進むかをいまもまだ見きわめようとしている最中である。しかし、どちらのプラットフォームにも将来的には引き続き適用可能性があるだろうと考えている。

「インスタグラムはリールを成功させるだろう。なぜならビジネスの存続にとって重要であり、インスタグラムにはリソースがあるからだ」とホロウィッツ氏は述べている。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: TikTok and Reels have brands finding a balance between ‘unhinged’ and polished content]

LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida、編集:黒田千聖)

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