「消費者は、いま物流で何が起きているかを知っている」: GAP のグローバル調達担当SVP ケビン・クンツ氏

DIGIDAY

GAP(ギャップ)は、ホリデーシーズンに向けてオンライン調達と顧客サービスセンターに投資し、全国での労働力不足に対処するため自動化を取り入れつつある。

同社は、新戦略「パワープラン2023(PowerPlan 2023)」で意欲的な成長プランを制定した。GAPとバナナ・リパブリック(Banana Republic)の350店舗を閉鎖し、モールから離れて独自のeコマースを構築するほか、いくつかの目標をプランのなかで公開した。

eコマースビジネスを構築するため、GAPはまず自動化にさらに投資することにより、自社の顧客サービスと調達業務の高速化を目指している。同社は今年、アリゾナ州フェニックスとテキサス州ギャラティンにあるふたつのオンライン顧客サービスおよび物流センターに1億ドル(約111億円)を投資した。

GAPが注文処理を高速化するために投資したテクノロジーには、製品を適切なシュートに落とすコンベヤーシステムであるボンベイユニット・ソーター(Bombay Unit Sorters)や、各種商品を容器に仕分けするロボットアームのキンドレッド・オーブス(Kindred Orbs)などがある。

GAPは来年、オールド・ネイビー(Old Navy)をサポートするため、テキサス州ロングビューに新たに85万平方フィート(約7万9000平方メートル)の広さを持つeコマース用物流センターを構築するとともに、カリフォルニア州フレズノとニューヨーク州フィッシュキルにある既存の拠点を更新するため、さらなる投資を計画している。

米モダンリテールは、GAPのグローバル調達担当シニアバイスプレジデントであるケビン・クンツ氏と、ホリデーシーズンに向けた同社の物流への投資、および同社が作業員の不足に対処するためどのように自動化を取り入れつつあるのかについて話を聞いた。以下のインタビューは、簡潔で分かりやすくするため編集が加えられている。

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――御社は最近、フェニックスとテキサスの顧客サービスおよび物流センターを拡張するため1億ドルを投資したが、予算が最も集中的に投資されたのはどの部分か?

パワープラン2023の一部として、当社は顧客が望む場所で顧客と対面することを目指している。このために当社は総合的なネットワークに多くの投資を行い、過去5年間にオンライン容量を3倍以上に拡大した。

フェニックスには以前からオンライン施設があった。当社はこの施設を完全にモダン化して、ほかの拠点と同じ自動化をすべて導入し、当社の標準的なオンライン物流スイートのレベルに引き上げた。ボンベイユニット・ソーターを設置し、キンドレッド・オーブスも採用した。今年のホリデーに対応するため、ここでの処理能力を2倍以上に強化する。これらが重要な推進要因だ。すなわち、必要な生産量に追いつく十分な速度を実現し、顧客により迅速な配送の約束を行えるようにすることだ。

ギャラティンの小売施設をオンラインでの販売充足に対応できるように拡張したときは、さらにその数年前に行っていたいくつかの拡張のおかげで、古いピックモジュールをいくつか取り壊し、まったく新しいシステムにより毎日50万件の注文をオンラインで処理できるようになった。これにより当社は現在、140万平方フィート(約13万平方メートル)の小売センターの面積を小売とオンラインで共有している。

――御社の自動化への投資が実際にどのように役立ったか聞かせてほしい。これまでにどのような成果があり、次に何を計画しているか?

当社は、(プロセスを支援してくれる)長期的な戦略パートナーを選択するため、7年か8年前に早期決定をいくつか行った。その決定は実際に、我々にとって非常に重要なものだった。特にここ数年、サプライチェーンの停止や、材料の不足が発生したが、当社が材料を取り扱うベンダーとのあいだで長期的なパートナーシップを維持していたため、配送センターの運用をスケジュールどおりに予算内で続けることができた。

TGWは、当社の自動化ストレージおよび取得システムのすべてを運用しており、当社は現時点で、TGWの世界最大の顧客であると私は認識している。当社はTGWにとって重要であり、TGWも当社にとって重要なため、互いのためにたくさん働いて、すべての配送がスケジュールに従って行われるように努めている。当社のインバウンド側と補充の両方を支援しているため、TGWロジスティクス(TGW logistics)の存在は大きい。機械がカートンの送出や引き取りを行うため、フォークリフトのドライバーはそれほど多く必要としない。

当社は最近キンドレッド・オーブスを採用し、これによって大きな改良を実現した。従来ならすべてのステーションにひとりの要員を配置していたが、ひとりで4つのオーブをカバーできるようになり、これらの要員は基本的に分類が完了したオーブを取り外すだけだ。新技術を早期に採用し、それが非常に的確に動作するなら、その方法で多くの利益を得ることができる。

つい最近、当社はエクソテック(Exotec)、すなわち自動復帰ユニット処理という非常に有望な新技術を入手した。10月中に使用を開始する予定だ。この技術は、業界が経験してきたあらゆるオンラインの成長について、当社の助けとなるだろう。

――サプライチェーンの問題はますます多くの企業と産業に広がりつつあるが、消費者が調達とサプライチェーンのプロセスに関わることが増えたと感じるか? オンラインでの遅延に対応するため、消費者の期待するものや行動は変わってきているか?

消費者の知識が増えてきていると感じている。彼らは、物流で何が起きているかを知っているし、今日の世界が相互につながっていて、ひとつの国が中心ではないことを理解している。人々は忍耐強くなり、今までより多少前もって計画するようになっていると、私は考えている。

しかし、GAPの顧客にとって真に重要なのは、当社がオンラインの空間でより良いサービスを提供し、競争力を高めるために、非常に長い道のりを歩んできたことだ。このため当社はコロナ禍の最中でも、発注から顧客の自宅まで、商品を従来より迅速に配送できる。このような形で、当社が行ってきた投資は実を結んでいる。

当社のロイヤルティメンバーであれば、トップ階層として2~3日で配送する約束を行う。また第2階層でも注文した品物は5日以内に届けられる。これに対して、ほかの競合会社は遅延のため逆の方向に向かっている。

この状態をホリデーシーズンにも続けられるかというと、それはおそらく不可能だろう。当社は数多くの極めて重要な戦略パートナーに支えられており、これらのパートナーは当社のため優れた業務を行ってくれているが、ネットワークの総容量が問題になる。しかし当社は、(商品が)自社施設とネットワークで円滑に配送されるよう、最善の努力を行うため準備を整えている。

――GAPは今日の労働力不足によりどのような影響を受けたか? 自動化のため御社が行った投資は、現在とホリデーシーズンの両方について、需要に対応するため役立つと考えるか?

当社は、他社と同程度に的確な対応を行えていると考える。当社が現在運営しているすべての(顧客サービス)拠点では、時給が15ドル(約1660円)を大きく超え、勤務期間が長ければ20ドル(約2220円)以上の時給もある。そして、自動化は当社のため非常に役立っている。

ほんの一例だが、当社はキンドレッド・オーブスを採用する前は(ひとつのプロセスに)4人の人員を必要としていた。作業員4人を週に4シフトで働かせれば、実際には16人が必要となる。今日では同じ量の作業を、シフト全体にわたって4人でこなすことが可能だ。これらの利点は、当社の成長と生産量において極めて大きな役割を果たしている。

[原文:‘We’re delivering our products faster’: Gap’s svp of global logistics fulfillment on meeting demand]

Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via GAP

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