TikTok がビドコンを席巻。ビューティインフルエンサーの新たな一群を紹介

DIGIDAY

パンデミックから復活したビドコン(VidCon)は、美容系のYouTuberが少なく、TikTokerに重きを置くなど、インフルエンサー業界の変化を象徴していた。

6月末に開催された毎年アナハイムで行われる集会には、さまざまなプラットフォームやカテゴリーのインフルエンサー、ファン、業界関係者が集結した。ビドコンはもともとYouTube中心のイベントだったが、今年はTikTokが初のオフィシャルパートナーとなり、圧倒的な存在感を示したおかげで、スマホ用リングライトがVlog用カメラの数を上回っていた。このイベントでのビューティインフルエンサーの存在感に関していえば、「兼業」のTikTokスターがさらに増えており、それは本来の美容のYouTube世代のメンバーが減ったことを意味している。

ソーシャルメディアは本当に変わり始めている

ニキータ・ドラゴン氏をはじめとするタレントの代表を務めるスラッシュマネージメント(Slash Management)創業者ジェイク・ウェブ氏は次のように語る。「これまでは、ビューティクリエイターは明らかにビドコンのプログラミングとオーディエンスを強く支持していた。そして2022年には、個性的なクリエイター、コメディアン、ゲーマーをフィーチャーする方向へ転換していることに気づいた。ビューティクリエイターも確かに参加はしていたが、ほかの多くのジャンルが賑わっていたので、途方にくれている印象だった」。

とはいえ、ビューティインフルエンサーはこのイベントで確かに存在感があった。

「全体として、ビドコンは特に美容にフォーカスしているわけではないが、それはビューティクリエイターにとってメリットであり強みだと思う」と述べたのは、スキンフルエンサーのハイラム・ヤーブロ氏だ。彼は自身が創業したブランド、スキンケア・バイ・ハイラム(Skincare by Hyram)について語るパネルに参加した。「美容のYouTubeやTikTokで昨年1年間目にしてきたように、ソーシャルメディアは本当に変わり始めている」ため、「チュートリアルや情報量の多い動画」の消費が少なくなってきている、と彼は指摘する。「人々は視聴習慣を変えつつあり、より多様なコンテンツの流れを目にするだろうということに心底興味がある」。

ウェブ氏は「ビューティチュートリアルはもうダメだ。ビューティクリエイターは、チュートリアルのトレンドが一周して戻ってくるまで、そのことに適応しなくてはならない」と述べ、彼のクライアントであるドラゴン氏は10カ月間YouTubeのチュートリアルを投稿していないと指摘。しかし、ドラゴン氏はインスタグラム、Snapchat、TikTokでは活発に活動している。

注目は美容以外の投稿で有名なインフルエンサー

ビドコンで注目されたビューティコンテンツや美容ブランドと提携しているスターの多くは、TikTokで人気のチャーリー・ダミリオ氏、エリス・マイヤーズ氏、アンナ・シタール氏など、主に美容以外の投稿で知られている。

「最近、自分がどのカテゴリーに当てはまるのかについて考えている」と、TikTokインフルエンサーのライリー・フバトカ氏(フォロワー数860万人)は話す。彼女はアイシャ・ハルン氏(インスタグラムのフォロワー数33万3000人)やアランナイズド氏(フルネームはホセ・アラン・マシアス・ペレス氏、インスタグラムのフォロワー数85万3000人)とともに美容に特化した「ステート・オブ・グラマー(State of Glamour)」のパネルに参加した。フバトカ氏が大ブレイクを果たしたのは、彼女が自分の「見解」を話す動画がバイラルになり、TikTokで1カ月に約100万人のフォロワーを獲得した後のことだ。フバトカ氏によれば、現在、彼女のコンテンツの75%は美容やライフスタイルに焦点を当てたものだという。そんな彼女は、オリーブ&ジューン(Olive & June)とのネイルコラボもローンチしたばかりだ。「年齢を重ねていくにつれて、美容業界にさらにのめり込むようになり、さまざまなメイクアップブランドやテクニックを学ぶうちに、自分のコンテンツの多くが自然とその方向に変化していった」と彼女は述べた。

TikTokが優勢となり兼業インフルエンサーが増加

もともとビドコンはYouTuberが立ち上げたイベントで、YouTubeと提携して開催されていたが、特に美容専門ではないインフルエンサーが注目されたことは、今年のビドコンでTikTokが優勢であったことと重なっている。TikTokがスポンサーとなっていたあるパネルは「現代の兼業(Modern Multi-Hyphenates)」というものだが、これはTikTokのトップスターが、ビューティインフルエンサー、ダンサー、ファッション創業者、ポップスター、俳優などを同時にかけもちしていることが多いからだ。

TikTokがスポンサーとなっていたパネル「ビューティ・オン・バジェット(Beauty on a Budget)」に参加したTikTokスターのマケイラ・ディド氏(TikTokのフォロワー数110万人)は、「美容界で学んだりそこに貢献したりしている人には本当にさまざまな人がいる」と言う。そのパネルには、美容YouTuberのルーイ・カストロ氏が参加した一方で、ダンスやリップシンクの動画で知られるジャスミン・ゴンザレス氏(フォロワー数530万人)や、コミカルなキャラクターの「ローザ」で有名になったアダム・レイ氏(フォロワー数680万人)など、多様なコンテンツで有名なTikTokerで構成されていた。

ディド氏は、TikTokでかなりバイラルになった「I did it」という音声トラックで特に知られている。そのビューティパネルに加え、彼女は音楽に関するトークにも参加した。彼女はミュージシャンでもあり、美容以外にも歌やダンス、お笑いの動画を投稿している。

クリエイターにとって研究開発の場

しかし例年より少ないとはいえ、本来の美容YouTuberの存在感もいまだ健在だった。

ワン/サイズ(One/Size)の創業者で元祖美容YouTuberのパトリック・スター氏は、ビドコンは「元祖クリエイターあるいはYouTubeのクリエイターとしての自分にとって、R&D(研究開発)の場だ」と語り、プロフェッショナル向けカンファレンスの「インダストリートラック」のパートでトークに参加した。彼は「プラットフォームがどのように活性化し、何を優先しているかを見るために」このカンファレンスを利用しているという。

「この分野の仲間たちから、何がうまくいっているのか、どうすれば変化をもたらすことができ、戦略の方向転換できるのかといったことへの知見も得られる」。

VidCon 2022 held at the Anaheim Convention Center in Anaheim, CA. (Photo by John Chapple/MOVI Inc.)

スター氏は自分のブランドについて「我々の一番の転換の方法は、インフルエンサーのパートナーシップだ」と言う。「商業とコンテンツを結びつけることが第一の戦略だ」。

トークでは、スター氏は前の世代のトップ美容YouTuberを崩壊させたあらゆる事件に関わらないようにしてきたことも強調した。ジェフリー・スター氏をはじめ「ドラマゲドン(Dramageddon)」と呼ばれるさまざまな炎上事件に関わった人々は、インスタグラムとAmazonのアフターパーティに姿を見せたジェームズ・チャールズ氏を除く全員がビデコンのイベントに欠席している。

TikTok以外にもさまざまなプラットフォームを活用

イベントではTikTokが優勢だったものの、ビューティクリエイターはさまざまなプラットフォームを使っていると力説した。TikTok以外にも、イベントにはソーシャルにおける他のビッグプレーヤーがすべて参加している。

YouTube、Spotify、Meta、DiscordPinterest、Snapchat、Twitchもイベントのスポンサーであり、それぞれ専用のパネルが複数あった。Amazonとロブロックス(Roblox)も、インフルエンサーに大きく賭け始めているため、出席していた。

スター氏は自身のトップ3のプラットフォームは、TikTok、YouTube、インスタグラムだと言う。「長時間の横長のフォーマットの時代出身なので、15秒や30秒の動画でこんなにわずかな労力で済むようになったのはかなり変な感じ。自分はプロ用カメラで(コンテンツを)撮影し、デスクトップで編集してからエクスポートしてアップロードするという、そのすべてのプロセスと経験に慣れていたので。いまではそれがすべてスマホひとつでできてしまい、はるかに簡単で早く接続することが可能になった。それに慣れようとしているところだが、とても楽しい」。Pinterestのチーフコンテンツオフィサーであるマリク・デュカード氏との対談で、スター氏はPinterestの新しいクリエイター向け動画機能を使用している。

「2010年か2011年以降から、あらゆるプラットフォームのなかでPinterestを(もっとも長く)利用している」とスター氏は述べた。

クリエイターたちはインスタグラムのリールやYouTubeショートなど、さまざまなプラットフォームでTikTokスタイルの短い動画フォーマットを使用している。

これらの他のプラットフォームは「TikTokのようになろうとしている」一方で、ジャスミン・ゴンザレス氏は競合するプラットフォームについて、エンゲージメントに関していえば「TikTokより優れたものを見たことがない」と述べている。彼女は現在、クリエイターへの支払いプログラムの一環として、他のプラットフォームよりもエンゲージメント率が高いことを理由に、Snapchatへの投稿を好んでいるという。

注目のデジタルメディアはポッドキャスト

今回のイベントで話題になったもうひとつのデジタルメディアが、ポッドキャストだ。6月16日、ヤーブロ氏は新しいポッドキャストである「Justaposition」の第1話を配信し、ポッドキャスティングに参入した最新のビューティインフルエンサーとなった。ビドコンではSpotifyをスポンサーに迎え、ビデオポッドキャストの人気上昇など、ポッドキャスティングに関するトークもいくつか行われた。

「あまりにも多くのコンテンツが作られ、たくさんの人々がコンテンツに関わるという新しい時代に、こうした多くの人々やクリエイターは誰なのかという非常に複雑なビジョンを目にしているが、舞台裏で何が起こっているのかについてはきちんと知ることができない」と、ヤーブロ氏は新しいポッドキャストの差別化要因について述べている。

ヤーブロ氏のブランドであるセルフレス・バイ・ハイラム(Selfless by Hyram)は、会場内でクリエイターやファンと交流する美容会社のひとつで、メインフロアにブースを出展している。トゥーフェイスド(TooFaced)はインフルエンサーとの交流やギフトの配布を行い、美容ブランドのピクシー(Pixi)とポップビューティ(Pop Beauty)もブースのスポンサーとなった。

いまのところ短い動画が投稿の主流ではあるが、クリエイターはソーシャルメディアの状況に変化が起きることを期待している。

「いずれは、おそらく15分や30分といった動画が再び求められるようになる。今後数年間は、短編コンテンツの成功が続くだろうが、人々は本当に誰かとつながりたい、その人を知りたいと思っている」とスター氏は予測している。

[原文:TikTok’s VidCon takeover showcased the new guard of beauty influencers]

LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

Source

タイトルとURLをコピーしました