BNPLのクラーナが仮想ショッピングサービス開始:「単なる決済会社とは見られたくない」

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オンラインコマースの新興企業ヒーロー(Hero)を買収してから約1年、クラーナ(Klarna)は独自の仮想ショッピングサービスを開始した。

クラーナの仮想ショッピング(Virtual Shopping)では、買い物客はライブチャットやビデオ通話で小売店の従業員と繋がり、アドバイスを受けられる。小売業者側では、商品の写真や動画を共有することができる。また、小売業者は店舗、自宅、またはダークストアからライブの商品デモを行うこともできる。

ウォールストリートジャーナル(Wall Street Journal)によると、クラーナは昨年7月、約1億6000万ドル(約203億円)でヒーローを買収した。クラーナの最高マーケティング責任者を務めるデビッド・サンドストローム氏は、この仮想ショッピングサービスは、同社が取り組んでいる多くのソーシャルショッピング機能のうち第一弾にすぎないと米モダンリテールに語り、同社がソーシャルコマースを重視していることを示唆した。

「当社が仮想ショッピングと呼ぶこの最初の商品は、ヒーローが提供していたものを我々のエコシステムに適応させたものだと言ってよい」と、サンドストローム氏は述べる。同氏は、クラーナはヒーローから獲得した人材と技術を引き続き活用していく計画だと付け加えた。「これは最初のサービスにすぎず、うまくいけば今後、非常に多くのソーシャルショッピングサービスをリリースする予定だ」。

マーケティングサービスとしての能力

スウェーデンのストックホルムで2005年に設立されたクラーナは、現在では45カ国に展開し、全世界で1億4700万人を超えるアクティブユーザーを抱える大手のBNPL(後払い)プロバイダとして人気を博している。同社の純営業収入は2021年に38%増の16億ドル(約2030億円)に達した。しかし長年のうちに同社は、よく知られた分割払いプランにとどまらない機能を開発してきた。

このフィンテック企業は11月に、支払い管理、配達追跡、返品などの機能を組み合わせたアプリの運用を開始した。昨年ヒーローを買収した直後、同社はコンテンツクリエイターと小売業者とのコラボレーションを促進するプラットフォームであるアパール(Apprl)も買収した

サンドストローム氏は次のように述べている。「当社は、決済専門の企業と見られるのではなく、コマースを加速させる方法と見られたいと考えている。ヒーローの買収もそのひとつだが、当社が昨年何に多く投資したかを調べれば、当社がマーケティングサービスをもっとも重視していることがわかるだろう。つまり、決済の役割を超えたよりスマートな方法で、小売業者と消費者、そして消費者と小売業者を繋げる能力だ」。

eコマースの次の段階を見据えて

クラーナの仮想ショッピング機能はすでに、リーバイス(Levi’s)、ヒューゴボス(Hugo Boss)、ハーマンミラー(Herman Miller)など300ブランドのウェブサイトで利用可能だ。このサービスは米国、カナダ、英国など18の市場で利用できる。同社は今年、この仮想ショッピングを新たな市場に広げることを計画している。

利用者は、仮想ショッピングに参加しているブランドのウェブサイトを訪問し、仮想ショッピングのアイコンをクリックすることで、仮想ショッピング機能にアクセスできる。店頭にいる専門スタッフは、小売業者向けの新しいクラーナ・ストア・アプリ(Klarna Store App)にアクセスして、顧客とチャットすることができる。

サンドストーム氏によると、買い物客はこの機能を利用するためにクラーナを通じて支払いをする必要はない。しかし、クラーナと提携している小売業者は、仮想ショッピングを使用するため1回限りの初期設定料を支払うことになるが、その金額は小売業者の規模によって異なると同社は述べている。店内の従業員も、自分たちのバーチャルな交流によって成立した販売について、コミッションを得ることができる。

クラーナのソーシャルショッピング責任者で、ヒーローの創設者でもあるアダム・レビーン氏は、オンラインショッピングには実店舗にあるような人間味や、パーソナライズされた経験が欠けていたと語る。

同氏は次のように述べている。「当社は、eコマースがどう進化していくかについて、非常に明るい見通しを持っている。過去20〜25年間を考えれば、eコマースはかなりトランザクション的な体験だった。現在は、eコマースが次の段階に進むための準備が整っており、次の段階は、はるかにソーシャルな体験になるだろう」。

インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)の調査アナリストを務めるアドリアナ・ヌーニェス氏は、クラーナが、特にBNPL(後払い)サービスの業者が増え続けるにつれ、自社をほかのプラットフォームと差別化する方法を探してきたと語る。

同氏は次のように述べている。「オンラインショッピングと仮想ショッピングはいずれも、パンデミックのあいだ、ロックダウンの最中に爆発的に増加した。しかし、この分野はロックダウンの最中に見られたほど劇的ではないにしても、今後も成長し続けることは間違いない」。

仮想ショッピングの可能性

クラーナのように、いくつかのフィンテックプラットフォームは、自社の中核となる決済サービス以外の領域にも事業を展開してきた。たとえばアファーム(Affirm)は、昨年4月、約3億ドル(約258億円)の現金総額と普通株対価で返金プラットフォームのリターンリー(Returnly)を買収した。ペイパル(Paypal)は昨年9月、ショッピング、貯金、課金支払い、暗号化の機能を組み合わせた「オールインワン」アプリをリリースした。「これらの新しい消費者向けツールは、小売業者と消費者の消費の両方を取り込むのに非常に役立っている」とヌーニェス氏は述べている。

レビーン氏は、仮想ショッピングは将来的にさまざまな方向に進化する可能性があり、その鍵になるのはビデオチャットだという。同氏は、同社がショッピング可能な動画や、ほかの顧客体験のような分野にも機会を見出していると語っている。

サンドストローム氏は、仮想ショッピングは同社が単なる決済企業から脱却するための自然な進歩の道だと見ている。同氏は、仮想ショッピングは人々の買い物のしかたを一変させる可能性があるサービスだと語る。クラーナは昨年、ライブストリームによるショッピングイベントの主催も始めており、米国では、ヘラルドスクエアにあるメイシーズ(Macy’s)の旗艦店で最初のライブストリームイベントを開催した。

同氏は次のように述べている。「支払いは我々の現在行っている業務の基礎であり、解決も再現も難しい問題だ。現在の当社はその問題を解決してその先に進んでいる。我々が、いかにして小売業者のために価値を生み出せるか、そして、いかにして消費者に優れたユーザーエクスペリエンスを提供し、消費者にどのような価値を与えることができるかが、本当の問題だ」。

[原文:‘We don’t want to be seen as a payments company only’: Klarna unveils virtual shopping offering]

Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Klarna

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