成熟する インフルエンサー マーケティング、広告主はより長期的な関係を構築へ

DIGIDAY

インフルエンサーマーケティングが成熟するにつれ、企業のマーケターたちはインフルエンサーエージェンシーだけでなく、インフルエンサーたちとの直接の、長期的な関係を求めている。

インフルエンサーエージェンシーで勤務するエグゼクティブたちは、ブランドと指名代理店(以下、AOR)契約を結ぶための提案依頼(以下、RFP)がここ18カ月で大幅に、特に2022年末にさらに増加したと述べている。この動きは、広告主企業のマーケターたちがプロジェクトベースのアプローチから、より長期的なビジョンへと移行しつつあることを受けたものであり、またエージェンシーも、広告戦略における後付け的な役割ではなく、戦略全体に他のエージェンシーと共に参加するようになったという潮流の中で起きている変化だ。

インフルエンサーマーケティングショップのスウェイグループ(Sway Group)CEOであるダニエル・ワイリー氏は、「インフルエンサー(エージェンシー)はいま、会議出席の機会が与えられている」と述べている。「私たちは(広告主の)内部会議により頻繁に参加しており、すべてのエージェンシーが一堂に会する月例会議にも参加している」。

ブランドと代理店の関係性

これまでは、ブランドが提携するメディア、PR、デジタルエージェンシーなどといった代理店が、(広告企業のために)インフルエンサー代理店を利用していた。しかし、マーケターがより直接的にインフルエンサーエージェンシーを起用するようになるにつれ、両者の関係はより正式なものとなり、インフルエンサーエージェンシーはより全体的な戦略の一部となっている。

電通クリエイティブのインフルエンサーマーケティングEVPであるセイディー・スカブダック氏は、「現時点でAORのRFPは米国だけでおそらく10個あり、グローバルだとそれにさらにいくつか追加される」と述べ、インフルエンサーマーケティングがブランドにとって重要な役割を果たすようになったことで、この変化が起きたと付け加えた。「この最初の2年半は常に上昇傾向にあった。着実に流入している」。

インフルエンサーマーケティングエージェンシーの幹部の中には、AOR関係や長期契約へと移行するこの動きを、インフルエンサーマーケティングが成長し、ブランドが年単位で活動する傾向がある中での自然な変化と見る者もいる。

インフルエンサーマーケティング代理店ビレッジ・マーケティング(Village Marketing)の創業者であるヴィッキー・シーガー氏は、「今ではブランドにとってより正式なマーケティングチャネルになった」と述べ、大手広告企業におけるインフルエンサーマーケティングへの支出が増えたことで、AORの要求が増えていると付け加えた。「ゆっくりとした動きだったが、ブランドたちが2023会計年度に入ったことで、このシフトがより多く見られるようになった」。

インフルエンサーマーケティングハブ(Influencer MarketingHub)のデータによると、2022年のインフルエンサーマーケティングの広告費は164億ドル(約2兆2700億円)で、2021年の138億ドル(約1兆8000億円)から増加した。インフルエンサーマーケティングへの支出が増え続けている背景には、現在の経済環境を考慮して、マーケティング担当者が予算をより精査していることがあるかもしれない。インフルエンサーだけでなく、インフルエンサーエージェンシーとの長期的な関係にこれらの企業が移行しているのは、企業のCFOや調達部門が広告購買プロセスを統合し、一元化するための取り組みの一環だと考える人もいる。

インフルエンサーエージェンシーのゴート(Goat)の共同創業者であるニック・クック氏は、「今の課題は、異なる代理店が同じインフルエンサーにお金を払いながら、互いに競争するようなことがないように物事を一元化することだ」と述べ、「これまでのやり方は、基本的にそんな具合でバラバラになっていた」と付け加えた。同時に、インフルエンサーマーケティングの予算が増加しているため、CFOと調達チームはより注視するようになった。「ここ18カ月の間に予算の2%から15%になった、という具合に、突然厳しい目が向けられている」とクック氏は述べた。

トレンドは循環する

インフルエンサーエージェンシーとのAOR関係が推進されていることとは別に、インフルエンサー自身とのより長期的なパートナーシップを求める声も高まっていると幹部は述べている。

「インフルエンサーたちは以前からこれを推し進めてきた」とシーガー氏は言う。「また、予算が我々の分野に入ってきて、より多くの競合他社が参入するにつれて、ブランドは長期的なパートナーシップの量を徐々に増やしている。ブランドが起用するインフルエンサーの中には、カテゴリー排他性(自分以外のインフルエンサーを同じカテゴリーのプロダクトの広告に使わない)を確保したいと考える者がいる。ブランドは特定のインフルエンサーから一貫して(広告契約を)購入することによってそれを行なっている(これは一部の製品タイプでのみ行われる)」。

広告代理店の幹部たちは、インフルエンサーマーケティングが成熟し続け、マーケターがより長期的な形式化された関係を求めているため、この流れは今年も続くと予想している。彼らによると、CFOは支出がどこに向かっているのか、成功の指標は何なのか、全体的な計画は何なのかを理解しようとするため、予算が大きくなればなるほど、厳しい目が向けられるようになるという。

マーケティング担当者がこれを推進していても、今後この状況が続くわけではないだろうと考える人もいる。

バイラル・ネーション・タレント(Viral Nation Talent)の社長でバイラル・ネーション・グループ(Viral Nation Group)の最高成長責任者であるジョナサン・チャンティ氏は、「このサイクルは数年おきに見られる」と述べた。「伝統的に、ブランドアンバサダー分野は長期的なものでしかなかった。そしてクリエイターエコノミーがそれを変えた。短期的な関係の方が多くなった。その後、長期的な関係を持つトレンドに戻った。その後、マイクロインフルエンサーやナノインフルエンサーが爆発的に増え、短期的なものになった。そして今また、長期的なパートナーシップに戻った。トレンドは循環する」。

[原文:Marketers seek agency-of-record relationships with influencer agencies as influencer marketing matures

Kristina Monllos(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)

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