TikTok 最新戦略とは? シークレットアカウントの台頭やチーム編成など【TikTok Strategies】

DIGIDAY

10億人以上のグローバルユーザーが1日に映画1本分に匹敵する動画を視聴しているというTikTok。いまやファッションや美容ブランドにとって重要なソーシャルプラットフォームとしての地位を確立している。6月16日に開催されたGlossyのバーチャルイベントTikTokストラテジーズでは、US Glossy編集長ジル・マノフ氏とプリヤ・ラオ氏がモデレーターを務め、Z世代のお気に入りブランドのマーケターたちが集まり、TikTokで成功を収めている方法について話し合った。

Z世代に人気の美容ブランドであるレアビューティ(Rare Beauty)やセラヴィ(CeraVe)はもちろん、ティーン向けのファッション小売業者ホリスター(Hollister)とパクサン(Pacsun)の背後にいるTikTokのストラテジストらが参加し、TikTok戦略の複雑な問題をすべて取りあげた。議論されたトピックは、予算編成、チームの採用、KPI(重要業績評価指標)の設定、コンテンツの実験、バイラルな瞬間の実現、プラットフォーム上での製品の販売方法などである。

TikTokは新たなKPIを必要としている

ほとんどのスピーカーは、TikTokの独特なフォーマットが新たなパフォーマンス測定を必要としていると述べた。

「歴史的に、従来のソーシャル(メディア)をみると、リーダーシップの観点から重要なKPIは『フォロワーは何人いるのか』『フォロワーはどのくらい増えているか』『そのフォロワーを増やし続けているか』というものだ。それが非常に重要だった理由は、コンテンツを見るのはフォローしている人だけだったからだ」と指摘したのは、ダッシュハドソン(Dash Hudson)のプロダクトバイスプレジデント、ライアン・ササキ氏だ。同社はコンテンツマーケティングの専門分野でTikTokと提携しており、TikTokのトレンドをトラッキングするための独自ツールを提供している。TikTokのCPG向けバーティカルディレクターであるエイミー・オーカース氏と、レアビューティのコンシューマーマーケティング・シニアディレクターであるアシュリー・マーフィー氏とともに、ササキ氏はパネルのモデレーターとしてTikTokでのKPIへの最新アプローチについて話した。

「TikTokがすばらしいのは、フォロワーの増加がそれほど重要ではなくなったことだ。なぜなら、TikTokのアルゴリズムは、私たちのような個々のユーザーに、いちばんおもしろいと思ってもらえるようなコンテンツを提示することにまさしく焦点を当てているからだ」とササキ氏は述べている。

マーフィー氏いわく、レアビューティではTikTokのKPIを数字だけでなく、感情も基準として用いているという。

「コミュニティがコメント欄で死ぬほど笑っていれば、それはホームランだ」と彼女は述べ、このプラットフォームにおける重要な目標のひとつが「ブランドに人間味を与えること」だと指摘している。

以下に、話し合われたテーマの一部を紹介する。

TikTokのシークレットアカウントの台頭

ホリスターのマーケティングチームが最初にTikTokの戦略を練り始めた際は、Z世代のやり方を参照した。大々的に宣伝された公式アカウントを立ち上げるのではなく、秘密のアカウントを作成したのだ。そしてそのコンテンツは普通のブランドプロモーションではなかった。

「私たちのチームは、このアンダーグラウンドなTikTokアカウントを始めた。そこでは、文字通り本当に小さなジーンズを制作して2本の指に履かせて、このプラットフォームで目にしている流行りのサウンドやトレンド、ダンスなどをやらせた。このアカウントは『タイニージーンズ(Tiny Jeans)』と名付けた」と、ホリスターでブランドマーケティングストラテジー・シニアディレクターを務めるジェシー・スクーラー氏は語っている。

結果的に、この数十億ドル規模のブランドによる踊る指ジーンズは、大成功となったことが判明した。

「私たちの最初のTikTokは、1300万ビュー以上のバイラルになった。私はクリエイティブパートナーに電話をかけ、『このアカウントについて法務に報告しなければならないと思う』と言った」と、スクーラー氏は述べた。

公式とは別の楽しいアカウントを立ち上げる

洗練されていない別のソーシャルメディアアカウントを立ち上げるというやり方(インスタグラムの場合、Z世代用語では「フィンスタ(finsta)」というが、TikTokでも人気のトレンドである)は、TikTok戦略を進めていく際、いくつかのブランドが採用している。

ティーン向けファッション小売業者のパクサンも、数カ月以内にふたつめのアカウントの立ち上げを計画しており、同社のインフルエンサーおよびソーシャルメディア・シニアマネージャーを務めるタイラー・マクドナルド氏いわく、舞台裏での従業員の動画を紹介する予定だ。

「これは、新しいオーディエンスにリーチするための別の方法となる。いつも自社独自のチャンネルのためにベストなものを取っておくのだが、このふたつに分けることには、ある意味、独自性がある。『やってみよう』という、ただの楽しいアイデアのようなもの。TikTokではあまり考えすぎないようにしている」。

スクーラー氏によると、ホリスターのアカウントも「テストと学習」および「ちょっと変わっていて、おもしろいものにする」ことを目的としているという。

うまくいっているのはオフビートなコンテンツだということがわかっている。ホリスターによる@tinyjeansは現在認証を受け、64万8000人以上のフォロワーがいる。そしてホリスターのサブブランドであるソーシャルツーリスト(Social Tourist)を所有するTikTokの女王、シャーリーとディクシーのダメリオ姉妹が登場しているのも特徴だ。タイニージーンズは、フォロワー数25万5000人の同ブランドのメインの公式アカウントと連携して運営されている。

TikTok専用チームの作成

パクサンが店員を含む従業員をコンテンツに活用することは、ブランドがTikTokのために人材を確保する方法に工夫を凝らしている一例である。

Glossyの編集長ジル・マノフ氏は、「専用のチームとコンテンツへの投資は成果をあげている」として、TikTokアカウントを管理するためにチームを採用するというプロセスについて参加者に説明した。

たとえば最近、パクサンではTikTokのコンテンツをフルタイムで作成するために、店員を同社のマーケティングチームに昇格させたと、マクドナルド氏は述べている。

「開店前や閉店間際に、店員たちが店内の楽しいものをたくさん投稿するのを目にするようになった。ただおもしろいダンスをしてみせたり、お気に入りのアイテムを紹介したり、あるいはその日に仕事に着てきた格好といった、従業員のスタイルの紹介だったりすることもある」と彼は言う。新たに昇進したチームメンバーは、ソーシャルコンテンツの制作に参加した店員にインセンティブを与えるという新しいアンバサダープログラムの監督を行う予定だ。

一方、スキンケアでZ世代に人気のセラヴィは、バイスプレジデントでグローバルデジタルマーケティングのトップであるアダム・コーンブルム氏によれば、現在、TikTokの専任クリエイターを雇用しようとしている最中だという。同ブランドは当然ながらTikTok上で募集を行う予定だ。新しいクリエイターは、このプラットフォームに注力する3人のマーケティングチームに加わることになる。

TikTokに特化したチームへの投資に対してリーダーから了承を得るために、マーフィー氏はブランドに次のようにアドバイスした。

「私たちのクライアントは、ほとんどの時間をTikTokで過ごしている。それがTikTokにいるべき理由として、リーダーシップにとって注目する価値がある点だ」。また、TikTok関連の決定の承認については、このプラットフォーム上のトレンドのペースが速いため、官僚主義の層を取り除くことが重要だと強調した。

「10段階の承認が必要な場合、そのトレンドは死ぬ。リーダーシップチームに、自社のチームを信頼しろと言いたい。チームはプラットフォームを知っている。専門家なのだ」。

新しい外観、新しい声

ブランドがTikTokの専門チームを持つ必要があるもうひとつの理由は、すなわち、スタイルと内容の両方において、コンテンツが独自のレベルにあるという点だ。上記の例が示すように、不遜でユーモラスな生のコンテンツこそ、ブランドが成功しているところなのだ。

「インスタグラムで機能するコンテンツがTikTokで機能するわけではない」とマーフィー氏は言う。「ローファイなコンテンツで本当に報われる」。レアビューティのトップパフォーマーの一例として、マーフィー氏がチークのボトルに動く目玉をつけ、擬人化したその化粧品のチューブを連れてセフォラ(Sephora)のさまざまな店舗を「訪問」した動画がある。この動く目玉をつけたチークは、それ以降の動画でもほかの「キャラクター」と一緒に登場している。

「完璧さは必要ない」とオーカース氏は言う。「このプラットフォームで完璧を追求しないこと。リアルであれ。スマホを手にしろ。何か動画を撮り始めろ。それをそこに押し出して、コミュニティが何に共感し始めるのかを見よう」。彼女はさらに、実験が重要だと付け加えた。「これは、自分の手のひらの上のフォーカスグループのようなものだ」。

成功するTikTokの投稿を見つけ出す際、オーカース氏いわく「消費者は話しかけられることを望んでいない。だから、どのトレンドに飛びつくにしても、あるいはどのトレンドを支持するにせよ、マーケターのように考えつつも、クリエイターのように行動する必要がある」。

「特にトレンドの観点からは、サウンドが非常に重要だ」とササキ氏。「TikTokは、サウンドがなければTikTokではない。サウンドは投稿をバイラルにするための重要な部分になっている」。

ショッピングの機会

TikTokですでに存在感を確立しているブランドにとって、次のステップはコマースに飛び込むことだ。TikTokで製品がバイラルになれば、売上が急増することは疑う余地もない。オーカース氏は、#TikTokMadeMeBuyItのハッシュタグは130億ビュー以上あると指摘している。

TikTokがショッピング機能を開発するにつれ、ブランドはそのライブストリームショッピング機能に飛びつき始めた。パクサンとホリスターは、どちらもこのプラットフォームでショッピング可能なライブストリームの配信を開始した。

「ライブは、まさにユニークなコンテンツフォーマットだ」とスクーラー氏は言う。「超情報量の多い長編コンテンツで、ファンをブランドに引き込むことができる。製品や製品ライン、コレクションにまつわるストーリーを語ることができるし、見ている人たちを本当に楽しませることができる」。

[原文:Inside the TikTok fashion and beauty playbook: ‘Think like a marketer, act like a creator’]

LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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