日本の TikTok ユーザーは平均34歳、博報堂調査が示す実態 : 要点まとめ

DIGIDAY

TikTokはいまや、プラットフォームにおける「メインストリーム」となりつつある。「ティーンエイジャーがダンスをしているアプリ」という認識は、過去のものだ。

ユーザー層の拡大といった変化はもちろん、投稿される多様で膨大なバイラルコンテンツは、ブランドのマーケティング戦略に少なくない影響を与えている。アメリカではブランドがFacebookとインスタグラムにとどまらない多様なメディアミックスを実現するための投資先として、TikTokに目を向けつつある

一方で、広告プラットフォームとして捉えた場合のTikTokは、まだ不透明な部分も多い。広告を含めたコンテンツのあり方と受容のされ方、消費力、購買への寄与といったユーザーの実態は、ブランドにとって「様子見」の状態だろう。こうした状況を読み解くヒントになると思われるのが、博報堂DYメディアパートナーズと博報堂の共同プロジェクトであるコンテンツビジネスラボによって2011年から毎年発表されている「コンテンツファン消費行動調査」だ。

全国の15~69歳の男女約5000人を対象に、エンタテインメントやスポーツなど計11カテゴリのコンテンツに対する消費行動の実態を調査したもので、主要なプラットフォームにおけるユーザーの動向も分析されている。つまり、既存の売上データなどでは把握できなかった、ユーザーの「消費実態」を把握することが可能だ。9月3日には2021年版が公開されたが、DIGIDAYは、コンテンツビジネスラボのリーダーを務める木下陽介氏、同ラボに所属する谷口由貴氏に取材を実施。TikTokユーザーの実像やコンテンツ消費の実態、それらを踏まえたTikTokにおける広告のあり方に関する分析を聞いた。以下に要点をまとめている。

主なポイント:

  • TikTokユーザーは若年層が主体で、平均年齢は34歳。この数字は2019年以降、毎年上昇している。
  • コンテンツへの支出に積極的で、その金額は主要プラットフォーム内でトップの約8万5862円。全体平均の約4万2538円の2倍を超える。
  • 主要プラットフォームのなかでもユーザーの平均世帯年収が646万円と高く、Facebook(659万円)に次ぐ。
  • ITリテラシーが高く、TikTok以外のプラットフォーム、決済サービスやスマートスピーカー、VRなどへの関心が高い。
  • コンテンツ提供サービスのレコメンドやおすすめ機能を信頼しており、その利用率も全体平均(26.1%)の2倍近い数値(46.5%)を示している。(レコメンドを通じて提供される)広告に対してもセレンディピティを感じた状態で受け取りやすい環境になっている。

若年層が主体も、支出に積極的

まず、TikTokというプラットフォームの特徴を把握したい。コンテンツファン消費行動調査から読み取れるポイントはいくつかある。まず、若年層を主体としたプラットフォームであることだ。ユーザーの平均年齢は34歳。これはかつてイメージされていたような「ユーザーが10〜20代のみ」を意味するわけではない。

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谷口氏は初めてTikTokを調査対象とした2019年以降、平均年齢は上昇しており、ユーザーのデモグラフィックやライフステージは多様化していると指摘する。「全体平均と比較すると既婚子あり男性の比率もやや高くなっているなど、年々リーチする層も増加していると考えられる」。ちなみに、2019年の調査と比較すると利用率は2倍以上の増加を見せており、成長の規模も注目すべき点だと谷口氏は付け加える。

さらに、TikTokが他サービスと比較して顕著な差を見せるのが、コンテンツへの支出金額の大きさだ。コンテンツファン消費行動調査ではドラマや漫画、小説、音楽、スポーツといった各コンテンツカテゴリーにおける支出金額も調査している。若年層主体であるがゆえにユーザーが支出に消極的といった傾向は見られず、各カテゴリーを合計した支出金額の全体平均が約4万2538円なのに対し、約8万5862円と突出している(サービスごとで比較した場合でもトップで、2位のTwitterは約7万1930円)。

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谷口氏は「TikTokを閲覧して実際に消費するという現象が起きやすくなっており、結果的にヒットコンテンツが生まれやすい環境になっている」と分析する。木下氏は、カテゴリーをまたがった活発な支出そのものがTikTokの特徴ではないかと話す。「アニメやゲームなど個別のカテゴリーでの支出はTwitterが高いが、TikTokではそれらに加えて音楽やスポーツといったカテゴリーでの支出も見られ、合計金額の大きさにつながっている。従来は『棲み分け』が見られたセグメントがクロスオーバーしている、ユニークなプラットフォームだ」。

「レコメンド」への強い信頼感

TikTokユーザーの特徴、実態はどうだろうか。前述の支出金額が高さを裏付けるとも言えるのが、平均世帯年収の高さだ。もっとも高いのはFacebookの659万円だが、TikTokもそれに次ぐ646万円となっている(全体平均は591万円)。デジタル関連の支出にとどまらず、リアルイベントやレジャーなどオフラインでのモノ消費やコト消費も活発で、そもそも消費意欲が高い点も特徴的だと谷口氏は語る。

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さらに谷口氏がユーザー特徴として挙げるのが、オンラインサービスやTikTok以外のプラットフォーム、決済サービスやスマートスピーカー、VRなどへの関心や利用率の高さだ。「比較的新しいサービスやツールも手軽に使いこなせる層で、全体的な傾向と比較してもITリテラシーの高さやガジェット好きといった特徴が読み取れる」。短尺動画のサービスゆえに、情報入手やコンテンツ消費自体にも時間的な効率を求める層が多いことも、TikTokらしさと言えるだろう。
 
しかし、特に注目すべきはユーザーの意識項目の調査結果だろう。サービスサイドが提供するレコメンド、おすすめ機能を利用している割合が、全体平均の26.1%に対し、TikTokユーザーは46.5%と2倍近い割合を示しているのだ。「サービスやプラットフォームによって差異はあるものの、レコメンドに対してのポジティブなユーザーは基本的に高くない」とし、木下氏は続ける。「TikTokはレコメンドベースのサービスであり、ユーザーもそれらを見ているだけで楽しめるからこそ、レコメンドにセレンディピティを感じているのだろう」。

これは、広告に対しても同様の意識が働いている可能性もあると谷口氏は言う。「レコメンドされるコンテンツのなかには広告も含まれている。コンテンツや情報としてその内容がニーズに一致していれば、広告であってもセレンディピティを感じた状態で受け取りやすい環境になっているのではないか」。

広告コミュニケーションのチャレンジの場

TikTokのユニークネスは把握できたが、重要なのはそれらがブランドにとってどのような意味を持つかだろう。谷口氏は、プラットフォーム上での課金や決済に対するユーザーの心理的ハードルの低さに注目すべきだと指摘し、一例としてライブ配信における「投げ銭」の利用率の高さを挙げる。「スマートフォンを通じたコマースが当然になっているユーザーにとっては、『投げ銭』という比較的新しいマネタイズ手法にも抵抗感がない。つまり、既存の収益獲得手段とは異なる方法をテストする場として捉えることができるのではないだろうか」。ユーザーのデジタル上での支出の寛容さ、積極性を考えれば、ライブコマースなどのポテンシャルも示唆していると言えるかもしれない。

では、広告プラットフォームとして捉えた場合、どのように向き合うべきなのか。「プラットフォームにおいてユーザーはコンテンツを見るために訪れている。そのコンテキストやマインドを理解した上で、広告コミュニケーションを取ろうとしているか。プラットフォームとの親和性を考えたクリエイティブができているのか、という視点が大前提になる」と木下氏は語る。「エージェンシーはもちろん、ブランド側もその点を理解する必要がある」。

前述の通り、TikTokにおいてユーザーはレコメンデーションを信頼しており、狭義での動画にとどまらない幅広いコンテンツが提供されることを期待している。木下氏は次のように指摘した。「『広告を打つ』というスタンスではなく、コンテンツを通して体験を提供するという観点で広告を展開することが重要ではないか」。

Written by 分島翔平

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