Z世代 を追うラグジュアリービューティが増加中【ビューティ&ウェルネスブリーフィング】

DIGIDAY

今回は、ラグジュアリービューティの世界でZ世代の影響力がどのように拡大しているかに注目する。

若い世代を狙ったラグジュアリーブランドが増加中

2022年1月以降、複数のラグジュアリー美容ブランドが、若い顧客を直接ターゲットにしたキャンペーンや製品コレクションをローンチしている。その確固たるものが、N°1 ドゥ シャネル(No. 1 de Chanel)のローンチで今年をスタートさせたシャネル(Chanel)である。このクリーンビューティラインはD2Cのeコマースサイトで発売された。同時期にシャネルのビューティラインがアルタビューティ(Ulta Beauty)で販売開始されている。そして3月、SK-IIは、K-PopのガールズグループであるTWICEのアーティスト、ミナ氏と提携、彼女自身が撮影したセルフケアに関する動画シリーズをフィーチャーしたキャンペーンをリリースした。これに続き、イブ・サンローラン・ボーテ(YSL Beauty)は新しい米国ブランドアンバサダーに27歳の俳優インディア・ムーア氏を起用した。イブ・サンローラン・ボーテは、2021年8月にニュー(NU)という5つ製品から成るディフュージョンコレクションを作っている。そして5月5日、若い消費者の肌ニーズに対応するという明確なビジョンを持って、ドクター・バーバラ・シュトルム(Dr. Barbara Sturm)がマイクロバイオティックコレクション(Microbiotic Collection)を発表した。

通常ラインよりも低価格で若い年代の肌に合わせた製品

「この(マイクロバイオティック)コレクションは、マイクロバイオーム(微生物群)、炎症性、肌のバリア機能の修復反応という、肌のエコシステムの3つの側面のバランスをターゲットにしている。また、光傷害からの保護も提供している」と、自身の名を冠したブランドの創業者でCEOのバーバラ・シュトルム医師は解説している。「私はこれを、長期的な肌の健康と年齢を重ねた時の肌の若さのために、若い年代のうちに肌をプログラミングすることだと考えている」。

このコレクションの処方は、ニキビの炎症を癒し、予防するためにプロバイオティクスとプレバイオティクスによって肌のマイクロバイオームを強化し、バランスを整えることを目的としている。ドクター・バーバラ・シュトルム(Dr. Barbara Sturm)の通常の製品の価格帯は100ドル(約1万3200円)から360ドル(約4万7750円)であるのに対して、このコレクションの価格は45ドル(約5960円)から100ドル(約1万3200円)となっている。また同ブランドでニキビに対応している既存のクラリファイングコレクション(Clarifying Collection)とは異なり、マイクロバイオティックコレクションにはアンチエイジングの効果は含まれていない。シュトルム医師によると、彼女のブランドの顧客の多くは20代後半以上だという。

Z世代に注力すべく大学でのアンバサダープログラムを運営

ドクター・バーバラ・シュトルムは、多くの意味で何年も前から、Z世代に注力したコレクションの準備を整えてきた。2020年以降、ブランド認知度を高め、製品のトライアルを促進するために、同ブランドでは大学のアンバサダープログラムを運営している。このプログラムは現在4学期目で、各学期はシュトルム博士と娘のチャーリーとのバーチャルイベント、コンテンツ作成モジュール、アンバサダーとその友人への無料製品トライアルで構成されている。プログラムはすべての学校を対象としており、現在、アラバマ大学、テキサス大学オースティン校、カリフォルニア大学バークレー校、コロンビア大学などの学生が参加している(その人数は非公表)。また2020年には、シュトルム博士はスキンケアの基礎に合わせた動画シリーズ「スキンスクール(Skin School)」を制作しており、ブランドのD2Cのeコマースサイトで公開している。

若い消費者に欠けているスキンケア教育に着目

シュトルム博士がマイクロバイオティックコレクションを作ろうと考えたのは、彼女のクリニックにやってくる若い女性たちが、ニキビ跡の修復やさらには老化防止のためのボトックスなど「即効性のある」解決策を求めているのを目にしてきたからだという。そうした会話から、若い消費者にはスキンケア、特に肌のバリア機能と炎症についての教育が欠けていることを博士は理解した。ドクター・バーバラ・シュトルムの店舗やスパでは、吹き出物や赤み、炎症に対処するための「ティーンエイジャー・フェイシャル(Teenager Facial)」も提供している。

「この世代は自分たちの身体的、感情的、精神的な健康のつながりを理解しており、それらを重要視して成長している」と彼女は言う。「長年にわたって私は、抗炎症的なライフスタイルを提唱してきた。これはスキンケアにとどまらず、運動、栄養、睡眠、精神的な健康にまで及ぶものだ。ウェルネスへのこうした全体的なアプローチは、ブランドとオーディエンスに共通するものである」。

ミニサイズがラグジュアリーなブランドを試す人気の主力製品に

ほかのラグジュアリーブランドは、すでにZ世代の大きな顧客基盤を持っていることに気づいている。アウグスティヌス・バデール(Augustinus Bader)のCEOシャルル・ロジエ氏は、D2Cのeコマース顧客の30%が25歳以下であると述べた。アウグスティヌス・バデールは、6月15日にライトクリーム(Light Cream)と呼ばれるフェイシャルモイスチャライザーの軽いバージョンを発売する。これはZ世代を明確に意識した処方ではないものの、皮脂の分泌が多い若い顧客には、オリジナルの濃厚なバージョンよりもこのモイスチャライザーの方が肌に合うだろうとロジエ氏は指摘している。

アウグスティヌス・バデールの既存製品には、15ミリリットル、30ミリリットル、50ミリリットルのサイズがあり、価格は22ドル(約2920円)から350ドル(約4万6460円)だ。小さなサイズと低い価格帯なら、使える収入が多くない若い消費者にもラグジュアリーブランドにより手が届きやすくなるのは間違いない。2020年以降、さまざまな小さいサイズが存在するようになってきている。ライトクリームは30ミリリットルのボトルで発売され、後日15ミリリットルのオプションも発売する予定だ。同ブランドでは現在、15ミリリットルと30ミリリットルのサイズの製品にのみ対応している詰め替え方式に、全製品を移行しようとしている。

サンプル用の小袋だけでなく、製品を試すための主力商品として顧客に人気なのがトラベルサイズで、ドクター・バーバラ・シュトルムでも2020年9月にeコマースサイトをリローンチした際、トラベルサイズなどの製品を取り揃えて自由に選べる「キャンディショップ(Candy Shop)」というコーナーをサイト上に設けている。さらにセフォラ(Sephora)などの小売業者との分割払いの提携は、ラ・メール(La Mer)のようなラグジュアリーブランドにとって有益なものになっている。

Z世代は自分自身をどうケアするかを意識している

アウグスティヌス・バデールはアンチエイジングブランドとして知られているが、同ブランドの全製品を支えている独自開発のTFC8複合体は肌の再生に焦点を当てているとロジエ氏は語る。これは、シワの軽減や予防を助けるだけでなく、炎症や酒さを改善して肌を「癒す」という。ロジエ氏はZ世代のブランド認知度については、特定のブランド戦術というよりも、口コミや好意的な報道にあると認めている。

「ミッションとポジティブな影響力を持ち、サステナビリティに配慮した透明性のあるブランドが(Z世代に)求められている」と彼は言う。「スキンケアはいまではその延長線上にあり、自分自身をどうケアするかということだ。若い消費者はその点を非常に重視しているし、意識している」。

プーチがバイレードの株式の過半数を取得

複数のニュースメディアがロレアル(L’Oréal)がバイレード(Byredo)を買収するだろうという噂を報じた後、5月31日にスペインの非上場コングロマリットのプーチ(Puig)がこの話題のフレグランスブランドの株式の過半数を取得するという思わぬ展開となった。プーチは2020年にシャーロット・ティルベリー(Charlotte Tilbury)の過半数株式取得を発表した際、当時ユニリーバ(Unilever)やエスティローダー・カンパニーズ(The Estée Lauder Companies)を抑えたと報じられて話題になっている。プーチは、キャロライナ・ヘレナ(Carolina Herrera)やクリスチャン・ルブタン(Christian Louboutin)を含む他の所有およびライセンスのフレグランスブランドをポートフォリオに数えている。バイレードの取引条件は明らかにされていないものの、2019年以降、過半数の株式取得はM&Aのなかで人気の戦術となっている。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: Luxury beauty goes after Gen Z]

EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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