リーバイスの最高人材責任者が推進する、ハイブリッドな働き方:その鍵を握る「多様性」と「包括性」

DIGIDAY

こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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リーバイ・ストラウス・アンド・カンパニー(Levi Strauss & Co.)は、約1万6000人の従業員を抱えるブランドとして、店舗、オフィス、配送センター、製造工場など、数百の職場に全世界的に存在する。そして、同社は現在、ホームオフィスも導入している。

あらゆる規模の小売業者に当てはまることだが、リーバイ・ストラウスも過去2年半にわたり、パンデミックのリスクを軽減するための対抗措置を余儀なくされ、従業員に在宅での勤務を許可してきた。これにより、ハイブリッドな職場への移行が引き起こされた。会社の従業員は指定された会議を除いてオフィスへの出社を要求されなくなったのだ(同社の従業員のうち約1万2000人は最前線で勤務している)。

この移行の鍵を握っているのは、リーバイス(Levi’s)の最高人材責任者を務めるトレーシー・レイニー氏だ。同氏はシャッターフライ(Shutterfly)およびギャップ(Gap)で人材に関する責任者の役割を務めたあと、2020年3月に、ベイエリアにある同社の本社がロックダウンして1週間後に、この職務に就いた。

同氏の意見では、ハイブリッドのスケジューリングは柔軟性とつながりに集約される。また同氏は、従業員が自らのメンタルヘルスを維持できるリソースを確保すること、従業員のあいだで多様性と包括性を高めることにも注力している。同氏は現在、企業の仕事の方針をまとめているが、これが、このアパレルブランドにとって有効であり、従業員の雇用と定着の両方に役立つと述べている。同氏は、米モダンリテールのインタビューで、この新しい手法や、過去1年間に実行したそのほかの取り組みについて語った。

以下の対談内容は簡素さと明瞭さを考慮し、編集を加えたものである。

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――御社の会社従業員がオフィスに復帰するのをどのように対処したか?

私は2021年の大部分を、他社の同業者と何度も話し合い、その問題にどう対処すべきかを見いだすために費やした。我々は仕事にハイブリッドなアプローチを採用している。人々はリモートで働くことも、オフィスに来ることもできる。我々は柔軟性を重視したいと考えたため、基本的に全面的な指示は行わなかった。しかし、主要な会議のために、毎月、あるいは四半期ごとなど、定期的に出社してほしいという期待もある。

私は現在オフィスにいるが、月曜日には自宅におり、明日も自宅にいる予定だ。大事なのは、両方の良いところを活用することだ。つまり、従業員たちが重視する柔軟性を保ちながら、社員同士のつながりも維持できるようにすることだ。

――その柔軟性はどのようにして現れているのか? 出社や退社の頻度を調べたのか?

当社はどのような方法でも、そのような追跡を行わない。仕事を行う方法自体が、根本から変化したのだと私は考えている。2019年当時の働き方と関連づけることは、現在我々が生きている世界において特に役に立たないし、関連性もない。当社は基本的に、リモートで非常に効率的に仕事ができることを、何カ月にもわたって証明した。また、お互いに顔を合わせないことのトレードオフがあるとも考えている。そして、この全体的な考え方は、「我々に合わせて個別化された仕事」と呼んでいるもので、柔軟であるという最良の部分を取り入れつつ、物理的に一緒にいる時間帯を取り決めるというものだ。

――その方針は、雇用や勤続の維持に役立ったのか?

もちろんだ。当社の本社はベイエリアにある。ここでは誰もがこの方法で仕事している。現在のところ、これは従業員向けのちょっとした「入場料」だと、私は考えている。これはたしかに勤続の維持に役立ってきたし、従業員にとっても、入社を検討するときに期待していることだと、私は考えている。

――小売の新しい従業員を雇用するためにどのような取り組みを行ったか?

私が小売業界で長年にわたって体験してきたのは、現在我々が直面している問題は、以前からずっと挑戦してきた課題と本質的に同じだということだ。ただ、我々やほかの雇用者がすべきことは、自社の文化に対して真に寄り添うべきだ。

当社では、懸念している問題について積極的に発言している。また、従業員のエンゲージメントについても大っぴらに語っている。当社は、部下である従業員をサポートし、共感を持って指導するようなマネージャーの育成にも力を注いでいる。これは、組織のどの場所で働いていても感じることだ。

また、特に小売分野においては、自社の従業員を通じて採用するのがもっとも効果的な方法だということを熟知している。このため当社は、社内にある種のチャンピオンの役割を設置し、また店舗にリーダーを置き、店舗の経営陣と協力しながら、ほかの従業員を募集している。我々と我々のブランドにとって、従業員ほど、最高のアンバサダー(大使)にふさわしい存在はいない。

私たちが注力している分野は、より多くのトレーニングと能力開発だ。これらは小売業の従業員が重視する部分だと私は考えており、この分野において、テクノロジーやアプリに関して多くの作業を行い、店舗内で必要なトレーニングを受けられるようにしている。

――リーバイ・ストラウスは従業員のメンタルヘルスを確保するために、どのような取り組みを行っているのか?

パンデミックがはじまって数カ月が経過した頃、それが人々のメンタルヘルスに及ぼしている影響が明らかになりはじめた。ご存じのように、燃え尽き症候群に関する記事は数多くあるが、それは今も変わっていない。しかし現在、多くの人々の生活が正常に戻りつつあり、人々は依然としてパンデミックや世界情勢などによって疲れ切っている。

我々リーバイ・ストラウスは約2年前に、これが厳しい挑戦になるだろうと理解していた。我々は現在、従業員のメンタルヘルスと幸福のため、極めて統合的なホリスティックなアプローチを開発している最中だ。

当社はすでに多くのすぐれた制度を作り上げた。たとえば、当社はスライブ・グローバル(Thrive Global)と提携し、人々が自分の健康を維持するため毎日行うマイクロステップについて研究している。当社はトークスペース(Talkspace)のようなサードパーティーのパートナーと協力し、人々がリソースを探すことができるようにしている。当社には従業員支援プログラムがあり、福利厚生プログラムも充実している。

現在は多くのことが起きており、我々はそれらを調べて、「これで充分か? どこにギャップがあるか? これらはどのように組み合わせれば、従業員が簡単にアクセスできるのか? 店舗、配送センター、会社など、あらゆる種類の従業員に適用されるのか? そして、これらを今後3〜5年間にどのようにして実現するのか、今後の構想としてはどうなるのか?」といったことを検討している段階だ。

また、これは独自のことなのかわからないが、当社は何が起きているのかについてもオープンに話し合っている。当社には常にコミュニケーションが可能な状態にしている。リーダーが当社の社内のウェブサイトなどを通して、自身のメンタルヘルスについての経験を語るのも珍しくない。当社は、組織のトップに属する人々も含めて、自分たちの体験を非常に透明で安全に共有できるようにした。これは、人々が必要な助けを求めるモデルとして、非常に重要だと考えている。

――これは実店舗でどのように表れているか?

多くの場合、この部分で最前線にいるのはマネージャーだ。当社は2020年から、マネージャーが共感を持って指導を行えるようトレーニングに取り組んでいる。セラピストである必要はないが、単に「どうしたの? 調子はどう? 何かできることはある?」と呼び掛けることが大切だ。

2020年に起きた、ジョージ・フロイド氏、アーモー・アーベリー氏、ブリオナ・テイラー氏の殺害事件をきっかけに、我々はほかの多くの企業と同様に、多様性、平等、包含性についての極めて強いコミットメントを打ち出した。当社は、多様性、包含、帰属の最高責任者(エリザベス・A・モリソン氏)を採用するなど、我々が何をすべきかを明確に示した。我々は2021年には、この方針に従い、複数年にわたるDEI戦略を作り上げ、毎年その進捗をアップデートしている。

この戦略は、当社の代表的な数字、たとえば、我々にどれだけ多様性があるか、以前に報告した数値からどれだけの進歩を遂げたか、といった事項をカバーしている。ほかの要素は、インクルージョン(包含性)だ。つまり、どのようにして社員が自分らしく働けるか、それを実現するためにどのようなプログラムを使用するかということだ。

いくつかの例を挙げると、当社は反人種差別や多様性に関する研修を開始し、2021年には当社の従業員の87%が参加した。当社には、何年も前から充実した従業員の人材グループがあり、今後は特にグローバルに人材を増やし続けていく。この仕事の多くには、役員報酬という長期的なインセンティブがある。当社は今年、初めてのインクルージョン調査を開始しました。

これは確固とした取り組みで、CEOの優先事項のひとつであり、私の任務の最大の優先事項のひとつでもあり、さらに当社にとっては、まさに将来に向けた仕事の方向性そのものでもある。

――リーバイスが直面している固有のDEI課題はなにか?

当社のBIPOC(黒人・先住民・有色人種)人材の割合は、米国の平均、またはそれを超えており、組織の女性の割合は50%を大きく超えている。

課題となるのは、細かい内情を見ると、米国の企業における黒人やラテン系、ヒスパニック系の人材の数に多少のギャップがあり、組織の特に上級の職位では女性の割合が50%に達していないことだ。当社は、これらの分野に全社的に特に注力することを決めている。

この目標に向け、これらの役職の採用するときは、常に多様な人材を選ぶなどの活動を実行してきた。優れた多様性のある人材を集めるため、さまざまな部署でパートナーシップを構築している。たとえば、デザイン職能については、当社だけでなく業界全体にわたって黒人デザイナーのパイプライン構築を支援するため、ハーレムズファッションロー(Harlem’s Fashion Row)と提携した。また当社は、特にデザインの才能を発掘するため、HBCU(歴史的黒人大学)であるクラーク大学(Clark University)と提携する予定だ。当社は技術的分野やほかの分野でも同様な活動を進めている。当社がパイプラインを構築し、同時に、業界全体のパイプライン成長を促す、優れたパートナーが存在しているからだ。

[原文:‘It’s the price of admission’: How Levi’s is trying to build a hybrid workplace]

Melissa Daniels(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:黒田千聖)
Image via Levi Strauss & Co.

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