Apple とSpotifyのポッドキャスト、サブスク拡大に課題:鍵となるのは柔軟性や機能性の向上

DIGIDAY

サブスクリプション機能を活用して有料番組を提供するポッドキャスト配信者が増えている。サブスクリプションは収入源を補い、リスナーにボーナスコンテンツや追加的な特典を提供するのに有用な選択肢だ。一方で、AppleやSpotifyなどのホスティングプラットフォームには、リスナーを増やし、有料番組を見つけやすい環境をつくること、そのための柔軟性や機能性の向上が期待されている。

ベッチェスメディア(Betches Media)のデヴィッド・シュピーゲル最高収益責任者(CRO)は、「技術的な問題が有料配信普及の妨げとなっている」と話す。

ポッドキャストの有料配信に関しては、番組の見つけやすさ向上の試みも一部に見られる。たとえば、Appleポッドキャストはこの8月に「トップサブスクライバー番組」と「トップサブスクライバーチャンネル」という有料番組に特化したポッドキャストチャートを新設した。デイトラインNBCは有料配信の開始から1週間で、Appleポッドキャストチャートの第1位、「トップ番組」チャートの有料チャンネル第3位を獲得している。2021年6月以降、Appleポッドキャストの有料配信登録者数は300%以上増加した。また、「トップ番組」チャートの上位100番組のうち、有料プランを提供する番組は25%を超えている。

番組レベルのサブスクは見つけにくい

AppleとSpotifyはどちらも番組レベルのサブスクリプションに対応しており、ボーナスコンテンツ単体でも番組全体でも有料化できる。しかし、どちらでも有料登録できるということは、番組レベルの登録を促すには有効である反面、番組のサイロ化を招くため、同じ企業が提供するほかのポッドキャスト番組が探しにくいという負担をリスナーに強いる仕組みともなっている。

ポッドキャストネットワークのキューコード(QCode)は8月に自社のネットワークで「トゥース・アンド・クロー」の配信を開始した。この番組には、同社がパトレオン(Patreon:クリエイター支援プラットフォーム)で運営する「グリッツクラブ」という会員プログラムが付属していた。有料プランに登録し、月額3ドル99セント(約596円)または年額28ドル99セント(約4321円)を支払うと、広告なしでコンテンツが楽しめるほか、ボーナスコンテンツなども聴取できる。これとは別に、キューコードはAppleポッドキャストのアプリにも別途「グリッツクラブ」を追加した。料金は月額10ドル(約1490円)前後で、パトレオンの会費の真ん中あたりに相当する。同社は新番組の「ジリアン・オン・ラブ」でも番組レベルのサブスクリプションを提供するという。

一方、ベッチェスメディアは今年、ポッドキャストで3つの有料番組を開始した。「ユー・アップ?」、「ダイエット・スターツ・トゥモロー」、「モーニング・アナウンスメンツ」の3つだ。

問題は、Appleポッドキャストの場合、番組レベルのサブスクリプションは配信者のメインチャンネルの下に表示されないことだ。シュピーゲル氏はこう話す。「これではベッチェスメディアの有料番組を見つけたり、たとえば『ユーアップ?』に有料登録しているリスナーがベッチェスのほかのポッドキャスト番組を見つけることが難しくなる」。

「ポッドキャストでこれぞと思う番組を見つけるのはただでさえ容易でない。このやり方では、番組の自然な発見はますます困難になる」と、シュピーゲル氏は話す。リスナーが同じポッドキャスト配信者のほかの番組を見つける方法といえば、既存の番組で宣伝(エピソードの途中、あるいはチャンネルやエピソードの説明文でアピールするなど)するか、あるいはチャンネル内に表示させるかくらいだという。一方で、Appleポッドキャストは配信者がいくらでも好きなだけチャンネルを開設することを認めている。

ある意味、Spotifyの状況はさらに複雑だ。キューコードのスティーヴン・ウィルソン最高戦略責任者によると、ポッドキャストの有料番組を配信するには、当該番組のフィードをSpotifyのポッドキャストプラットフォームであるアンカー(Anchor)に再アップロードする必要があり、一種の二重フィードが生じるという。どちらのポッドキャストフィードも見かけは同じなのに、一方はサブスク向けで、もう一方はそうではない。なお、キューコードとベッチェスメディアはSpotifyではポッドキャストの有料番組を配信していない。

Spotifyの広報担当者によると、同じフィードに有料のエピソードと無料のエピソードの両方を含めるために、エピソードレベルでサブスク用のコンテンツを設定できるようになっているという。

サブスクリプションの一本化はいまだならず

現状では、SpotifyもAppleポッドキャストも、別のプラットフォームで有料配信登録しているリスナーを自社のアプリにつなぐことができない。これはつまり、どこかほかのデジタルプラットフォームで会員プログラムや有料配信プランを運営していても、ポッドキャストアプリでその有料登録者を確認し、追加的なコンテンツや機能を提供することはできないということだ。

シュピーゲル氏はこう話す。「サブスクリプションを一本化する方法が存在しない。プラットフォーム共通のユニバーサルサブスクリプションのような仕組みがあれば、ベッチェスが提供するすべての有料コンテンツにプラットフォーム横断的にアクセスできるのにと思う」。

データ保護が特典提供のハードルに

サブスクリプション事業を運営することの大きな魅力のひとつはファーストパーティデータの構築だが、Appleポッドキャストを含め、ポッドキャストプラットフォームではこれができない。

グリッツクラブのパトレオン会員にはステッカーなどのグッズを提供しているが、これをAppleポッドキャストの有料登録者に直接進呈することはできない。彼らにはキューコードにデータの共有を許可するという選択肢がないからだ(ポッドキャスト配信者はAppleポッドキャストアプリのショーノートに記載されたリンクから顧客の電子メールアドレスを収集できる)。

サブスクリプション管理と顧客データ分析を支援するメイザーエコノミクス(Mather Economics)のプレジデント、マット・リンゼイ氏は電子メールによる取材でこう述べている。「リスナーとの直接的な関係を持たないことは、ポッドキャスト配信者にとって大きな課題だ。ポッドキャスト配信者をはじめとするコンテンツ企業は、プラットフォーマーが提供するリーチと引き換えに、自分たちの顧客との直接的な関係を犠牲にしている」。

たとえば、エンゲージメントの高いエピソードを特定したくても、ポッドキャスト配信者はそのためのデータを持っていない。オーディエンスのセグメント化もできない。解約率を減らし、リテンション率を上げ、あるいは(特別割引を提供するなどして)しばらく聴取のないリスナーを呼び戻すなどの戦略を立てることもできない。これらはいずれも、サブスクリプション事業に欠かせない重要なマーケティング戦略である。

リスナーデータがないままでは問題は解決できず

Appleの広報担当者は、ポッドキャスト配信者なら誰でも、Appleポッドキャストコネクトの分析タブで「エンゲージドリスナー(聴取したリスナー数)」を確認できると指摘する。このタブには、エピソードの20分以上または40%以上を聴取した人の総数が表示される。また、有料番組の配信者には「リスニングレポート」を提供しており、聴取時間数、リスナーのタイプ、再生回数をストアフロント、エピソード、エピソードタイプごとに報告している。

「リスナーデータにアクセスできなければ、ポッドキャスト配信者はリスナーとの重要なタッチポイントを失うおそれがある」と、サブスクリプション管理プラットフォームのズオラ(Zuora)でサブスクライブドインスティテュート担当シニアバイスプレジデントを務めるエイミー・コナリー氏は電子メールによる取材で述べている。リスナーデータがないままでは、リテンションや収入減、リスナーから直接フィードバックを得られないなどの問題に直面せざるを得ないと同氏は話す。

Appleの広報担当者は、この方面における将来的な製品または機能の開発について、コメントすることはないとしている。

[原文:Apple, Spotify podcast feeds pose challenges for growing subscriptions

Sara Guaglione(翻訳:英じゅんこ、編集:黒田千聖)

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