新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、メディアの世論調査を見ると、菅内閣支持率は下げ続けている。
8月7〜8日に実施された朝日新聞世論調査では、内閣支持率は28%(−3)%で政権発足以来最低、不支持率は53(+4)%であった。
読売新聞世論調査(7〜9日)では、内閣支持率は35%で政権発足以来最低、不支持率は54%である。
NHK世論調査(7〜9日)では、内閣支持率29(−4)%で政権発足以来最低、不支持率52(+6)%。
支持率2割台は政権への赤信号である。
「1日に100万回」のワクチン接種という菅首相の号令で、接種は一気に進んだが、全国の自治体や職域接種を行う企業や団体に必要な数の配分が行われず、接種予約をキャンセルせざるをえない状況になっている。接種予約ができずに不満を持つ都市住民が増えている。
そのような実態を菅首相は理解していないようである。官僚が報告する数字のみを鵜呑みにして、実態を見ない弊害が内閣支持率の低下に繋がっている。
自民党が長い期間政権に就いてきた理由は、民意をきちんと掴んでいたからである。町村議会から国会まで議員を務める自民党の政治家たちが、選挙区の有権者の声を謙虚に聞き、政策に反映させてきた。そして、自民党の政務調査会の各部会で徹底した議論を行い、その結果を政府の政策とするという政策形成プロセスが機能していた。しかし、最近は党の存在が薄れ、首相官邸が全てを仕切るようになっている。
そうなったのは、安倍長期政権下であり、「政高党低」と言われる状況が生まれた。私が厚労大臣であった2007〜2009年の頃は、事情は逆で、「党高政低」であった。たとえば、党の厚労部会で纏まった方針に厚労大臣が反対するのは困難であった。
同時に、党の政務活動には積極的に評価すべき点もあり、官僚機構に雁字搦めにされる大臣に援護射撃を行い、補完、支援をする役割を果たすこともあった。たとえば、薬害肝炎訴訟問題の解決には、厚労族の重鎮議員たちに随分と助けてもらったものである。
ところが、今は、部会は官邸の意向の追認機関に成り下がってしまっている。個々の議員にしてみれば、官邸の考え方と異なる政策を部会で提示すれば、反主流派と見なされ、出世の道が閉ざされてしまう。
官邸の意向を忖度するのは、高級官僚に限ったことではなく、自民党の国会議員もそうなのである。
そのような体たらくになっても、野党が非力で分裂し、カリスマ的リーダーも存在しないために、政権を維持できている。それがまた、改革への意欲を失わせるという悪循環に陥っているのである。政権交代の可能性がほとんどない状況は、政権党を堕落させる。
しかし、公明党の支援がなければ小選挙区で勝ち上がれないほど、自民党の足腰が弱っている。
謙虚に国民の声を聞き、それを政策として実現させる努力を怠ると、自民党は来たるべき衆院選で大敗するであろう。