「アムラー現象」起きにくい時代 – 南充浩

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ファッションにおけるトレンドとその模倣品との関係性についての質問をいただきました。

今回はこれについて考えてみたいと思います。

ファッションには必ず「トレンド」というものがあります。大雑把に言うと「流行」という意味で使われています。

しかし、ファッション業界で「トレンド」と言った場合、様々な段階での「トレンド」があり、最先端層の人々の間だけで流行る「トレンド」もあれば、大衆がこぞって支持する「マストレンド」もあります。

一般的なマスメディアが取り扱う「トレンド」は、マストレンドであることがほとんどです。はっきり言うと、私自身は最先端のファッショントレンドというのはあまり理解できず、また対して興味もありません。ですので、今回はマストレンドについて取り上げます。

昨今の熱狂的トレンドはユニクロ「+J」か

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2005年頃までに比べると、2010年代後半からはマストレンドが生まれにくくなっていると感じます。

私がこの業界で働き始めたのが90年代前半なので、それ以前の業界内の雰囲気は全くわかりませんが、80年代後半のデザイナーズ・アンド・キャラクター(DC)ブランドブームの頃、東京・原宿や大阪・難波のファッションビルには夏冬のバーゲン時期には開店前から若者が何百人も並んでいたことがよく報道されていました。

学生時代はファッションに興味がなかったので、あまり行列には並びませんでしたが、同年代の知人には並んでいた者もいました。

2021年現在、コロナ禍ということを差し引いても衣料品関連でここまで熱狂的なマストレンドは存在しません。2020年秋に復活したユニクロの「+J」くらいでしょうか。あの行列にも転売目的が何割か含まれていたと言われていますが。

毎年のように「マストレンド」が生まれた90年代

90年代も引き続き、ファッション業界では様々なマストレンドが生まれました。思いつくままに挙げてみます。

まず、1992年頃からレーヨン素材を使用したソフトジーンズブームがありました。ボブソンが自社最大のヒット商品である「04(ゼロヨン)ジーンズ」を売りまくりました。

1995年頃からは真逆の硬い綿100%デニム生地を使用したビンテージジーンズブームが起き、ソフトジーンズ以上に大ブームとなりました。

1995年には、以前にも一度記事記事として書いた「ナイキ エアマックス95」ブームがありました。

1997年には安室奈美恵さんが牽引したバーバリーブルーレーベルブームがあり、アムラーと呼ばれるファッションが女性の間で大流行し、三陽商会のバーバリーが売上高を飛躍的に伸ばしました。

また1999年頃からは裏原宿ブームがあり、個々のブランドの売上高はさほど大きくはありませんでしたが、裏原宿系全体ではかなりの売上ボリュームとなりました。

その一方で、SHIBUYA109を中心とするギャルブランドが盛り上がったのも90年代後半でした。また2000年代前半には、ギャルとは対照的なテイストの神戸エレガンスブームもありました。

「アムラー」のような大規模現象は起きにくい時代に

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こうしたマストレンド、ファッションのブームというのが起きる理由はこれまでに大きく分けて3つありました。

1, パリコレクションをはじめとする海外の有力コレクションによるもの
2, ファッション雑誌・テレビ番組とそこに登場するモデル、タレントなどによるもの
3, 巷間・ストリートから起きるもの

です。

2005年頃までに日本国内で起きたブームの多くは2が多く、裏原宿ブームは3によるところが大きいと考えられます。1はあまり一般大衆とは関係がないように思えます。

実際にパリコレクションで発表されたからといってすべてがマストレンド化するわけではなく、業界のトップ層だけに認知されてひっそりと終わっていく場合も珍しくありません。

しかし、2015年頃まで続いたタイトシルエットブーム、2015年以降現在まで市場を席巻しているルーズシルエットブームは海外コレクションが起点となっています。

タイトシルエットブームは2001年のエディ・スリマンが担当した「ディオール・オム」がそのきっかけとなったと言われていますし、現在のルーズシルエットブームはデムナ・ヴァザリアが担当した「バレンシアガ」が火付け役と言われています。

古くは80年代後半のソフトスーツブームも「ジョルジオ・アルマーニ」が提案したものだといわれています。

現在では、それぞれが独立してファッショントレンドを引き起こしているのではなく、複雑に絡み合ってマストレンドを生み出していると考えた方が実情に近いのではないかと見ています。

また、我が国独自のビッグトレンドというのもあります。2015年にジーユーが100万枚販売したことで知られる「ガウチョパンツ」ですが、これは日本だけに起きたビッグトレンドでした。

2005年頃までなら、ファッション雑誌とモデル、タレント、テレビ番組など旧型メディアが大ブームを作り上げることが可能でした。アムラーや神戸エレガンスなどはその典型ではないかと思います。

現在でも劇中で着用すれば必ず売れると言われる女優やタレントもいますが、2005年までに比べるとその影響は随分と限定的で、アムラーみたいな大規模な現象は起きにくくなっています。

そういう意味では旧型メディアの影響力は低下したと言え、3つの要素すべてを絡めつつ、SNSをはじめとするWEBの力を取り込む必要性が高まっているといえます。

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