英国ファッション協会のIPFフォーラムは イノベーション を通して変革推進をブランドに呼びかけ

DIGIDAY

英国ファッション協会(British Fashion Council、BFC)のインスティテュート・オブ・ポジティブ・ファッション・フォーラム(Institute of Positive Fashion Forum、IPF)は、ブランドに対して、より多様性のある採用を行うこと、サプライチェーンの似たような課題を解決するために協力すること、イノベーションに焦点を当てることを呼びかけた。

6月30日、2年目となるこのIPFフォーラムには、エイソス(Asos)、バーバリー(Burberry)、ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)、Amazonファッション(Amazon Fashion)の4社から、英国に拠点を置くファッションリーダー280人以上が集った。コペンハーゲンでのグローバル・ファッション・サミット(Copenhagen Global Fashion Summit)とは異なり、このイベントでは、ハックディスカッション形式で、ブランドの代表者が活発なセッションで切実な問題について取り組んだ。イベントの主要テーマは、7月1日に発表されたBFC初の業界全体にわたるダイバーシティおよびインクルージョン・リーダーシップレポートと、変化をもたらすためのコラボレーションおよびイノベーションの必要性に焦点を当てていた。

多様性のある採用方針の促進

BFCのダイバーシティおよびインクルージョンレポートは、ブランドが採用方針や「カルチャーフィット」要件へのアプローチの方法を変える必要性を強調している。このレポートによると、英国のファッション・ブランドの役員、エグゼクティブ、直属の部下レベルにおける女性の割合が40%以下、少数民族の割合は10%以下となっている。英国でのビジネスにおいて多様性はこれまで後回しにされてきたが、バーバリー、ガニー(Ganni)、ルルレモン(Lululemon)など一部のブランドは、採用の実践を変えるために実行可能なステップを踏んでいることがレポートには示されている。米国企業と同様に、ブランドは2020年にジョージ・フロイド氏殺害事件が引き起こした人種問題の清算に影響を受けている。

BFCのダイバーシティおよびインクルージョン運営委員会の議長であり、ロクサンダ(Roksanda)のCEOであるジェイミー・ギル氏は、「ここ数年、企業は組織のあらゆるレベルにわたって多様な考えと表現の重要性を理解し始めており、ファッション業界にとって自省する重要な瞬間となった」と述べている。今後このレポートは、英国のファッション・ブランドのベストプラクティスの規範として活用される予定だ。

積極的な競争と協力の義務付け

IPFで取り上げられた主要な問題のひとつは、多くのブランド、特に中小企業が、循環型農場や工場の活用など、よりサステナブルな運営を求めるメーカー側の要求を満たすのに苦労していることだ。多くの企業が、さまざまな成果を達成するにはブランドがパートナーとして協力する必要があると話し、特にコストを下げるためのブランドとのコラボレーションという側面が注目のトピックだった。

PRエージェンシーのBPCMでサステナビリティおよびインパクトのグローバルヘッドを務めるフランソワ・スーシェ氏は次のように述べている。「よりサステナブルであろうとするこの前向きな競争が、ケリング(Kering)やLVMHといった企業間や、アディダス(Adidas)やナイキ(Nike)のようなブランド間で多く起きているのを目にしている。今日の他の重要点には、サプライチェーン全体でのコラボレーションがある。目的を達成するために、サプライヤーとより対等なパートナーシップを築くことが目標だ」。BPCMのクライアントには、カルバン・クライン(Calvin Klein)、ロンシャン(Longchamp)、タタ・ハーパー(Tata Harper)などがある。

この分野の多くの企業では競合が標準だったが、透明性の向上と自主的な情報開示は、企業がサプライチェーンのどの要素を共有しているかをより認識し、よりよい運営につながることを意味するようになっている。「本当に大きな変化を起こしたいなら、サプライチェーンは誰もが共有するものであり、材料はほとんどの場合、必ずしも競争の激しいものではない。サステナブルになるには、すべての人に(サプライチェーンに)投資してもらい、その移行にかかる費用を実際に負担する必要がある」とスーシェ氏は述べた。

よりよい実践のいくつかの例として話し合われたことのなかには、メーカーレベルでよりサステナブルな生産のメリットに関する教育を提供する、流通を共有することでコストを共有して負担する、地方自治体に対してサーキュラリティに関する政策や法律の必要性を訴える際に数の力を活用する、といったことが含まれていた。

全社的なイノベーションで変化を促進する

この日のもうひとつの大きなトピックがイノベーションだった。そこに含まれていたテーマに、新素材の成長、再生農法の採用、Web3への参入などがある。このイベントの一環として、BFCは2022年度ファッションのイノベーションショーケースの未来(2022 Future of Fashion Innovation Showcase)をローンチし、ファッション全体のサステナビリティの課題に取り組むイノベーションにおいて最先端を行くスタートアップ企業を紹介した。参加企業は、カラーソリューション企業ラディアントマター(Radiant Matter)、化学物質の循環利用を行う企業ダイリサイクル(DyeRecycle)、リペアアプリのソージョー(Sojo)、ワードローブのデジタル化アプリのセーブユアワードローブ(Save Your Wardrobe)などだ。これらの課題に取り組む新規スタートアップへの需要は、英国の企業にとって新たな肥沃な活動の場をもたらす結果となった。

パンガイア(Pangaia)のインパクト&グローバル・エンゲージメント・シニアバイスプレジデントのエヴァ・クルース氏は、同社が作っているイノベーションを活用するようブランドに働きかけた。コットンのスタンダードといったパンガイアの素材のイノベーションについてクルース氏は、「これらのイノベーションをどのようにスケールアップさせるかが重要だ。英国のファッション業界には中小企業が多く、そうした企業は大規模な拡張が可能になる前でも、これらのイノベーションを簡単に取り入れることができる」と述べた。

テストとイテレーションの機会は、従来のようなビジネスではなかなか容易ではない。しかし、英国では中小企業やD2Cブランドの数が増えており、この地域がサステナビリティのイノベーションを拡大する最前線として有望であることが示されている。

[原文:British Fashion Council’s Institute of Positive Fashion Forum calls on brands to drive change through innovation]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:猿渡さとみ)

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