カンヌから姿を消した Twitter 。その穴を埋めたのはNetflix? TikTok?それともSpill?

DIGIDAY

今年のカンヌは、例年のうだるような暑さに加えて、クロワゼット通りのあちこちで工事が行われていた。にもかかわらず、「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル2023(Cannes Lions International Festival of Creativity 2023)」には、いつもの各社首脳陣が顔をそろえていた。

彼らは、その規模が過去最大であることに触れては、誇らしげな表情を浮かべていた。しかし、すぐに気づくのは、あるキープレイヤーの姿がカンヌのビーチボードウォークにいなかったことだ――そう、Twitterである。

イーロン・マスクも新CEOも不在

もしその姿がそこにあれば、イーロン・マスク氏が広告業界に向けて発信する、Twitterの本気度を示すシグナルになっていたことだろう。マスク氏は、「Twitterから離れた広告主の多くが戻ってきている」と主張しており、先日パリで開かれたカンファレンス「ビバテック2023(VivaTech 2023)」に出席した際には、こう語っている。「広告主のほとんどが、Twitterに戻ってきた、あるいは戻ってくるつもりだと話している」。

マスク氏による波乱の買収劇以来、Twitterはユーザー、広告費、そしてビーチ沿いの象徴的なスポットをめぐって、これまで以上にオープンな競争にさらされることとなった。かつてそのスポットでは、シンガーのシアラによるパフォーマンスや、モデルのクリッシー・テイゲンによるトークが繰り広げられてきた。

アドウィーク(Adweek)のリポートによると、次期CEOのリンダ・ヤッカリーノ氏が姿を見せて、Twitterの広告バイヤーたちをなだめる予定はない。NBCユニバーサル(NBCUniversal)の元幹部である彼女は、カンヌで会期中大量に消費されるカクテルのアペロールスプリッツの写真にこんなキャプションを付けて、かつての同僚たちに向けてTwitterに投稿し、参加をジョークにしているようだった。

ー たとえカンヌから女の子を連れ出すことができても、女の子の心からカンヌを連れ出すことはできない! #CannesLions2023

Twitterの代わりにスポットライトを浴びるのは?

代わりにTwitterのスポットを占めるのは、インフルエンサーマーケティング企業のインフルエンシャル(Influential)だ(このスポットがピンタレスト[Pinterest]やYahoo!、ディズニー・アドバタイジング[Disney Advertising]に隣接していることを考えると、これは今年のカンヌライオンズにおけるインフルエンサーマーケティングの重要度が増していることを示すサインなのかもしれないが、これについてはまたの機会に紹介する)。

Twitterがこの場にいないということ。それは、その不在が他社にチャンスを生み出していることを直感的に思い起こさせる。

昨年末、Twitterのリーダーシップに亀裂が生じ始めると、さまざまな競合他社がスポットライトの当たる場所へと登場した。その中の1社が、元Twitter社員のアルフォンゾ・テレル氏が共同設立した、まもなくローンチされるソーシャルメディアアプリ、スピル(Spill)だ。スピルにはまだ大きなトップテントもなければ、マリーナに並んで停泊するヨットにスポットもない。クロワゼット通りにある悪名高きガッター・バー(Gutter Bar)での米DIGIDAYとのモーニングミーティングで、テレル氏はこう語ってくれた。

「息を潜めているつもりだったが、知人だけでなく、パートナーや関係者が何人も参加している。だから、ここに来ることには大きな意味があった。こんなにもさまざまな人たちに、同時にアプローチできる。こんな機会でもなければ、まず近づけないような人たちにだ。それだけでも、高い金を払ってここに来たかいがあった」。

カンヌに参加する意味

スピルの存在感は大きくはない。しかしそれでも、さまざまなパネルディスカッションやアクティベーションが行われるインクウェル・ビーチ(Inkwell Beach:ダイバーシティやエクイティ、インクルージョンに特化したビーチアクティベーション)に陣取ることには、意味がある。「業界の年間最大のイベントでインクルーシビティを重視する組織や広告主、潜在的な広告主と繋がり、何らかの印象を残したい」とテレル氏は話す。

「彼らが取り引きや噂を通して聞いている(我々の)ことに、顔を向けるようなものだ」と同氏は言う。「とにかく、皆に注目してもらうためだ」。

昨年あったTwitterの大きな白いテント(「#TwitterBeach」とも呼ばれていた)は、クロワゼット通りを歩いていれば、1マイル離れたところからでもそれとわかった。トレードマークの大きな青い鳥とカンヌのスワッグ、日陰をつくる輸入物のヤシの木が、そのテントを飾り立てていた。

その大きな白いテントの下では、Twitterの女王といわれたクリッシー・テイゲンのパネルディスカッションが行われた。無料の食事が振舞われるなか、メディアが首脳陣に探りを入れていた。運がよければ、各社の代表は深夜のパーティに顔を出し、シアラとステップを踏むことができた。

Twitterがいない分、ほかのキープライヤーたちの存在感はさらに増している。今年、NetflixはJWマリオット(JW Marriott)に陣取った。TikTok(ティックトック)のスポットはカールトン・ホテル(Carlton Hotel)と目と鼻の先のところにある。どちらも、イベント、トーク、そしてもちろん広告主の支持をさらに集める機会のためのスペースであり、両社ともに例年以上に強力な広告サービスを用意している。

広告主が求めるもの

ソーシャルメディアとデジタルTVが勢力を拡大し続け、それらが消費する広告費も増える一方だ。そんななか、今年のカンヌでは、広告主は企業に「輝かしい何か」ではなく、測定の具体的な機会を求める声を上げている。そう語るのは、グッドウェイ・グループ(Goodway Group)CEOのジェイ・フリードマン氏だ(同CEOがカンヌライオンズに参加するのは、今年で6度目となる)。

「Appleが空間コンピューティングを導入する。Twitterが従業員の90%をレイオフする。こうしたことが現実味を帯びてきているが、結局のところ、私が気にかけているのは、消費者がその目を、その耳をどこに向けているかだ。それが分かれば、マーケターが消費者と上手く繋がるのをサポートできる」と、フリードマン氏は語る。「消費者は欲しいものを何でも言えばいい。その目と耳がどこに向けられているのか? それらが今後、顕著になってくるのはどこなのか? 我々の仕事は、それを予測することだ」。

[原文:Cannes Briefing: Twitter’s absence at Cannes makes space for competitors

Kimeko McCoy(翻訳:ガリレオ、編集:島田涼平)

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