ゲーム内広告 、シームレスで自然な体験をプログラマティックで提供できる可能性は

DIGIDAY

ゲーマーが自然と集まる場所で、ブランドたちがますます彼らにアプローチしようとするなか、ゲーム広告業界の関係者は2つの陣営に分かれている。

それは、「本質的なゲーム内広告(ゲーム内における看板など、ゲーム世界の一部として配置された広告形式)」を介してプログラマティックなアドテックをゲームに取り入れる人たちと、ブランドをもっと没入感のあるゲーム体験に統合する人たちだ。これら2つの陣営がますますマーケターのゲーム広告予算を競い合い、両者のあいだの緊張は高まっている。

ゲーム内広告について賛成?反対?

先月、エピックゲームズ(Epic Games)のCEOであるティム・スウィーニー氏が、DIGIDAYとのQ&Aでゲーム内広告に厳しい意見を述べ、波紋を広げた。しかし、この分野で活動する多くのエグゼクティブや業界筋にとっては、スウィーニー氏のゲーム内における広告看板を非難するコメントは驚くべきものではなかった。彼がこれを長年主張してきたからだ。

しかし、スウィーニー氏がゲーム内の広告について「大嫌いだ」と発言しているにもかかわらず、同社によるフォートナイト(Fortnite)はブランドの取り込みが盛りだくさんであり、ハリウッドのプロダクト・プレイスメントに匹敵すると言えるだろう。

それでも、スウィーニー氏のコメントが多くのマーケターにとっては賢明に感じられなかった、というわけではない。

電通(Dentsu)のグローバルゲーミング部門責任者のブレント・コーニング氏は、「ティム氏に全面的に同意する。彼が言ったことにほぼ99%賛成だ」と語った。「業界全体として見ると、ゲーム内広告にはいくつかの課題がある。率直に言って、我々はすべての主要なゲーム内広告パートナーにRFPを出しており、その多くのプラットフォームが非常に似たことを言っている」。

ブランド統合型のゲーム内広告は大きなリソースを必要とする

スウィーニー氏の指摘は正当ではある。ただし、ブランドをゲームに統合するという他社の取り組みよりも、エピックゲームズが行っている取り組みを否定するのは難しい。フォートナイトによるブランド統合は、ほかの形式のゲーム内広告よりもシームレスであるという主張が聞かれるが、その主張はこの形式の参入障壁が高いことを無視している。

ゲーム環境内にプログラム的に配置できるゲーム内広告と比べて、ブランドとのコラボレーションによる特別なゲームステージやゲーム内アイテムは、効果的であるために事前開発がとても必要であり、継続的なアップデートが求められる。そして、これらの統合がどれだけシームレスであっても、それらをスケールアップするのは容易ではない。そうしたなかで、スケールアップは、規模な広告企画にとって前提条件なのである。

「ロブロックス(Roblox)やフォートナイトでの体験を構築するコストを見ると、人々を惹きつけて継続的な体験を維持するためには、単発取引的な広告を提供するのと比べてはるかに大きなリソースのコミットメントが必要だ」と、代理店のストライブ・スポンサーシップ(Strive Sponsorship)のマネージングディレクターであるマルフ・ミンズ氏は語る。「だから、両方のやり方が存在できるスペースがあると思う」。

ゲームスタジオがこれらの没入型体験をデザインする際、常に深いレベルで詳細を詰めなければいけない。

「このアプローチは、深い計画、コラボレーション、プレイヤー体験への情熱がある場合にのみ上手く行く。フィットすれば、ブランドの存在がゲームプレイを向上させ、プレイヤーがブランドと意味のある方法でエンゲージメントを持つことができるゲームエコシステムを育ててくれる」と、ゲームファム(Gamefam)のCEOジョー・フェレンツ氏は話す。

本質的なゲーム内広告に取り組む会社の視点に立ってみると、彼ら自身も、この形式の広告がすべてのゲームには適応していないことを確かに認識している。また、徐々にプログラマティック広告をフォートナイトやロブロックスのブランド統合と同じくらいシームレスで自然なものにしつつある。

模索が続く広告の出し方

プレミアムなコンソールゲームの広告在庫を確保することに成功すれば(とくにゲーマーが従来の広告形式を見慣れているスポーツゲームやライフスタイルゲームにおいて)、より没入型のブランド体験が持っている競争優位性を緩和することができるかもしれない。

「ゲーム内広告の失敗例は、私たち全員が目にしている。ゲーム体験に没頭している最中に邪魔されることを誰も望んでおらず、ブランドもその邪魔の原因となることを望んでいない」と、ゲーム内広告会社フレームプレイ(Frameplay)のCEOジョナサン・トラウトン氏は述べる。

また、「インタースティシャル広告や報酬動画広告のような(ゲームプレイを中断させる)断絶的な広告形式に対して、人々は本能的に否定的な反応を示す。全員にとってよりよい選択肢があり、我々もゲーム内広告がどれだけ変わったかについて業界に積極的に教育を行っている」。

教育が進めば2つの予算に分けられる可能性も

現時点で、これら2つのゲーム内広告形式のあいだに緊張が生じている要因は、多くのブランドマーケターがまだそれらの違いを完全に理解しておらず、単一のゲーミング広告予算、そしてしばしば実験的な位置付けとしてのゲーミング予算から支出していることにある。

「ゲーミング予算を持っている人物は、複数のチャネルの責任を抱えている。広告、スポンサーシップ、イベントなど、どのように予算が使われるかを決定するのは彼ら次第だ」とミンズ氏はいう。

よいニュースは、マーケターがこの分野についての知識を継続的に深めることで、ゲーミング広告予算が本質的なゲーム内広告と没入型体験を含む、2つの主要な別々の広告カテゴリーに分割される可能性が高まっていることだ。

ブランドが従来のスポーツスポンサーシップやスーパーボウルのコマーシャル用の予算から支出するのと同様に、ゲーマーにアプローチするための支出も専門の予算として分割するようになるだろう。これにより、ゲーム広告界における対立を一部緩和することができるかもしれない。

しかし、今のところ、この潜在的な解決策に到達するためには、さらなる教育が必要だ。「ビドスタック(Bidstack)やアンズ(Anzu)などの人々がやっていることは、メディア代理店を通じた広告購入となるだろう」とミンズ氏は述べた。「仮想世界のもの、たとえばロブロックスやフォートナイトなどは、おそらくスポンサーシップやマーケティング予算からのもので、コアな広告予算からのものは少ないだろう」。

[原文:In the in-game advertising world, tension is mounting between intrinsic ads and immersive brand experiences

Alexander Lee(翻訳:塚本 紺、編集:島田涼平)

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