ラグジュアリーブランド がサステナビリティの領域で重要点のひとつはデータ収集:コペンハーゲン・グローバル・ファッション・サミットの結論

DIGIDAY

非営利団体グローバル・ファッション・アジェンダ(Global Fashion Agenda)が主催するコペンハーゲン・グローバル・ファッション・サミット(The Copenhagen Global Fashion Summit)は、ファッションカレンダーにおいて重要なイベントとなっている。ケリング(Kering)、ボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)、ラルフローレン(Ralph Lauren)、マルベリー(Mulberry)、ガニー(Ganni)といったブランドに加えて、インキュベーターやイノベーターが参加した今年の2日間にわたるイベントでは、ファッション業界がサステナビリティの領域で大きな進展を達成するには、ブランドコラボレーションとアライアンスが不可欠であることが強調された。

このイベントは、世界最大の中古衣料品市場であるガーナのカンタマント市場に関わる非営利団体オア・ファウンデーション(Or Foundation)とシーイン(Shein)からの発表でスタートした。ファストファッションブランドであるシーインは、過剰な衣類を生み出すことによる影響を認め、エクステンデッド・レスポンシビリティ・ファンド(Extended Responsibility Fund)を通じて3年間で5000万ドル(約67億4490万円)の寄付を行う予定だとして議論を呼んだ。この金額は、4月に1000億ドル(約13兆4900億円)と評価された同ブランドの規模を反映したものではないが、ファストファッションブランドが過剰生産を直接認めた初の例となる。

このイベントにおけるほかの主要テーマとしては、データ収集、サーキュラリティ、メーカーの説明責任が挙げられる。サプライチェーン全体における長期的なコミットメントとブランド間での情報共有に焦点が当てられ、個々のブランドのプログラムやイニシアチブではなく、共同での行動の必要性が示された。

情報に基づいた意思決定のためのデータ収集

今回のイベントにおける重要な焦点のひとつはデータだった。デジタルID企業イーオン(Eon)のデータ主導型イノベーションは、デジタルIDタグが、いかにしてブランドにとってトレーサビリティデータに関わるための出発点になり得るのかを示し、マルベリー、クレージュ(Courrèges)、ヴェスティエール・コレクティブ(Vestiaire Collective)が参加を表明した。このデジタルIDは、食品の栄養表示のように機能するデジタルプロトコル上に置かれ、ブランド、リセラー、リサイクル業者に向けて製品情報を最大限に高める。デジタルIDと製品パスポートは、製品の記録に必要なトレーサビリティのレイヤーを追加する。

またブランドは、どこで、どのようにデータを収集するかについて、さらなる理解を必要としている。サミットで発表されたふたつの報告書のうちのひとつにGFAモニターがあり、これはネット・ポジティブの状態に到達することを目指すブランドのためのまとまった情報源となっている。世界的な非営利団体テキスタイル・エクスチェンジ(Textile Exchange)のチーフ・ストラテジー・オフィサーのアシュリー・ギル氏は、「原材料を生産するこれらのシステムはすべてつながっているので、システム全体を考えずに(たとえば)GHG排出量のみにフォーカスすることはできない」と述べた。

サプライチェーンのトレーサビリティ・プラットフォームであるトラストレース(Trustrace)も、世界的なイニシアティブ・プラットフォームのファッション・フォー・グッド(Fashion for Good)や非営利運動ファッション・レボリューション(Fashion Revolution)と提携し、トレーサビリティ・プレイブックを発表した。ファッションビジネスが、より広範囲にわたってトレーサビリティへの理解を深められるようにするのが目的である。

最重要の課題はサーキュラリティ

ラルフローレン・コーポレーションは、2030年までのライブオン(Live On)プログラムの一環として、過去と未来のすべての製品を受け入れる循環型イニシアチブを発表した。このプログラムは、完全循環型のデザインの原則に従って、再販、修理、再設計に注力するだけでなく、店舗とオンラインのすべてのオペレーションで再生農業に投資することにも重点を置く。

「サーキュラリティ(循環性)にはシステム的な変革が必要であり、システムの変革には非常に多くの可動部がある。変化を起こすには、それらすべての異なる可動部が、共通の方向に向かって調和してともに動くような方法を考え出さなくてはならない」と、ラルフローレン・コーポレーションのチーフ・プロダクト・オフィサー、ハライド・アラギョズ氏は言う。

修理、再利用、リサイクルは、ラグジュアリーブランドのボッテガ・ヴェネタも重視しており、ライフタイムリペアプログラムを導入するとともに、過去のコレクションのバッグを再販している。同ブランドの新たな取り組みは、ケリングが従来から行っている生物多様性の向上への努力を通じて、傘下のほかのブランドが革新していく方法を促進するものとなるだろう。

「フランソワ・アンリ・ピノー氏は20年以上前に、サステナビリティをケリングの戦略の中心に据えることを決定した」と、ケリングのチーフ・サステナビリティ・オフィサーであるマリー=クレール・ダヴー氏は述べた。「消費者や顧客、とりわけミレニアル世代やZ世代の期待について考えると、みなブランドやラグジュアリーの観点からより多くのことを期待し、要求している」。その結果、ラグジュアリー分野とハイストリートのブランドは、衣服を長持ちさせることで循環型経済に関与するひとつの方法として、修理への投資を増やしている。

メーカーも変革の一端を担う必要がある

リフォーメーション(Reformation)のチーフ・サステナビリティ・オフィサーであるキャスリーン・タルボット氏は、賃金等級の世界的な差にかかわらず、工場で働く労働者の最低水準の生活賃金を達成することの重要性を強調した。

「ここでカギとなるのは透明性だ。リフォーメーションのようにサステナブルな生産に取り組んでいるブランドでさえも、生活賃金を得ている人々によって生産されている服は全体の70%に過ぎない」とタルボット氏は述べた。彼女は、最低の生活賃金も含め、ブランドが現在採用している賃金よりも飛躍的によくなることを指摘している。

[原文:Copenhagen Global Fashion Summit Takeaways: ‘Consumers are demanding more from luxury’]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida、編集:黒田千聖)

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