バーチャルメイクアップルックから輪郭ガイドにいたるまでのARフィルターキャンペーンで、ブランドがいま注目しているのはSnapchatよりもTikTokとインスタグラムだ。
9月末に発表したGlossyの新しいリサーチレポートの結果によれば、カテゴリーを問わずブランドがARフィルターを展開する上でもっとも人気のあるソーシャルプラットフォームはインスタグラムで、調査対象者の64%が採用している。2017年にARフィルターでもっとも人気のあるソーシャルメディアプラットフォームはSnapchatだったが、現在はインスタグラムとTikTokの両者に遅れをとっている。
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Snapchatは長年AR機能を重視してきたにもかかわらず、現在ではブランドのフィルターローンチの選択肢として5位となっており、採用率は30%だ。これはSnapchatがブランドを失っているという意味ではない。Snapchatのフィルターを使用したことがあるのがわずか21%だった2017年に比べ、採用率は実際には高くなっている。だがブランドの間でARフィルターの利用が広まるにつれ、1位のインスタグラムだけでなく、36%の採用率で4位に入ったTikTokにもランキングでは抜かされている。
ARフィルター上位を占めるMeta所有のプラットフォーム
インスタグラムに関しては、ブランドのプロフィールの独自のフィルタータブに存在するか、あるいはQRコードからアクセスするカスタムARフィルターが、美容ブランドのあいだで広く採用されている。最近では、セフォラ(Sephora)が9月初めのバーチャルイベント、セフォリア(Sephoria)で「フォトブース」機能にインスタグラムを使用し、ユーザーがQRコードをスキャンするとインスタグラム上のフィルターを呼び出せるようにした。そのほかに美容ブランドがブランドARフィルターをプロフィールに使用している例としては、ディオール(Dior)、エスティローダー(Estée Lauder)、ランコム(Lancôme)、ヴァレンティノ(Valentino)、ナーズ(Nars)、MACコスメティックス(MAC Cosmetics)、フェンティ・ビューティ(Fenty Beauty)などがある。
データが示しているのは、Meta(メタ)所有のプラットフォームがARフィルター採用の上位を占めるようになっていることだ。インスタグラムに次いで2位となったのはFacebookだった。どちらのMetaのプラットフォームも、ARフィルターの導入においてはブランドの公式ウェブサイトといったブランド所有のチャネルを上回っている。オウンドチャネルは、2017年のSnapchatを含むすべてのソーシャルプラットフォームよりも人気があったが、3位に落ちた。
「Snapchatの転落に関しては、さまざまな理由が考えられる。機能面で競合に追いついていないだけかもしれない」と、レポートの共同執筆者でDigidayのシニアリサーチャーであるリ・ルー氏は述べている。
ほかに類を見ないTikTokのクリエイティビティ
4月にエフェクトハウス(Effect House)を拡張し、誰もが独自のARフィルターをアプリ用に作成できるようになったTikTokは、UGCを促進するためにフィルター機能に多くのファッションブランドや美容ブランドを引き寄せている。最近の例がフェンティ・ビューティのTikTok限定の輪郭キャンペーンで、ユーザーはフィルタークリエイターのグレース・チョイ氏が作成した「輪郭ガイド」フェイスチャートフィルターを使って動画を作成することができた。このフィルターを使用した動画に参加者がキャンペーンのハッシュタグを付けると、賞品が当たるチャンスがあり、このタグが付いた動画は140万ビューを生み出している。
「美容コミュニティと同様に、TikTokのコミュニティも会話型でクリエイティブでインタラクティブだ。TikTokのクリエイティビティはほかに類を見ない」とチョイ氏は述べている。彼女はフェンティ・ビューティのほか、ナーズやワン/サイズ(One/Size)のフィルターも制作しており、今四半期にはさらに多くのブランドのフィルターコラボレーションが控えている。ブランドからの依頼の「大半」はTikTokのフィルターだが、インスタグラムのフィルターもいくつか受注しているという。
Z世代オーディエンスを抱えるSnapchatの課題
競合他社のAR機能の人気にもかかわらず、Snapchatが多くの大手美容ブランドパートナーにとって魅力的なZ世代オーディエンスを抱えていることに変わりはない。アルタビューティ(Ulta Beauty)とMACコスメティックスは、2022年1月にSnapchatのショッパブルなARレンズ機能を使用した最初の美容企業だ。アルタビューティは過去1年間に複数回、Snapchatに特化したARキャンペーンをローンチしている。Snapchatによると、アルタビューティはSnapchatのフィルターキャンペーンから600万ドル(約8.6億円)の購入と3000万件の製品トライオンを実現したという。最近では、アルタビューティはSnapchatのフィルターメニューからアクセスできるショッパブルなバックトゥスクール・ゲームをローンチしている。
同時に複数のプラットフォームを選択するブランドもある。ディオールは昨年のキャンペーンで、Snapchatとインスタグラムに同時にフィルターをローンチした。
Snapchatにとって大きな課題は、TikTokとインスタグラムのパブリックに向けた性質に対抗することだろう。これは、こうしたプラットフォームに向けて制作されたフィルターに多くのUGCとエンゲージメントを可能にしている。
「TikTokは、短編形式のコンテンツで人気が急上昇しており、Snapchatの提供するものとはとにかくまったく異なっている。個人と個人のつながりを重視するSnapchatに対して、TikTokはユーザーの目の前にできるだけ多くの関連コンテンツを届けることに重点を置く」とルー氏は指摘している。
[原文:TikTok and Instagram surpass Snapchat for brands’ AR filters]
LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)